表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Holy Evil  作者: 風羽洸海
第二部 霧の中を彷徨うとも
46/133

幕間

   幕間



 黒狼は足をひきずり、森をさまよっていた。

 もうどのぐらいそうしているのか、月日の感覚はとうにない。己が何者で、何を欲していたのかさえ、曖昧模糊としている。ただただ、飢えていた。


 かつては腹を満たすため、群れを率いて狩りをした。おぼろな記憶。だが今はもう、匂いを追う感覚もわからない。何を追い、どう仕留めたら良いのかも。代わりに、鈍い怒りと攻撃の衝動が腹の底でふつふつと滾る。


 ドォッ、と低い轟きが耳によみがえった。

 嵐の唸り。あの暗い日だ。もう少しで獲物を喰らえるところだった。肉に牙を立て、溢れた血で喉を潤したのは覚えている。なのに。


 邪魔サレタ。アイツニ……


 そうだった。この傷は、あの時にやられたものだ。存在の境界を引き裂き、弱らせてゆく一撃。屠った家畜を吊るして血抜きをするように。


 ……血抜キ?


 唐突に浮かび上がった光景に、黒狼は当惑し立ち止まる。その光景をかつて身近に知っていた、という妙な確信。だがそれも、現れた時と同様、すみやかに沈む。

 ふたたび狼は歩きだした。


 コッチダ。アイツハコッチニ行ッタ


 もしかして、これは久方ぶりの狩りではないのか。狼はニヤリと牙を剥いた。だが、ああ、この身体は獲物に追いつくまで持つだろうか。

 そう言えば、熊の母仔を見たような気がする。そろそろ仔が、母に追い払われて独り立ちする頃ではなかったろうか。幼く不用心で、取り憑きやすそうな……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ