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愛してる。
愛してる。
愛してる。
これほど君を見ている奴なんていないだろ。
君のことなら、おれはなんでも知ってる。
朝いつ起きて何を食べて、どの道を通って出勤して、どんな仕事をして誰としゃべって、何時に帰ってどんなテレビ番組を見てお風呂に……
ああ、そういえば昨日から生理だったね。トイレもいつもなら朝から帰るまで三回だけど、今日は七回だったね? お腹痛くなる前に薬飲まなきゃ駄目だよ。
そういえば今日、君のいつも使ってる痛み止めの薬、安かったから買ったんだ。ポストに入れてたんだけど、気が付いてくれた?
ね? ほら、おれが一番知ってる。
なのになぜ、なぜ伝わらないんだ。
おれを愛してくれない?
こんなにも君を想っているのに。
だから仕方ないだろ。
跨った足の下、大きく痙攣した身体が、糸の切れた人形のように血溜まりに沈んだ。
細い首をなぞり、柔らかな頬を撫でても顔が引きつることはない。
溜息をつくと、口角が上がるのが分かった。
待ちきれないと震える指先が、濡れた目尻をかすめ、艶やかな髪へと潜りこむ。
指に絡ませるように掬い上げたその先に鼻を押し当て、深く息を吸う。
微かで甘く、柔らかな匂いに脳の奥がじんと痺れた。
ああ、これでもうおれのもの。




