小学校の準備始めます
翌日、学校のお偉いさんに頼んでみると、あっさりとドラコの入学許可が出た。
ただし条件付きでこの町の小学校に入る事が条件だった。
まぁそれくらいは問題ないし、公立なので学校の授業などではな金はかからない。
かかるとすればランドセルとかそう言った物の類だけ。
ちょっとバイトを頑張りながら節約する必要があるが、頑張るとしよう。
「いや、柊お兄さんには無理だから。主に金銭面」
目の前のクロウに冷静に言われてしまった。
「……ちょっとだけ現実から目を逸らしてもいいじゃん」
「逸らせない問題だから僕が言ってるの。ドラコを小学校から人間との付き合い方を学ばせるって言うのは選択肢の1つとして真っ当だと思う。でも金銭面に関して柊お兄さんはぶっちゃけ無力だ。社会に出て金を稼いでいる訳でもないのに子供を小学校から最低でも高校まで育てるとして、かなりの金がかかるとは想像できるよね?」
「……はい。で、でもだからって親から借りたり出来ないし、ローンだって組めるわけないじゃん」
「だから僕がお金を出す。これでも株と動画配信の広告料でかなり稼いでるから問題なし。金銭面ってところで僕ほど頼れる人はいないでしょ」
確かに身近なところで1番金があるのはクロウだろう。
1人暮らすのにこんなでっかい家を作る余裕があるくらいだ、誰よりも金を持っている。
だが……
「お前に失礼じゃないか?」
「失礼?僕に??」
「だってドラコを学校に通わせるのに金がないから借りるって情けないというか、いいように使ってる感じがするというか、何かそう言う関係は嫌だな~って」
俺が正直にそう言うとクロウは大きくため息をついた。
そして説教が始まった。
「柊お兄さん。金銭面でくらい僕に頼ってもいいんじゃないかな~?もちろん金銭面だけの関係というのは僕にとって日常的な物なんだよ。毎日株価の変動を見て売ったり買ったり、それが僕にとっての日常。それにジャパンに来る前はある会社のCEOとして働いていたわけだしね。そんな僕に頼らないでどうするの?僕がこの中で1番金を持っているんだから」
「いや、だから本当にそれが申し訳ないというか……できるだけ自分で頑張りたいというか……」
「だから頑張れる限界を超えてるんだよ。普通は金を溜めておいてから行動するものを見切り発進しているからそうなって当然。つまり金がないのは当然なんだから僕を頼りなよ」
「でも……」
「でもじゃない。なんにせよ借金する必要があるのは目に見えているんだから僕から借りた方が良い。利子なしで貸してあげるから、ドラコの教育をするんでしょ」
「それは……したいけど~」
「だったら変な意地張ってないで素直に僕に頼る。それともドラコの入学止めておく?」
「……すみませんお金借ります」
「それでよろしい。全く。ゲームや漫画を買うのとはわけが違うのにドラコの入学を見切り発進させるだなんて僕からすればありえない行動だよ。どれだけのお金がかかると思ってるの」
「……ごめんなさい」
「これから先色んな形で借金の返済をしてもらうからそのつもりでね」
「分かった」
ん?
色んな形で??
一体どんな形なのか全く分からないが、とりあえず金銭面の問題は解決したと言っていいのだろうか?
――
ドラコの入学に必要な金はクロウが出してくれることになったが、どんな風に借金を返せばいいのか明確に言われていない。
でも動画撮影の時とか、コスプレ撮影とかの時は普通にバイト代をくれる。
金額は今までと変わらない。
ドラコの入学代を差し引かれている感じがないのでつい聞いてしまう。
「なぁクロウ。ドラコの入学代ってどんな風に帰せばいいんだ?」
「…………」
「クロウ?」
俺がそう聞くと聞こえていなかったのか、ハッとしてから言う。
「え、何!?」
「いや、借金の話。どんなふうに帰せばいいのかって聞いてたんだが……」
「ああそれ。それは……もう少しだけ待って。もうちょっと考えてるから」
「そうか?まぁどんな条件でもしっかりこの礼はさせてもらうからさ、払い方決めたら教えてくれよ」
「…………どんな条件でも……」
俺がそう言うとクロウは何故か顔を赤くした。
一体何考えているんだが。
でもまぁクロウなら変な請求の仕方はしないはず……だよな?
なんて思いながらもふと1つだけ気になる事があった。
「ところでさ、クロウってずっとそのままなのか?」
「……どういう事?」
突然聞いても分からないのは当然だが、俺は1つ確認しておきたい事が出来た。
「クロウとドラコってぶっちゃけ人間ベースになってもまだ成長しそうじゃん。実際に背が伸びたりするのかなっと思って」
「それは……多分伸びるんじゃないかな。確かに今までは人間の体を模倣した状態ではあったけど、柊お兄さんの影響でこっちが本体になりつつあるから、成長の余地があるなら……成長するんじゃない」
「てことはドラコも身長伸びるんだよな……どんな大人になるんだろうな~」
将来性と言う意味ではドラゴンよりも人間の方が幅広い気がする。
というかドラゴンの場合ただ大きくなるだけの気がするが、人間だと体系とか身長とか色々変化する部分が多いと思う。
だからドラコとクロウの成長が少し楽しみだと思えてきた。
「どんな大人か。ドラコの場合不良娘にならないよう柊お兄さんの監視しだいなんじゃない」
「監視って言い方は止めろよ。それにドラコは根っこの部分はそんな悪い子ではないと俺は思ってるし」
「一応僕達全員悪の象徴だったんだけど。ドラコは怒りに任せて大暴れしてたし」
「それは言い方を変えれば怒りをコントロールできるようになれば問題ないって事だよな」
「それが出来たらドラコは最初から僕達と同じ扱いを受けてない。ドラコはとにかく感情的で理性や知性よりもそっちが先に働く。だから僕達と同じ悪扱いを受けるようになったんだ」
「でも何もしなければ何もしてこなかったんじゃ……」
「言ったろ、気まぐれだって。何もなかったらなかったでつまらないと言って大暴れし始める事も多かったんだ。だからどの勢力も仲間にするメリットよりもデメリットの方が大きいと見てできる限り傍観し続けたんだ。暴れ出したら全力で防御して過ぎ去るのを待つ。扱いは自然災害と似た感じでね」
そう聞くとやっぱりドラコが感情的になった原因は、誰もいない環境だったからではないかと思う。
ドラコ以外誰もいないのだから、ドラコは好き勝手にできるし、感情的に動いても文句を言う相手が居ない。
結局誰かとのコミュニケーションが全くない事が原因だったのではないかと俺は思う。
そうでなければ俺よりも圧倒的に長い時間を生きているはずのドラコが子供っぽいというのは矛盾しているような気がする。
「クロウ。やっぱり俺、ドラコの事最後までちゃんと見たいわ。どう成長してどんな大人になるのか。見届けたい」
「やっぱり柊お兄さんは子育て向いてるよ。そんな風に考えるの普通は大人になってからでしょ」
「そうだな。それからクロウも俺達以外の友達作れよ。なんだかんだでいい刺激になるし、クロウだってまだ成長するんだろ?」
「多分だけどね。ところで柊お兄さんってどんな女性が好みなの?」
「なんだ、俺の奪い合いに本格参戦か?」
「まぁそんなところ。だから参考にできたらなって」
「そう言われてもな……とりあえず身長差ができるだけ少ないと俺は嬉しい」
「高身長な女性が好みって事?ちょっと大変そうだな。スタイルとかは?」
「胸とか尻はないよりはある方が好きだな。あとは性格面だから気にしなくていいぞ」
「何で?性格が気になるなら僕だってある程度合わせるよ?」
「そんなの後からやっぱり嫌です~みたいな感じになるじゃん。だったら最初から普段通りにしてろ。その方が俺は好きだ」
「相手の好みに合わせて態度帰るのもテクなんだけどな~。……ところで今の僕の性格は好き?」
「好きじゃなきゃ一緒に居ないっての」
「そっか……そうなんだ……」
クロウは少し嬉しそうにはにかんだ。




