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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【傲慢】な人間
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人間の体

 冬休みが開けて俺達はまた学校に通い始めた。

 久しぶりに見るクラスメイト達はこの間の事件について話し合っていた。

 そして俺達の行動は公にはされていないので、精神攻撃をしてくるアンノウンの仕業を現地の転生者達が解決したと言うあいまいな形で伝えられている。

 そのため正体は誰だったのかの考察がクラスメイト達の中で流行っていた。


 でも俺にとってはもうそんな事はどうでもよくて、ただみんなの事を人間に変えてしまっている現実とどう向き合っていけばいいのかばかリ考えている。

 どうにか先に俺の力を先に使い果たすことは出来ないのだろうか?

 そうすればコッペリア達は力を失うことなく元の日常に戻る事が出来るのではないだろうか?

 相手の気持ちを考えず、勝手に力を使うのはシンと変わらない。


「ねぇシュウ。一緒に来て」


 コッペリアにそう言われて誘われた先は屋上だった。

 何と言うか……みんなとこっそり話す時には必ず屋上を使うような感じになっちゃったな。


「シュウ。またコンに余計な事を吹き込まれたんでしょ。私が人間になって勝手に責任感じてるんでしょ」

「そりゃ……まぁ」

「本っ当に呆れた。私は別に嫌じゃないわよ、人間になるの」

「え?そうなの?」

「あなた知っているはずよね?私が人間になろうとして様々な罪を犯してきた事を」

「それは知ってるが……」

「その目的は達成された。喜んでいいじゃない」

「でもそれは俺が強制的にしてしまった事で……」

「別にいいわよ。シュウの力なら」


 そんな風に断言されると俺の方が困る。

 俺はこの力を制御できずにみんなの事を変えてしまっているのに、喜ぶと言われても正直複雑だ。

 そんな考えが顔に出ていたのか、コッペリアはため息をつきながら俺の隣に並んで言う。


「あのね、私だって人間になる方法を教えてくれるのであれば誰でもいいって訳じゃないのよ。シュウの力だから受け入れた、受け入れる事が出来た。その方が正しいわね」

「受け入れる事が出来たって、やっぱ嫌だったんじゃねぇの」

「嫌というよりは戸惑いね。だっていきなり機械の身体から人間の体に変わったのだから戸惑うでしょ。だから驚いたし何でとも思った。でもこれがシュウの力である事は察する事が出来たから納得も出来た。こんな急に人間になれる訳がないもの」

「……本当に嫌じゃないのか?」

「嫌ではないって何度言えば済むの?何度も同じ事を言うのは流石にイラつくんだけど」

「でも、やっぱりさ……気になるじゃん」

「……まぁ不便なところはあるわよ。突然人間の体になったからこの間のお酒なんてすぐに潰れちゃったし、今まで内部に隠す事が出来た兵装はすべて外部装備に切り替え、手間もコストもかかりっぱなしよ」

「すまん」

「でもそれも込みで人間なのでしょ」


 コッペリアは笑みを浮かべながら言った。

 どうして笑みを浮かべているのかが分からない。


「機械の身体から人間の体に変わった訳だけど、機械の身体の時よりも無駄と言う物を楽しめるようになったわ。よく人間が言うロマン?っていう物も正直無駄としか思ってなかったけど、今なら少しだけ分かるわ。機能美もいいけどある程度の装飾は必要ね。これからは美術的な部分も人間から学んでみようかしら」

「具体的には?」

「そうね……まずは兵装に色を付けるところから始めましょうか。確か痛車?とかあんな感じで」

「あれアニメのキャラとかを描いてんだぞ。そこまで推しのキャラいたのか?」

「そうでなくても意味はないけどカッコいい絵とか描いてるじゃない。まずはそこから始めようと思うの。来年からは美術系の部活に入るのもいいかもしれないわね」

「美術系か……よく分からん抽象画とか俺全く理解できてないぞ」

「私もこれから学ぶところ。それに美術と言ってもデザインとかそういう絵とか色々あるし、とりあえず手を付けてみるわ。これも人間らしいでしょ」

「そうだな。人間らしい」


 俺はそう言いながらほんの少しだけ余裕が生まれた。

 コッペリアは人間になって人間として楽しもうとしている。

 それが知れただけ少しだけ楽になった。


「そうなるとこれからは健康にも気を付けろよ。甘い物ばっかり食べて太ったり糖尿病になってもしらんからな」

「それは色々嫌ね。太るのも病気になるのも」

「なら気を付けるこった。そうなるとドラコとかは本当に大丈夫なのか?見た目的にも一番影響がありそうだけど」

「う~ん。案外気にしてなさそうなのよね~ドラコ。身体的な変化と言う意味では私の次に影響が大きそうなのはドラコかベルだと思うけど、ベルは寝る事が出来ればあまり気にしなさそうだし……」

「というかベルが1番ヤバくね。必要な事だけして生きろとは言ったが、あいつ寝るのが優先だろ。マジで金稼いで生きて行けるのか?」

「……シュウ。やっぱり私達の誰かと結婚して、ベルの面倒見た方が良いんじゃない?本当に」

「……俺もその考えに一票。絶対あいつ結婚とか面倒くさいで終わらせるぞ」


 なんだか他の問題が出てきてしまい、コッペリアが人間になってしまった事よりも重大な気がする。

 実際ベルも変化があるのだ。

 今まで周囲に全く気にせず寝続けていたベルが最近起きて何か活動している事が多い。

 ドラコのゲームの相手だったり、俺と一緒にクロウの配信の手伝いをしたり、起きて活動している事が目立ってきた。


「てっきりシンの事が終わったから寝るだけじゃなくなったのかもと思ってたが、人間になりつつあるからか~」

「おそらく睡眠時間も人間と変わらないようになってくるでしょうから……自然と起きている時間の方が長いと感じていたのでしょうね。それに食事や運動も必要になってくるでしょうし」

「食事に関してはともかく、運動は本当に大丈夫なのか?最近は起きてきたけど運動と言えるだけの活動をしているのかと聞かれると……」

「不安材料しかないわね。これに関してはみんなにも聞きながら改善していくしかないわね」

「マジで協力頼む」

「気が付いた以上協力しない訳にはいかないわ。目指すわよ、健康的な生活!」

「ダイエットじゃない健康的な生活って俺初めてかも」

「確かにそう言う意味合いの方が大きいかもしれないわね」


 俺達はこうしてベルの健康状態を確かめるため、屋上を後にしたのだった。

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