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金属バカと異世界転生  作者: 鏑木
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基礎魔石学Ⅰ

 THE説明回です。

 必修科目で単位は2単位、試験はレポート形式ですので感想欄にお願いします。

 カティ・セレナード様へ


 こちらの近況を報告させていただきます。


 ヴァーニャ様とお姉様は相変わらずのほほんとしています、

 親バカっぷりも極まってきており、サーシャ様の服を買い漁っています。



 お子様達は各自、才能に溢れていて見ていて楽しいです。


 ダーシャ様は騎士になりたいとの事で、槍と剣の練習を毎日していますが、

 その槍さばきや魔物との実戦経験、魔法も使えると考えると、普通の騎士では相手にならなそうな気がします。

 面白いので黙っていますけど。


 サーシャ様はここ3年ほど、魔石や様々な研究を続ける毎日を過ごしておられます

 たまに庭先から爆発音が聞こえて不安なのですが、傷一つ無いので大丈夫なのでしょう。


 変わった形のフォークを持って帰ってからというもの、食器に凝りだしたようで、

 庭で土を焼いて皿を作ったり、この間の買い出し時にはホウチョウ?という食料を切るためのナイフを持ち帰ってきました。

 使い方を教えてもらうと、とても便利でそれがない食卓が考えられないようになってしまいました。

 我が家の棚にはイマリ?という絵が書いてある皿や、オリベ?という変わった形の割には使いやすいティーポットなどが溢れています。


 料理にも興味を持ったようで、ホウチョウ?捌きは中々堂に入っています。

 変わったレシピをいくつか教えてもらったので、今度作りますね。


 しかるべき年齢になったら、魔法学院に通わせたいとお姉様が言っていました。



 本題の遺跡探索ですが、現在14階層で魔石の間を守る魔物に剣も魔法も通らないとの事で停滞しているとの事です。

 対応策がありましたらご連絡下さい。


 国の中央でのお仕事は気苦労が絶えないでしょうが、ご自愛ください。


 貴女の友人、リーゼ・ユーリエフより


 追記。ところで彼氏出来ましたか?



「こんなものですかね」


 友人に出す手紙を確認したリーゼは、食料を輸送してきた馬車の御者に届けてもらうように頼んだ。



---



「はい、では基礎魔石学の講義を始めます。質問がある方は挙手をおねがいします」


 四人の家族が座って、指揮棒を持つサーシャを見ていた。

 今日のサーシャは白いワンピースにベージュのカーディガンを上から着て、何故か伊達眼鏡をかけている。


「私は最近魔石の研究をしていました、そして仮説が確実となったのでそれを発表しようと思います。

リーゼは知っていると思いますが、魔石には文字が書いてあります。その解読結果の説明がこちらになります」


 サーシャは授業用に羊皮紙に研究結果を書き写してテキスト形式にしていた、それを4人に配る。

 解説用に買ってきた黒板を、伸ばした指揮棒でパシパシ叩いて説明を始める。

 伸縮する指揮棒はサーシャ自家製である。


「魔石の文字は魔力を長めに流すことで見ることが出来ます。

この魔石を見てください、今から魔力を流します」


 魔石に魔力を流し込むと、文字が浮かんできた。

 4人はそれを確認するように覗きこむ。


「確かに文字に見えるわね、なんて書いてあるかはわからないけど……」


 疑問を口にするナディアにサーシャは答えた。


「これは『火』と書いてあります。なんで読めるのかは、研究の成果だと思って下さい」


 まさか日本語という異世界の言葉です。とも言うわけにもいかず、サーシャは濁す。



「はい、質問です」


「どうぞ。リーゼ」


 リーゼが手を上げて質問する。


「その火の魔石、魔力を通しているんですよね?火が出ていませんが……」


「魔力量をちょっと調整すると発動しなくなるみたいです、増やしたら火は付きますよ」


 そう言って魔石を頭上に持ち上げ火を灯す。


「文字を確認するだけっていう状況なんてあんまり無いでしょうから、研究目的以外使えませんけどね」



「では続けます。文字なんですが、種類があることが判明しました。

アマンダさんにもらった魔石なんですが、単体では魔力を通しても文字が出るだけです。

しかし組み合わせると……」


 サーシャは外へのドアを開けて、外へ向かって魔石を向ける。

 そして、二つの魔石へ魔力を通して発動させた。


 ボシュっという音を立てて火球が外へ飛んでいった、しばらく進んだ後かき消える。


 サーシャは席に戻り、黒板に自作チョークで文字を書いて指揮棒で指した。


「この二つの魔石は『火』と『射』です。火を発射って事ですね。

 私はこの事を『主語』と『述語』と定義しました。

 お母様の魔法の杖もこの組み合わせだと思います。

 治癒の指輪は『癒し』とか『治療』が主語で『接触』が述語でしょうね、

 治療の魔石はアマンダさんにもらった魔石には入ってなかったので仮定ですけど」



「はい、サーシャ!」


「どうぞお母様」


 手を上げたナディアにサーシャは質問を促した。


「なんでメガネかけてるの?」


「頭良さそうに見えるからです!」


 サーシャはクイッとメガネを直すと胸を張った。


「そうね、とても可愛いわね」


 ナディアのズレた質問にサーシャはズレた返答を返した、そしてさらにズレた返答が返ってくる。

 残念ながらこの場にツッコミ役は居ないようだった。



「では続けます。文字にはもうひとつ種類があります、『修飾語』と定義しました。私の弓には三文字書かれていたのですが……」


 サーシャは黒板に『矢』『集束』『射』と書いた。


「この場合、『集束』が修飾語になります。矢を集束して発射って意味になりますね。

以前射った時に矢が集まって一本になってました」


「なるほどなぁ、そういやそんな感じだった。集束したからすごい威力になったってことか。

それでここに書かれているのが文字の一覧か」


 ヴァーニャが羊皮紙をペシペシと叩く。


「一部抜粋って感じですね、見たことない文字も沢山あるでしょうし。

本の形式にまとめているところなんですよ。空きページを作って書き込めるようにしてあるんです。

他に何か質問はありますか?」


 サーシャは辺りを見渡したが、誰も手を挙げない。


「無いようですね。では、これで講義を終わります、ありがとうございました」



---


「ところでお父様、お願いがあるのですが……」


 サーシャはヴァーニャを上目づかいで見ながら頼み込んだ。


「私を遺跡にある魔石のところへ連れて行って欲しいんです。読めるかもしれないので」


 それを聞いてヴァーニャは渋面を作る。


「うーん、連れて行ってやりたいところだが、あそこの前に居る魔物がな……

ぶっ壊したのじゃ駄目だよなぁ……」


「そこでですね……よいしょっと」


 サーシャはテーブルの下から武器を取り出してテーブルの上に置いた。

 剣は両刃の普通っぽいロングソードなのに槍はなぜか十文字槍だった。ナイフは肉厚のナタのように見える。


「魔物が硬くて困ってるって聞いて、ミスリルで武器を作ってみました、剣と槍とナイフです。

サーシャ一号、二号、三号と名付けました!」


「妹よ。名前は後で別に考えようか」


 ダーシュが即座に名前を否定する、

 サーシャはちょっと落ち込んだが説明を続けた。


「柄には魔石を組み込んでみました。ミスリルは魔力を通すみたいなので。

剣には『斬撃』と『射』を、なんか切れるのがスパーって出ます。岩ぐらいなら切れるはずです。

槍には『火』と『付着』です、穂先に火が付きます、熱くないので安心して下さい」


 説明を聞いていたヴァーニャは疑問を口にする。


「ミスリルってすごく硬くて加工が出来ないって聞いたぞ?どうやってこれ作ったんだ?」


「そうですね……」


 サーシャは身振り手振りを交えて説明を始めた。


「いい感じに熱したら、取り出して後はハンマーでカンカン叩くんです、

いい感じに角度を付ければシュっとした形になるのでそこをガツンとやれば形は整います。

そしたらヤスリをササッとかけるといい具合に出来ますよ」


「そうか、わからん」


 ヴァーニャは真顔で頷いた。


「ダリオさんに説明した時もそう言われました……」


(前世でもそう言われたなぁ、『能力』を使った行為はそうとしか言えないから困るな)



「自分用には杖を作ってみました、さっきの指揮棒みたいに伸び縮みするんですよ」


 そう言ってサーシャは杖を取り出した。

 杖の先端は縦長の長方形になっていて、魔石が均等に埋め込まれている。

 最大まで伸ばすと槍のようなサイズとなり、打撃武器として振り回せるようになっていた。


「そろばんに似てるので、そろばん丸って名付けたらダリオさんに止められました。なんででしょうね?」


「サーシャ、私にはないの?」


 ナディアが悲しそうな目をしてサーシャを見る。


「お母様には同じ杖を用意してありますよ。

三列の魔石は左から主語、修飾語、述語と分かれています。対応表は後で渡しますね」


 杖を渡すと、ナディアはサーシャに抱きついた。


「ありがとうサーシャ!お揃いってところが良いわね、とても良いわね!」


 抱きつかれながら、サーシャは武器を興味深そうに触っているヴァーニャとダーシャに言った。


「多分大丈夫だと思いますが、一応使ってみてもらえますか?バランスがおかしいとかがあれば調整します」


 男二人はニヤリと笑ってそれぞれ武器を取って外へ向かった。



「ナイフは私がもらってもいいですか?」


 リーゼがナイフを取り、刃を撫でる。


「えっ、リーゼも戦うんですか?」


 熟練した手つきでナイフを確かめているリーゼに驚きを隠せないサーシャ。


「リーゼは前組んでたパーティの頃からの付き合いよ、よく魔物の首をナイフで狩ってたわね」


「サーシャ様が遺跡に潜るというなら、私が護衛します」


「そ、そうですか……お願いします……」


 普通の人だと思ってたリーゼが、凶悪な戦士だと知ってサーシャはため息を漏らした。

 クッソ長い説明にギブアップせずに読みきった方、ありがとうございます。

 書いてる本人はギブアップ寸前でした。

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