101話 おやすみなさい
週末……泥のように寝ています。リリー・コーデフェフルトです。
「姫様……大丈夫ですか?」
「う……うん……まぁ大丈夫……って言いたい」
「姫様ー!」
体育祭の種目とその攻略法、それからテスト勉強までして心身ともに疲弊しきっている。アスセナに迷惑や心配をかけたくはないけど、こうなっちゃったのは仕方ない。普通に限界だったわね。
「アスセナに看取られるのなら本望よ……」
「縁起でもないことを言わないでください!」
アスセナがぎゅっと手を握ってくれた。これだけでなんだか安心するわね。
「でも驚いたわ。勇者学校がこんなに疲れるところだっただなんて。もっと余裕で情報を抜き取っていけるものだと思ったのに」
まぁ魔界を裏切っている以上、情報を抜き取ろうという気すらないんだけどね。
「勇者を育成・輩出を目指す学校ですからね……厳しいのは当然かと思います」
「そうよね〜……」
アスセナからもっともな意見が出てくる。まだ手は握られたまま。きっとずっと握っていてくれる気よね。
「まだ誰にも魔王の娘だって伝えられてないしなぁ」
「それは仕方ありませんよ。混乱のタネになってしまわれます」
「そうよね〜……」
はぁ、目先のことなら体育祭とハーフテスト。長い目で見れば魔王の娘問題、魔界と人間界の和解の目標、いろいろ課題は山積みにされているわね。
「姫様大丈夫ですか? 顔色がさらに悪くなっていますよ?」
「うん、ちょっとね……」
課題も考えることもいっぱいある。冷静になって考えてみたら、あの魔王に謝らせるなんてできるのかしら。天上天下、唯我独尊を貫く魔の王。そんな男が私やユーシャの言葉に耳を傾けるとは思えない。……いや、絶対に傾けることはないと断言できる。
そんなことを考えていたらどんどん頭が痛くなってくる。ユーシャの夢は応援したい。私の夢にもなった。一緒に追い求めていこうという希望もある。でもそれを全て壊してくる、魔王という存在。
「……父親なのに、なんでこんなに厄介に思うのかしら」
普通なら父と子の関係は一定の距離や違和感はありつつも良好であるはずだ。多少問題のある家庭はあるかもしれない。でも比にならないくらいの問題を、私の家は抱えていた。気を抜けば私も……今にも殺されてもおかしくはない。
「魔王様は……怖いお方です」
「えぇ……本当に」
手を握ってくれるアスセナの手を引っ張って布団に強制的に入れた。
「ひ、姫様!?」
「あったかい……ちょっと失礼するわね、アスセナ」
「ひえぇ!」
アスセナを抱き枕にして寝る。うん、ポカポカ〜。
「ひ、姫様! これはふしだらなのでは!?」
「なぁにぃ〜? 不服なの?」
「い、いえ……そういうわけでは……」
「ならいいじゃない。減るもんじゃないし」
「おじさんですか!」
う〜ん、アスセナ、いい匂いよね。ふわふわもこもこでポカポカでいい匂いで、最高の抱き枕じゃない。
「こうでもしていないとやってられないわよ。というわけでおやすみ」
「ひ、姫様ー!?」
アスセナの叫びも虚しく、私は眠りに落ちていく。アスセナが側にいてくれるだけで安心できる。これが親友? またちょっと違うかも。恋人未満親友以上……って感じ? 恋人寄りの親友? よくわからないわね。頭が痛いってのに、これ以上何かを考え詰めることもないわね。というわけでおやすみなさい。……スヤァ……




