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ルナティック・ブレイン 【-特殊殺人対策捜査班-】  作者: 橋依 直宏
Consider 4  憫笑するブラインドフラワー
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 愛してる。

 愛してる。

 愛してる。


 これほど君を見ている奴なんていないだろ。

 君のことなら、おれはなんでも知ってる。


 朝いつ起きて何を食べて、どの道を通って出勤して、どんな仕事をして誰としゃべって、何時に帰ってどんなテレビ番組を見てお風呂に……

 ああ、そういえば昨日から生理だったね。トイレもいつもなら朝から帰るまで三回だけど、今日は七回だったね? お腹痛くなる前に薬飲まなきゃ駄目だよ。

 そういえば今日、君のいつも使ってる痛み止めの薬、安かったから買ったんだ。ポストに入れてたんだけど、気が付いてくれた?


 ね? ほら、おれが一番知ってる。

 なのになぜ、なぜ伝わらないんだ。

 おれを愛してくれない?

 こんなにも君を想っているのに。

 だから仕方ないだろ。


 またがった足の下、大きく痙攣(けいれん)した身体が、糸の切れた人形のように血溜まりに沈んだ。

 細い首をなぞり、柔らかな頬を撫でても顔が引きつることはない。

 溜息をつくと、口角が上がるのが分かった。


 待ちきれないと震える指先が、濡れた目尻をかすめ、(つや)やかな髪へと潜りこむ。

 指に絡ませるようにすくい上げたその先に鼻を押し当て、深く息を吸う。

 かすかで甘く、やわらかな匂いに脳の奥がじんとしびれた。




 ああ、これでもうおれのもの。












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