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もし、あの日に戻れるのなら、俺は何ができるだろうか。
そんな無意味な事を、何度も考えたことがある。
なぎ倒された屋台、ぼろきれのように倒れる人々、悲鳴が轟々と嵐のように荒れ狂う。
その最中、男が一人立っている。
深く被ったフードの下、歯を剥いて男が笑っている。
脇に構えられた、血濡れの刃は真っ直ぐこちらを向いている。
夢を見れば、いつも同じ。何度も同じ始まり。同じ終わり。
壊れた録画映像のように永遠と、ただ同じ場面を繰り返し見ていた。
血溜まりの中、父の冷たい体を抱え慟哭するあの日の俺。
あの日、無力な俺に何ができたのだろうか?
無意識に、体が震えていた。
呼吸をしているはずなのに、吸っても吸っても苦しいばかり。
瞬きができない。
目を瞑るのが恐ろしい。
両手の中に構えた、黒い拳銃越しに青い光が、嘲笑っている。
今まさに、あの日の光景が、目の前に広がっている。




