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ルナティック・ブレイン 【-特殊殺人対策捜査班-】  作者: 橋依 直宏
Consider 8 合わせ鏡のマグノリア
72/97

File:1.5 箱庭の駒

 

 警視庁。AM12:29.


 蕗二ふきじ竹輔たけすけは、黙々とパソコンに向かっていた。

 窓の外の方がさわがしいくらいだ。部屋には時々キーボードをたたく音と、蕗二か竹輔が身じろいだ時に椅子が音を立てる以外、静かなものだ。


 その静寂せいじゃくを破ったのは、ピピッという短く甲高い電子音だった。


 蕗二は丸めていた背を伸ばし、ドアのある方向を見つめる。もちろんドアは書類の詰まった段ボールの壁で見えない。だが、あの音はドアの鍵を開ける解除音だ。そして、この場所を知っているのは、ごく限られた人間だけだ。

 蕗二と竹輔が立ち上がって背筋を伸ばすと、予想通りよく見知った顔が段ボールの隙間から出てきた。


「おはようございます」

「ああ、おはよう」


 菊田きくたは警視庁と黒い文字で書かれた、半透明の折りたたみ式コンテナボックスを抱えていた。

 よっこらしょっと、わざとらしく声を出して足元に下ろす。


「タブレット端末が捜査会議で出払っててな、仕方なく紙の資料を借りてきた」


 コンテナの中を蕗二は興味津々に覗き込む。中には分厚い紙束が入っていた。黄ばんだ色の具合から、そこそこ古い物のようだ。


「さて。さっそくで悪いんだが、君たちに臨場してもらいたい未解決事件がある」

「未解決?」


 眉間の皺を深くし、視線だけで菊田を見る。

 蕗二たちが極秘で所属する【特殊殺人対策捜査班】は連続殺人を早期に解決するための部署だ。

 未解決の事件に関しては、専門部署である警視庁特命捜査対策室がすでに30年前から存在し、実績じっせきも上げている。

 それなのに、こうやってわざわざ要請ようせいがあったと言う事は、結論はたったひとつ。


「未解決から連続殺人事件になったって事だ。そして、ともかくすぐに解決してほしいと柳本やなぎもと警視監からのご要望だ」


 やっぱりそうだ。蕗二は溜息を堪えていると、菊田が腰を折ってコンテナボックスから紙束を取り出そうとする。蕗二と竹輔は素早くノートパソコンをどけて、机の上にスペースを確保した。

 どさりと重い音を立てて置かれた紙束はふたつ。片手で持つにはギリギリのぶ厚さだ。左端に穴がふたつ開けられ、黒い紐でつづられていた。


 表紙の厚紙には、帯状シールで『2032年 足立区内廃棄倉庫内グリセリン詰め死体遺棄事件』と『2035年 足立区内公園グリセリン詰め死体遺棄事件』と堅苦しい字体で張り付けられている。

 菊田は『2032年』の紙束をパラパラとページをめくり始める。


「10年前の2032年12月、足立区内の廃倉庫で、グリセリンで満たされた透明な箱に遺体が詰められた状態で発見された件だ。被害者は周防すおうハツカ、88歳男性。事件の二か月前に自宅から出かけたっきり行方不明になっていた」


 菊田は蕗二と竹輔に見えるように大きく紙束を開いた。紙に印刷された写真には、つい数時間前に見たものと同じ、透明な箱の中に青と赤で着色され透明標本化されたご遺体が映っていた。


「あ」


 蕗二は声を上げて、勢いよく顔を竹輔に向ける。竹輔ははっと息を飲んで、すぐさまパソコンに文字を打ち込んだ。そして蕗二に画面を見せる。そこには机の上にある事件名と同じ名前が表示されていた。蕗二と竹輔はお互いの顔を見つめ合い、そして同時に大きく溜息をついた。


検索けんさくのワードか……」

「これはちょっと難しいですよ……」


 蕗二と竹輔の会話についていけず、菊田は二人を交互に見ながら困惑する。


「なんだ、どうした?」

「すみません。実は、その事件、自分が現場に一番で入ったものでして。念のため、過去の事件を調べていたんです」


 事件の捜査をする時は、まず過去に似たような手口や犯行があったかどうか調べ、初犯による犯行か連続殺人か見極める。今回はあまりにも特徴的な遺体だ。透明標本で警察のデータベースに検索をかけていたのだが、検索結果は該当なしのままだった。

 よく考えてみれば、遺体は箱の入ったまま鑑識に引き渡し、結果待ちの状態だ。さすがにあの中の液体の正体までは知るはずがなく、知らなければ検索できる訳がない。


「そうだったのか。いや、検索項目は改善すべきだろうが……いやしかし、奇遇というべきか、なんというか」


 菊田は重い溜息をつき、首の後ろをつかむようにで、ついでにコリをほぐそうと肩をみ始める。

 椅子をすすめる竹輔を横目に、蕗二は紙束をめくる。発見現場の写真がいくつも印刷されているようだ。さまざまな証拠写真が写る中、なぜか透明標本はどの角度も美しく映りこんでいた。

 ときどき手ブレた画像から、カメラを担当した鑑識の動揺が伝わってくる。

 同じ撮影者が同じカメラを使い、同じ現場を撮ったとは思えない。目の前にあるのは殺されたご遺体であるはずなのに、まるで死を感じさせなかった。その異質さに、この世のものではない気さえしてくる。


「菊田さんはこの事件、担当したことは?」

「いいや、その頃は大阪に勤務していたからな。ただ、変わった事件だと県を跨いで噂は流れてくるもんだが、あまりに異質すぎてマスコミにバレるのを危惧きぐしたのか、かなり厳重な緘口令かんこうれいが敷かれていたって事は知ってる」


 肩をむのに満足したらしい菊田に場所をゆずると、せわしなくページをめくり始めた。


「発見者は弁護士と不動産屋。発見現場の廃倉庫の管理者はすでに他界。親族全員が相続を拒否していて、揉めに揉めている状態だった。その関係で弁護士と不動産会社が土地を鑑定するのに敷地に入る際、鉄柵のチェーンは切断されていたのを不審ふしんに思い、中に入ったところ遺体を発見」


 開かれたページには、頑丈じょうぶそうな太い鎖がだらりと垂れた写真と、かすかに見える靴跡くつあととタイヤこんうつっていた。


「鉄柵のチェーンが一体いつから切られていたかは不明。靴痕ゲソコンから男性サイズの靴が発見されたことと、現場に残っていた車の轍から大型ワンボックス型のバンであることを特定し、周辺の防犯カメラとNシステムから容疑車両を割り出すことに成功したが、車両はレンタカーでしかも又貸またがしが判明。貸し出した人物はネットで依頼されただけで、犯人とは会っていないことから、犯行時の使用者は不明のままだ。当時はまだ≪リーダーシステム≫の設置が進んでいなくてな。捜査は完全に暗礁あんしょうへ乗り上げた」


 菊田は紙束を手前から奥へ滑らせてスペースを確保すると、もう一冊の紙束も先ほどと同じようにページをめくり始める。


「その3年後、2035年5月。足立区の中規模公園で、グリセリンで満たされた透明な箱に遺体が詰められて白昼堂々と置かれていた事件があった」


 大きく開かれたページに、やはりさっきと同じく、透明標本化されたご遺体が映っていた。


「被害者は花園はなぞのスミレ。49歳女性。事件の一か月前に会社から退勤後から行方不明になっていた。発見者は朝のランニングで通りかかった近隣住民の老夫妻だ。遺体周辺の砂は何かほうきのようなものでならしてあって靴痕ゲソコンは発見できなかったが、公園の出入り口付近の砂利に大型の台車のタイヤ痕とともに、1件目と同じ男性サイズの靴痕ゲソコンを発見。また、近隣住民が個人的に設置していた防犯カメラから、不審な軽トラックを発見した。≪レッドマーク≫のGPS記録がなかったから、被疑者は≪ブルーマーク≫だろう仮定で捜査が進められた」

「でも発見できなかったって事ですよね?」

「いいや、被疑者はいた。当時、捜査上に浮上したのは」


 菊田の言葉をさえぎるように、突然ピピッと電子音が鳴り響く。

 ドアが大きく開く音、カツカツと床をたたかたい音が近づいてくる。

 この音には聞き覚えがある、と蕗二が思い浮かべた顔の人物が段ボールのかげから出てきた。


「やっぱりいた」


 獲物を追い込んだメスライオンのように犬歯を見せて笑う女性に、竹輔が飛び上がり、菊田は驚きに声を上げた。


あずまくん、どうしてここに……」

「書類をチェックしていたら、ご遺体搬送手続きをした刑事の名前にすごく見覚えがあったの。ちょっと聞いてみようと菊田を訪ねたら席を外してるって言うし、もしかしたらと思ったらビンゴ」

「君も好き者だな」

「変死疑いの現場への臨場、変死についての状況捜査、捜査一課への捜査方針の助言、鑑識の可愛い後輩たちから回ってくる山のような書類チェックも、検視官けんしかんの職務なもんで」


 得意げに顎を上げる東に、ふと蕗二は疑問を感じた。


「菊田さん。この事件って、まだ帳場ちょうばは立ってないんですよね?」

「ああ、これから綾瀬署あやせしょに立つ予定だ」


 そこで菊田は、左腕を持ち上げる。手首に巻きつけた時計の長針と短針の位置を確認して、大きく首を傾げた。


「待て? 蕗二くんが遺体を発見して、報告があって、鑑識が現場に入って、ご遺体の搬送はんそうと科捜研への依頼、書類にまとめて提出したら……東くんに書類が届いたのは、ついさっきか? まだ事件の詳細も分からないはずだが……」


 東の余裕だった表情が強張った。よく見れば手ぶらだ。それだけ慌ててやってきたのだろう。蕗二は口元にこぶしを当てて、さらに続ける。


「鑑識や科捜研が検死の結果を出すには時間がかかります。その間、警察もぼーっと待ってるわけにはいかない。検視官は、ご遺体の状態だけを見て捜査の方針を決める大事な役割もあるんですよね? でも今回のご遺体の状況を見て、判断を迷った。だから、捜査会議に出席する前に、うちの野村からも意見を聞こうと思った、とか?」


 蕗二の視線を、東は露骨に避けた。何も知らないと言わんばかりに明後日の方向を向いていたが、やがて三方から突き刺さる視線に耐えられなくなったのか、開き直ったかのように床を蹴る。


「バレちゃしょうがないわね。そうよ、何か文句ある?」

「どうした、東くん。いつもの君らしくない。何をそんなに慌ててるんだ?」


 菊田が心配そうに問うたが、よほど腹の虫の居所が悪いのか東は大声で噛みついた。


「うるさいわね! 私だってひとつでも事件のヒントが欲しいに決まってるでしょ! 絞殺とか刺殺とか怨恨えんこんとか痴情ちじょうのもつれとか、そんな単純な話じゃないのよ、私だって見た事ないご遺体なんだから。それに今までの検視官の先輩たちさえも事件解決にたどり着けなった未解決事件なのに、もし間違ってて、全然見当違いの捜査方針だしちゃったら、検視官が築いてきた信頼が崩れる。そんなの無理、先輩たちに顔向けできない……」


 顔に手を当てた東の声はだんだん小さくなり、とうとう意味もなく同じ場所を往復し始めた。さながら狭い檻の中、ノイローゼになったライオンのようだ。心なしか体も縮み、顔色も悪くなる。


「やだああ、どうしよう、プレッシャーがすごい、誰に相談したらいいの…………あーもう、優秀な人材が目の前にいるのに、なんで協力してもらっちゃだめなの? 極秘部署なんてまどろっこしい。ただでさえ鑑識はグロいとかキツイとか言われて万年人手不足なのに、ネコだろうが犯罪者予備軍であろうが手を借りたい……紅葉だけでもどうにか鑑識に正式採用できないかしら……」

「今のところ、≪ブルーマーク≫は適性検査ではじかれて、警察官にはなれませんね」

「知ってるわよ、そんなこと!」


 うっかり真面目に答えてしまった蕗二に東は歯をいた。見かねた竹輔がまあまあと間に入る。


「東検視官でも悩むほど、今回の事件は難しいって事ですよね?」

「当たり前でしょ! 何、あんただったら分かるわけ!?」

「検視官の東さんが悩むほどなら、もう僕らにはさっぱりで。とくにこの部署は捜査会議にも出席できなくて、もう僕らも困り果ててるんです。かんでもいいので、ぜひ意見を聞かせてください」

「なんの根拠こんきょ証拠しょうこもない、私の、女だか刑事だかの、勘みたいな曖昧あいまいな意見でも!?」

「もちろんですよ! だって数々の事件現場を見てきた検視官の東さんの意見ですよ? 経験値が違うんですから、勘は勘でも当てになる勘です!」

「ううう、そうかしら……」

「そうですそうです。それに、頭の整理ができないから余計(あせ)っちゃうんだと思います。とりあえず考えてること全部話したら意外とすっきりまとまると思いますよ? ほら、人に悩み事を吐き出すと、心の整理がつくのと同じですよぉ」

「ぐ、う、絶対他言しない?」


 ぐるぐると喉の奥でうなり声を上げる東に、竹輔は任せろと自分の胸を叩いた。


「大丈夫です! 口がかたいのが自慢なんですよ。捜査会議にはまだ2時間くらい猶予ゆうよがありますし、それまでには野村さんもここに到着して、意見を聞いて東さんに伝える余裕もあります。はい、これが僕の番号です」


 さっと液晶端末を取り出した竹輔に、東をぎこちない動きで端末を取り出し、お互いの連絡先を交換する。


「その約束、破ったらただじゃ置かないから」


 喉元に食らいつかんばかりの鋭い視線で竹輔をみつけ、そのまま菊田へと視線を移す。


「で、どこまで話したの?」

「被疑者について話そうとしていたところだ。東くんが資料を読んでいる間に、我々も……」

「いい、すぐ終わる」


 菊田を押しのけた東は、机の資料をつかみ取った。

 一度資料を閉じ、背表紙をトントンと机に置いて紙束がそろうように整える。そして、最初のページから最終ページまで一気にめくった。ページがパラパラと音を立てすぐに閉じる。2冊目も同様だ。まるで読んでいるようには見えない速さに、たまらず目を疑う。両方合わせても30秒もかかっていない。呆然とする蕗二と竹輔に、菊田は「ほお」と感心する。


瞬読しゅんどくか、いつの間に覚えた?」

「忙しすぎて覚えたのよ」


 忌々(いまいま)しいと、舌打ち交じりに言うと、乱れ切った髪を額から後頭部までき上げた。

 天井をひとつ仰ぎ、そして深く息を吸う。そして全身から息を吐き出すように、細く長い息を吐いた東の表情は、検視官の威厳いげんを取り戻していた。


「当時、被疑者としてあがったのは1件目の被害者、周防ハツカの孫、周防すおう耕作こうさくだった。しかも彼は≪ブルーマーク≫の判定が付いている。犯罪防止策が始まる前から素行そこうが悪く、未成年のうちから暴行、傷害、同級生を脅迫して金銭を巻き上げたり、多々トラブルを起こしている記録もあって、その中には被害者であり祖父である周防ハツカの口座から無断でお金を下ろしてトラブルになった記録もある。周防耕作を重要参考人として調べたものの、犯行時にアリバイが成立していて、家からも証拠になるようなものは一切発見できず。1件目と2件目が同じ遺棄方法だったことから同一犯による犯行なのは分かっているのに、結局捜査はまた暗礁に乗り上げた」


 苛立いらだちをぶつけるように、東は資料へこぶしを落とす。


「で、ここからは私の所感しょかん。1件目はただのデモンストレーションで、2件目が本番だと思った。でも、3件目を見て、よく分からなくなった」

「どういう意味ですか?」


 東は並べられた2つのご遺体の写真を交互に見て、低くうなり声を上げる。


「1件目のご遺体は、まるで隠すように置いてはいたけど、ご遺体を加工するような死体損壊をするのなら、なにか目的があると思った。たとえば自己顕示欲じこけんじよく。変わったことをして自分は他人とは違うって主張したい、とか。で、2件目は不特定多数の目にまるような場所にわざわざ置いた。被害者と被疑者の接点はない事も踏まえて、衝動的に被害者を襲うほど我慢ができない、目立ちたがりで自己主張が激しい奴だと思ってた。実際、被疑者の周防すおう耕作こうさくと言う男の≪マーク情報≫はそれに合致がっちしていたのよ。でも、3件目の遺体発見状態を見て、違う気もしてきた」

「確かに。3件目は隠しているようにも感じますよね」

「そうじゃない」

「え?」


 思わず蕗二が聞き返すと、東は親指と人差し指で顎を掴んで、首をひねる。


「まるで、真反対の人間がやったような気がする」

「同じ犯行方法なのに?」


 意味が分からないと眉間を寄せた蕗二に、竹輔が手を上げた。


「事件がマスコミから漏れて、犯行を模倣もほうした可能性は?」

「それはない。この事件はあまりにも類を見ないご遺体の状況から、警視庁から厳重な緘口令かんこうれいを敷いた。警察関係者も詳しい状況を知るのはごく一部だったはずよ」

「まったく同じ犯行ができるのは、犯人のみ。ってことですね」

「そう。でも、何かね、ざつなのよ」

「雑?」

「1件目と2件目は現場に残っていた足跡そくせき一致いっちしてるし、今回もまったく同じ方法で遺体を加工しているから、同一犯であることに間違いはない。でもね、3件のうち、2件目だけがね、なんか雑なのよ。あー、なんて言ったらいいの? ともかくなんか違和感があるのよ。あーもう、全然すっきりしない。紅葉ならきっとこの私が感じてる違和感、分かってくれると思ったのになぁ……」


 盛大な溜息をついた東は、怒りの矛先を向けるように蕗二の鼻面に指を突きつける。


「ともかく! ご遺体はかなり特殊な状態だから、科捜研かそうけんに運んだわ。結果がわかり次第一番に連絡する。だからあんたたちも情報があったらすぐ知らせなさいよ」


 肩でそろえられた髪をスカートのようにひるし、東は段ボールの壁の向こうに姿を消した。

 ドアが開錠され、再び閉まる音を聞いてから、三人は大きな溜息を吐き出した。


「東くんがあんな我を失うほど追い詰められるなんて、見た事がないんだがな」

「竹、ナイス」

「いえ、僕は大したことはしてませんよ。約束破ったら僕がボコボコにされるってだけの話です」

「約束を守れば、ボコボコにはされないな。とりあえず、野村に連絡するぞ」

「あ、さきほど野村さんに連絡を入れたら、OKって返事がきました」


 竹輔が液晶端末を蕗二に見せた。すでに既読きどくのマークをついていて、可愛らしいキャラクターがOKと親指を立てた画像が送られてきていた。


「でも、なんだか野村さんを駆け引きの材料みたいにしてしまって心苦しいです」

「理由はどうあれ、どっちみち呼ばないって選択肢が元からねぇよ」


 蕗二も同じメール画面を開く。竹輔がグループメールで送っていた文章に目を通していると、既読マークがさらに増えた。数は4つ。メール文を送った竹輔以外の全員が目を通したことになる。


「東検視官があの反応だったんだ、野村はどんな反応をするか」














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