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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【傲慢】な人間
75/80

変化していく……

 放課後、他のみんなの様子も気になったのでクロウの家に向かった。

 最近のベルとドラコはクロウに家で遊んでいる事が多く、今日も俺の部屋にクロウの家に遊びに行くと置手紙があったのでクロウの家に向かう。

 そこでは予想と少しだけ違う光景があった。


「ベル本当に強すぎ!!それから黙ってないで解説!解説しながらやって!!」

「えぇ~。これくらい~誰にだってできるでしょ~?」

「出来るようなら解説動画なんて撮らないって!うわ、何の解説もなしに本当に倒される!!」

「ベル容赦なさすぎ!!ドラコ達に少しでも慈悲はないのか!?」

「面倒くさ~い~」


 ただゲームしているだけではなく、ベルの手元にスマホを固定させながら大乱闘を実況している。

 パソコンでは様々なコメントが飛び交っており、主にベルの手の動きが絶賛されていた。


「何してんのお前ら?」

「あ、柊お帰り!!」

「お帰りって言うかここクロウの家だけどな。と言うかどうした?今日は動画撮影するって聞いてなかったぞ」

「柊お兄さんお帰り。まぁ今日は生配信でお試し企画だったからね、お兄さんの手伝いなしでも出来る内容……だと思ってたんだけどね……」

「それがこの大乱闘の実況動画?世界大戦ならともかく身内の対戦じゃあまり見てくれる人いないんじゃないか?」

「だからお試し企画。それにベルがクリスマスの時に無双してたでしょ。それでどんなコントロール捌きなのか見てみたいってコメントが多く来たから生放送してみたんだけど……」

「レベルが違い過ぎてあまり参考になってないみたいだな」


 コメントでもコントロール捌きが凄すぎて参考にならないっというコメントが圧倒的に多い。

 中にはプロのゲーマーなのではないかと予想している人もいる。

 というかこの過去の企画もともと無理じゃね?


「なぁクロウ。俺思うんだけどベルに解説って無理じゃね。いろんな意味で」

「……うん。本当は僕も気が付いてた。元々かなりの無口だし、説明してって言っても面倒の一言で片づけちゃうし、解説向きじゃない事は分かってたけど、手元を映せば口数少なくてもどうにかなるかな~っと思って。それで実験してみたけどやっぱりダメだった」

「それで手元にスマホ固定させて実況……って言えるのか?とにかくプレイしてみたと」

「そう言う事。でもこれじゃ失敗だね。実況動画は解説とかのおしゃべりも必要だからさ、ここまで無口でひたすら倒していくとなると実況とは言えないからね。もう少しほかの路線も開拓していきたいかも」

「確かにな。というかこれ生放送だった。普通に話してるけど大丈夫?」

「大丈夫。柊お兄さんが出てくるとプチ炎上が起きてスパチャしてくれる人が多いからすごく助かる」


 そう言うのでパソコンの画面を見ると確かにスパチャが投げられていた。


「なぁ、何か俺に対して好意的なコメントと一緒にスパチャしてくれる人もいるのはなんでだ?」

「色んな人が見てくれてるからね。僕が動画配信して素の僕が見られるから柊お兄さんが来てくれると嬉しいって人もいるみたい」

「素と言っても普通に人と会うときと変わらない感じなんだけどな。それじゃちょっと俺も混ぜて。ベル攻略に少しでも希望の光が欲しい」

「そんなこと言ってると僕とドラコに狙われちゃうよ」

「ぶっ倒してやる!!」


 ドラコが興奮気味にそう言った。

 少しだけゲームに混ざりすぐに生放送は終わった。

 そしてどうして今回のような事をしていたのかベルに聞いてみる。


「ベル。お前らしくない行動だな。ただ遊びに来たようには見えないな」

「えっとねぇ~。僕もぉ~そろそろ生きてみようと思ってぇ~、クロウの所働けるかなぁ~って思ってみたのぉ~」

「働く?お前が??」

「そぉ~。お金がないとぉ~寝る所もないからぁ~働いてみたかったのぉ~。お金が溜まったらぁ~、クロウみたいに株もしてぇ~お金を稼ごうと思ってたぁ」

「なんだって突然そんなこと言い出す?もしかして人間になりつつあることと関係あるのか?」

「そうだよぉ~。人間として生きるならぁ~お金はないとねぇ~。だからクロウの所でぇ一緒に働こうと思ったのぉ~」


 ベルも人間になりつつある事で少し考え方が変わったらしい。

 ダラダラ生きるために働く。

 だからまずは友達の所で働く体験をしてみようという事なんだろう。


「凄いなベルは」

「だからねぇ~、僕出て行こうと思うんだぁ~」

「……え」


 あまりにも突然の言葉に俺は本当に驚いた。

 驚きすぎて思考が消えた。


「これから先もずっと柊と一緒に居るためにも、僕は人間になるよ。人間になれば堂々と柊と一緒に居られるからね。でも大丈夫。しばらくはクロウとルームシェアするから」

「え、いや、でも」


 あまりにも突然すぎて次の言葉が出てこない。

 そう思っているとさらに予想外の声が上がった。


「あ、ドラコもやっぱりこっちに住む」

「ド、ドラコもか!?」

「うん。ここならシューに迷惑かけないし、近くにいれる。ドラコもクロウの所で人間の生き方を知ってみたい」


 あまりにも突然の事で俺は本当に意識を失っていたかもしれない。

 本当は喜ぶべきなのかもしれないが、突然すぎて頭の中が真っ白になっていた。


 その後俺がどんな話をしてどうやって寮に帰ってきたのかよく覚えていない。

 ただ気が付いたら量に部屋に居て、何時もより広く感じた。

 1人用の部屋で俺とドラコ、ベルの3人でいたから非常に広くなった気がする。

 だから1人でベッドで横になると、いつも以上に広く感じてしまう。


「なんか……寂しいなぁ」


 俺はそう枕に頭をくっつけながらつぶやいた。

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