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The Holy Evil  作者: 風羽洸海
閑話
61/133

思いやりという名の嘘

 チェルニュクは小さな村だとは言え、その経営を一手に担う領主は忙しい。零細領主には零細なりの苦労があるのだ。

 家令である叔父オレクとその妻ラダーナが庶務を分担してはいるが、カスヴァは毎日、椅子の温まる暇もない。


 一度オドヴァとじっくり話をしたいと思ってはいたが、なかなかその時間が取れないまま、瞬く間に日々が過ぎてゆく。そもそもカスヴァ自身、父親と親しく語り合うという経験をほとんどせずにきたから、機会があっても上手く活かせなかった。


(思えば父上との会話は随分、無味乾燥で殺伐としていたな)


 今さらしみじみ記憶を噛みしめ、カスヴァは苦い思いを飲みこむ。

 長子である兄は、父の前ではいつも顔を強張らせていたし、兄よりは怒られることの少なかったカスヴァとて似たようなものだった。

 母が死んだ時、父は沈黙の殻に閉じこもった。思い出を語るどころか、きわめて事務的な用件でやむなく声をかけることすら、とてつもなく困難だった。


 兄が死んだ時は少し話すこともあったが、語り合うというよりも父の述懐をただ聞いていただけだった。ノヴァルクのザヤツに対する鬱積した不満、チェルニュクの将来に対する厳しい予想。おまえはヘマをするなよ、というのが唯一、直接かけられた言葉だったろうか。


 男って本当に不器用でしようのない生き物ね、と呆れるモーウェンナの優しい声が、脳裏によみがえる。まったくだな、とカスヴァは独りため息をついた。


 オドヴァには折に触れて、気にかけていると言葉や行為で示しているつもりだが、ちゃんと伝わっているのだろうか。あの日以来、オドヴァは一度も笑っていないのではないか? それとも、自分がいないところでは笑えているだろうか。


 ――などと、あれこれ思い悩んでいても、仕事は容赦なくやって来る。一番多いのは諍いの仲裁で、事務的に片付けるわけにいかないものだから、どうしてもオドヴァのことは頭の片隅に押しやられてしまうのだ。


 今日もカスヴァは、面倒臭くこじれた案件をどうにか妥結させ、争点となっていた畑からよろよろ帰ってきた。

 屋敷から微かに甘い香りが漂っていたが、荒んだ気分のまま入る気になれず、教会へ向かう。司祭と話したかったわけではなく、ただ心を静めたかったのだ。


 礼拝堂には誰もおらず、薄暗かった。窓から光が射している時はあらゆる奇蹟が宿っていそうな円環と聖御子像も、祭壇も、何もかも古ぼけてみすぼらしい。

 祈るでもなく茫然と佇んでいたカスヴァは、ややあって人の気配を感じた。奥の司祭部屋のほうからだ。なんとなく気になって、彼は祭具室に通じる戸口をくぐった。

 暗い小部屋を抜ける前に話し声が届く。彼は立ち止まり、眉を寄せた。声はオドヴァのものだったのだ。


 かつてモーウェンナが施していた教育は、司祭が引き継いだ。いつもは館の子供部屋にユウェインが訪れ、他人の目があるところで授業をおこなっているのに、なぜ今日に限ってここにいるのだろう。父親が外出する隙を狙って、言葉巧みに誘い連れ込んだのか――意識する間もなくそんな疑念が黒雲のごとく湧き、膨れ上がる。

 残酷なまでに鮮やかにモーウェンナの心情を追体験し、カスヴァは歯を食いしばって耐えた。今すぐ乱入してオドヴァを抱き上げ、外へ連れ出したい衝動に襲われる。


(ああくそ、もちろん君は正しかった)


 妻が息子を司祭から断固引き離しておこうとしたのも、今なら同意できる。大事な息子を、こんな逃げ場のない狭い部屋で悪魔と二人きりにするなど! ましてやモーウェンナにとっては、ユウェインは魔道云々に加え“穢らわしい男色家”であったのだ。触れるもおぞましい、まさに悪魔そのものだったに違いない。


 恐怖と警戒と怒りで、目の前が朱に染まる。だが強いてカスヴァはそこに留まった。自分のいないところで二人が何を話すのか確かめなければ。それに、いきなり憤慨した父親が現れて司祭と険悪になれば、オドヴァの心に良くない影響を与えるだろう。

 立ち聞きの後ろめたさはなかった。相手は悪魔なのだ、人間の倫理を適用すべきではない。


 と、その時ふいに、はっきりと言葉が聞きとれた。

「司祭様、母上は悪魔に殺されたんですか?」

 思い詰めた声音だった。カスヴァはどきりとして耳をそばだてる。今までオドヴァが、父にこんな質問をしたことはなかった。母上は楽園にいる、見守ってくれているよ、といったような言葉なら何度か交わしたが、死因が話題にのぼることはなかった。


 わずかな間の後、ユウェインの柔らかい声が応じる。いつも通り、穏やかで優しく思慮深さを感じさせる司祭の口調で。


「誰かがそう言ったのかい」

「……アヴァンが。奥方様を殺した悪魔は、きっとまだ池に潜んでるに違いない、だから絶対に近付いちゃなりません、って。司祭様は、悪魔をやっつけられないんですか」


 あの下男め。カスヴァは思わず渋面になった。池に近付くなと言うのは良いが、悪魔がいる、などと脅すのは考えが足りない。本人がそう信じているにせよ、あそこに悪魔がいる、と言うのはすなわち、村の司祭が役立たずだ、との告発につながる。

(後で話してやめさせないと。池が悪魔の住処にされたら、連鎖的に池に近付いた者が皆、穢れに巻き込まれてしまう。漁師も、魚を食べた者も)

 彼が考えると同時に、司祭もまた憂慮の感じられる声で少年に答えた。


「アヴァンはひとつ勘違いをしているね。オドヴァ、池は確かに危ない場所だが、悪魔の住処ではないよ。モーウェンナが亡くなったのも事故だ。殺されたわけじゃない」

「でも……」

「何か原因があるはずだ、誰かのせいであるはずだ、と考えたいのはわかる。確かに、いろいろな理由があった。間違えて、思い込んで、失敗した。いろんな人がね。モーウェンナは『悪魔』を倒そうとしていたけれど、そんな悪魔はいなかったんだよ。そして私は彼女を助けられなかった。頼れる司祭だと信じてもらえなくて、だから彼女は誰にも相談しないで、一人で決めて、一人で危険に向かっていってしまった。……お父上とは話していないのかい?」

「……苦しそうだから」


 首を振ったのであろう間の後、オドヴァはぽつりとこぼした。亡き母のことを口にする時、父はあまりにも悲しくて苦しそうで、だから、何も言えないし訊けないのだ、と。

 カスヴァは胸を衝かれ、小さく喘いだ。なんということだ。父親たる自分こそが幼い子をいたわり慰めてやらねばならないのに、逆に気遣われ、我慢させていたとは。


「オドヴァは優しいね。そう、もちろんお父上は苦しんでいるだろう。誰かが亡くなると必ず、近しい人は思うんだ。ああすれば良かった、こうすれば良かった、とね。あれもこれも出来なかった、あの時ああしていれば……。たとえそれが、年老いて弱った末の穏やかな死であっても、やっぱり遺された人は後悔するんだよ」


 ユウェインの温かな声が、向けられた相手ではないカスヴァの心までも柔らかく包み癒す。

 あくまでもただの言葉、思いやりと口調の力であって、魔術ではない。霊力の兆候が感じられないから、それは確かだ。良き司祭でありたいと願ったユウェインの魂がなせるわざなのか、あるいは、千年あまりを過ごして多くの魂を喰らったというエトラムの経験が生む力なのか。


「だからつい、誰のせいだとか何が悪かったとか、そういうことを考えたがる。でもね、そうやって理屈をつけて納得しようとしても、寂しさは変わらないよ。楽園に旅立った魂は戻ってこないし、何かを取り返せるわけでもない。毎日ひたすら死者を想うのは苦しいばかりだ。生きている者がするべきことは、他にある。……何だと思う?」


 長い沈黙があった。

 カスヴァは息を詰め、ユウェインが何を言うつもりか待ち受ける。司祭らしい説諭ならば良い、だがもし無垢な魂を堕落に引きずり込むつもりなら、すぐにも止めなければ。

 緊張の末に、ようやくオドヴァがおずおずと答えた。


「お祈り、ですか」


 思わずカスヴァはよろけそうになった。子供なりの賢しさで司祭に褒められそうな解答を出したのだろうが、これにはユウェインも虚を突かれたに違いない。奇妙な空白の後、堪える風情の失笑が微かに聞こえた。


「うん、祈って心が安らぐのならそれも良い。オドヴァ、答えを思いつかないからといって、相手に気に入られようとするのは感心しないぞ。たいていの場合、あまり良い結果にならないからね」

「はい。ごめんなさい」

「素直でよろしい。君にはまだ難しいと承知で質問した私も意地悪だったね、すまなかった。答えを教えよう、生きている者がするべきことは……喜び、楽しむことだよ」

「えっ?」

「無理に笑えと言うのじゃないよ。悲しみは胸から消えなくても、生きてこの地上世界に在ることの喜びを見出し、幸せを知りなさい。深呼吸して、空を見上げて、美味しい食事や美しい花、愛する人々とのふれあいを楽しみなさい。生きている間にしか味わえないのだからね。そうして君が幸せであることが、楽園の母上にも慰めになるだろう」

「…………」

「それでもやっぱり寂しくてつらい時は、お父上にしがみついてわんわん泣くといい」

「そんなこと、しません! 子供扱いはやめてください!」

「おや。彼はこう言っているけど、どうする、お父上?」


 いきなり大声で呼びかけられ、カスヴァは今度こそよろけて隠れ場所から一歩踏み出した。口をぱかんと開けた息子の、丸くなった目と目が合う。

 カスヴァは咳払いし、ごそごそ姿勢を変えて威儀を取り繕った。それから改めて我が子に向かい合い、ほろ苦い笑みを浮かべる。


「そうだな。子供扱いして、おまえに気遣われているとも、我慢させているとも気付かずにいた。すまなかった」

「父上……」

「だが、そんなに急いで大人にならないでくれ。まだ父親らしいことを何もしてやれていないんだから」

「そんなことはありません!」

 途端にオドヴァは激しく首を振った。驚いているカスヴァを真っ向から見据え、頬を紅潮させて拳を握る。

「父上はご立派です! 剣術を教えてくださるし、忙しいのに僕のことを気にかけてるのはわかります。だから、僕は」


 言葉尻で急に嗚咽がこみ上げ、オドヴァは声を飲み込んだ。父親譲りの緑の双眸が見る間に潤み、涙が盛り上がってぽろぽろこぼれ落ちる。それでも、頑なに椅子に座ったまま両手を膝に押しつけるようにして動かない。カスヴァは、甘えようとしない息子のそばへ歩み寄り、そっと軽く頭を抱き寄せた。


「だから、俺が出かけた隙にこっそり司祭と話しに来たのか。余計な心配をさせまいとして」

 申し訳なさと共に、こんなに幼いのに親を気遣う心の強さへの賞賛を込めてささやく。丸い頭がこくんとひとつうなずいた。

「……館では、みんな……僕が母上の話をすると、すごく、……困った顔をするから」

「ああ、そうだな。皆、おまえを気遣っているんだよ。寂しいだろう、悲しいだろう、どう言って慰めたらいいだろうか、と。おまえが俺を思いやってくれたのと同じようにな」


 カスヴァが言うと、オドヴァは少し面映ゆそうな表情になってもじもじした。母親を思い出させる栗茶の髪を優しく撫でて、カスヴァは言葉を選びながら続ける。


「母上のことは、ユウェインが言った通りだ。何人もの過ちが重なった結果で……誰も悪くないとも、皆が悪いとも言える。全部悪魔のせいにしてしまえたら、気が楽なんだが。おまえがもっと大きくなって、色々な経験をして、複雑な事柄を複雑なままに受け入れられるようになったら、その時に話そう。今はただ、誰もが止め損なった事故だと覚えておきなさい」

「……僕も、失敗した?」

「おまえには何の落ち度もない」


 潤んだ目で見上げられ、カスヴァは力強く即答した。

 あんな時に病気になったから、治療をめぐって両親が対立し破滅への道を決定したのだ――そんな自罰的なこじつけが我が子を捕らえないように。誰かがこぼした迂闊な言葉で苦しむことのないように。

 カスヴァは念を押すように笑みをつくり、うなずいた。


「だからもう、思いつめるな。さあ、帰って厨房でおやつをねだって来い。ラダーナが焼き林檎を作ると言っていただろう、さっき外までいい匂いがしていたぞ」

「ほんと?」


 反射的にオドヴァはぱっと顔を輝かせ、次いで首を竦めてユウェインを見やる。すっかり存在を忘れ去られていた教師は、気を悪くするどころかにっこりして応じた。

「焼き林檎か、それは一大事だね。よし、今日はここまでにしよう」

 一緒にお茶を、とばかり腰を浮かせた彼を、カスヴァは素早く、しかし息子に気取られないよう自然な態度で牽制した。

「後から行くから、焼き上がっていたら先に食べていいぞ。俺は林檎にありつく前に、おまえたちの話を立ち聞きした罪を、主に赦して頂かないといけないからな」

 冗談めかして言いつつ、司祭に鋭い一瞥を投げる。察したユウェインは天を仰いで聖印を切った。


 聡いオドヴァも甘いおやつが目の前にちらつけば、大人たちの言外のやりとりは見えなくなる。司祭に礼を言ってぺこりとお辞儀をすると、笑顔で飛び出していった。

「素直な良い子だねぇ」

 ユウェインはほのぼのとした口調で言ってから、少しばかり意地悪な表情になった。

「あと三年もすれば口答えばかりするか、何を言っても返事しなくなって、君と掴み合いの喧嘩をしたりするようになるなんて、今はまだ信じられないな」

「やめてくれ」

 カスヴァは渋面で唸り、一段と声を低めて質した。

「息子に妙なことを吹き込んでいないだろうな」


 毒を塗った鋭い穂先を突きつけられたにもかかわらず、ユウェインは怯みもしなかった。いつもの穏和な笑みを湛えたまま、困ったように首を竦める。


「良き司祭であらんとする僕の努力を、少しは信じて欲しいね。そもそも新たな知識価値観を村に伝えて旧弊を正そうというのは、僕が憑く前からユウェイン本人が決心していたことだよ。まだオドヴァには早いし、教育するにしても次期領主として差し支えないように配慮はするさ。悪魔なら誰彼かまわず堕落させると思っているのかい」

「相手を選んでいるとしたところで、オドヴァを標的にしないとは信じられないな」


「……モーと同じか」

 ユウェインは唇を歪めて自虐的につぶやいた。カスヴァは小石を飲んだような不快感をおぼえたが、流されまいと敵意を保って相対する。

「ああ、ついさっき彼女の気持ちを嫌と言うほど理解した。我が子が悪魔の餌食にされるかもと思うと、正直、貴様を叩き斬ってでも連れ出したくなった。……彼女とは違って、その……別の意味での危険は心配しなかったが」


 最後で攻撃の手を緩めたカスヴァに、ユウェインは失笑した。ありがとう、と礼を言った声音こそ揶揄まじりだったが、目には救われた安堵の色がある。

 そうなると結局カスヴァも、いつものように軟化してまうのだった。さっきまでオドヴァが座っていた椅子に腰を下ろし、置きっぱなしの書字板を検分するふりで、気まずさをごまかす。


「さすがに、子供に手を出す変質者だとは思っていないさ。授業の進み具合はどうだ?」

「特にこれと言って問題はないよ。それなりに真面目に取り組んでいるし、際立って聡明でも愚鈍でもない。ああ、読み書きよりも計算のほうが得意みたいだね」


 ユウェインは保護者に説明しながら、机上を片付ける。そこで彼はふと真顔になった。


「さっきは冗談半分に言ったけど、オドヴァの今後を考えると、君ひとりでは手に余るかもしれない。オレクさん一家や使用人の皆も何かと世話を見てはくれるけど、やっぱり君には奥方が必要だと思う」

「わかっている。女仕事を差配できる誰かを探しているところだ。オドヴァを口実にされるまでもない、候補が決まったら教えるさ。おまえの正体に勘付かれる恐れがないか、気になるんだろう」

「君、随分と疑り深くなったなぁ。僕のせいだから嫌味も皮肉も甘んじて受けるけどさ、これでも本気で君たち一家の将来を案じているんだよ。幼馴染みとして、この村の一員として、司祭として。もちろん正体に気付かれると困るというのは否定しないけど、最悪の場合は逃げ出せば済む話だからね」


 さらりと物騒な発言をされ、カスヴァは眉を寄せた。先に喧嘩を売ったのは自分だが、反撃されると腹が立つ。勝手なものだ。彼の苛立ちを見て取りながらも、ユウェインは穏やかな態度を変えなかった。


「僕だけのことなら、何とでもやりようはある。君やこの村の皆を巻き添えにしたくないからこそ、安全な相手を選んで欲しいんだ。まぁ、それで君の人生が惨めになったんじゃ意味がないけど……君はもう教会を信じていないだろうし、救いについて話したくても司祭はこれだし、だからさ、君の支えになれる相手が見付かるように心底願っているよ」

「…………」


 カスヴァは答えなかった。善人ぶるなと怒鳴りたい一方で、他の司祭よりおまえのほうがましだ、という複雑な信頼も確かにある。さらには、すべての警戒を打ち捨てて、本当にこの眼前の人物は――友人だろうと悪魔だろうと――純粋に幸福を願ってくれているのだと受け入れたい気持ちも。

 だから何も言えず、彼はただ黙って席を立ち、出て行った。




 空疎になった部屋で、司祭は椅子に腰かけたまま、じっとうつむいていた。

 長い静寂が息をひそめて通り過ぎた後、ゆっくりと彼は手を動かし、顔を覆う。


「泣くなよ、もう……」


 喪失の痛みが胸を突く。最も近しくありたい、あるべき相手から、いっさいの信を失った。司祭に対する信頼、盤石の友情、ただ一個の人間としての信用すらも。それだけならば『悪魔』の運命だと諦めようもあるが、カスヴァ本人もまた己の不信に苦しんでいるのが明らかで、そちらのほうが痛烈に魂を苛むのだ。

 年来の友人にして領主たる人物を、そのような救いのない状態に落ち込ませているのでは、とても『良き司祭』とは言えない。叶えられない願い、刺さったままの銀の杭。


「きついなぁ」

 つぶやきはこぼれる端から震えて弾け、散り消えて、誰の耳にも届かなかった。



(終)

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