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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【傲慢】な人間
69/80

クリスマスパーティー開始

「「「「「メリークリスマス!!」」」」」


 シンが攻め込んできた翌日、つまりクリスマスイブは予定通りクロウの家でどんちゃん騒ぎとなっていた。

 奥さんを中心にコッペリア、コン、愛香さんが料理の準備。

 クロウやドラコは遊び担当。

 ベルは人型のままソファーでまた寝ている。


「ベル。今日ぐらい寝てばっかりいないで遊んだらどうだ?」

「……あまりテンション高くないよぉ?」

「別にいいだろ、一緒に遊ぶくらい。それにもうそんなに力を溜めておく理由もないだろ」

「…………それもそうだねぇ~。それじゃ僕もご飯食べたりぃ~遊ぼぉっと」


 そう言って俺が勝って来たケ〇タッキーのチキンを手に取ってゆっくり食べ始める。

 食うのものんびりだし、なんか食べながら寝そうな雰囲気があって見ていないとおっかない。


「みんな~、僕の生放送チャンネルにようこそ!今日は僕の友達と一緒にクリスマスパーティーの状況をお伝えしちゃいます!!」

「クロウ。こんな時まで配信か。というか利益出るの?」

「ちょっと柊お兄さん。意外と利益も出るし、こういうイベントこそ配信していかないと」

「でも大丈夫か?友達と遊んでるだけとはいえ、リア充アピールうぜぇみたいなの来ない?」

「まぁちょいちょいそう言うコメントもあるけど……こればっかりは仕方ないよ。でも出てくるみんな顔とかいいから素直に美少女が見たい!!ってコメントも多いからね」

「悪かったな。唯一の男がいて」

「それに一番被害受けてるの柊お兄さんだからね。ほら、嫉妬のコメント凄い事になってる」


 言われてスマホの中にコメントを見てみると、確かに嫉妬の声がすごい。

『クロウちゃんに近すぎ!!』

『どんな徳を積めば美少女たちに囲まれるんだよ!!』

『前世ハーレム王か?転生者が美少女軍団口説き落としたのか!!』

『今すぐその場所譲ってください。お願いします!!』

 などのコメントがすごい。

 しかも今コメントを見るためにクロウとの顔が近くなっただけで大炎上だ。

 このくらいは許していただきたい。


「本当に大丈夫なんだよな?この配信のせいで登録者減ったりしない?」

「柊お兄さんの事は他の配信とか実況動画で出演済みだから問題ないよ。あと僕もそろそろご飯食べよーっと」


 配信を続けたまま本当にクリスマスパーティーをやる気みたいだ。

 なんかの企画っぽく並んで話すだけならいいと思うけど、こうしてパーティーの状況を流すのはどうなんだろうな。

 なんて思っていると奥さんがドラコを取り押さえていた。


「ドラコちゃん。照り焼きチキンを手づかみして食べたならちゃんと手を拭きなさい」

「むー!レディは細かい!!」

「細かくないわよ。ほら、ちゃんとふきふきしなさい」

「子供扱いヤダー!!」


 いや、反応が完全に子供なんだよ。

 それを膝の上に乗せて逃げないようにしながら手を拭く姿は完全にお母さんだな。

 ドラコの方は大丈夫そうだ。

 奥さんへの負担は大きいと思うけど。


 そしてこっちはこっちで姦しいと言うべきか?


「さてコン。アイカ。いい加減シュウの事を狙いに行くわよ」

「そうですね。そろそろ猛攻を仕掛けてもよい頃かと」

「あの、猛攻って具体的には?」

「アイカ。さすがにわざとらしいわよ。あなただって分かっているでしょ、年頃の男子がどういう事が好きかなんて」

「そうですよ愛香様。つまり我々が行う事は――」

「「ハニトラよ(です)」」

「だからエッチなのはダメだって協定で決めたじゃないですか!!」


 何と言うか……俺の奪い合いから共有財産化しておりませんか?

 最初の頃は確かに奪い合うような形だったはずなんだが……いつの間にそんな形になった。


 俺はため息をつきながら、できるだけあのメンバーの近くにはいかないようにしようと思う。

 そしてもう1組、部屋の隅でそわそわしているのと、不満そうにしている見た目は姉妹に見える2人に言う。


「そっちはやっぱり落ち着かなそうだな」

「ゲン。だってその、これはあなた達のパーティーでしょ?参加していいのかまだよく分かんなくて……」

「俺が聞いてみんないいって言ったんだ。それにシンの事もある」


 ヒロの隣で体育座りをしたまま目の前の食事に手を出そうとしないシン。

 シンの今の体は人間と同じなので食べ物を食べないと死んでしまう。

 だがずっと体育座りのまま全然動こうとはしない。


 ちょっとだけシンの今の状態を話すと、今俺達に見張られている状況だ。

 誰かヒロ達の事を招き入れたのかは判明しているが、この事は学校側が強く今回の事件の追及をするからと言われ、コンが動こうとする前にそう先生達から言われた。

 たとえアンノウンであっても、現在は生徒として活動している以上生徒を殺そうとした存在は追及し、罪を清算させたいと言う気持ちが強い。

 だからここは頼りないかもしれないが、大人に任せてほしいと言われてしまったのだ。

 俺はそれでも構わないし、そんな事より今日のクリスマスパーティーの方が重要だったため代わりにやってくれるのであればありがたい。


 そしてシンはどうするかという話になったのだが、今は人間と変わらないとはいえ俺達が見ていないところでまた正義のために、なんて言い出して活動し始めるかもしれない。

 なら俺達が見張っているのが一番いいのではないかと思い、今は一緒に居る。

 そしてクリスマスパーティーに2人だけ参加させないのも可愛そうなので一緒に居ると言う訳だ。


 それからだがシンの要望でシンの体は形だけ俺達と戦った時と似た姿に調整された。

 それによりヒロと本物の姉妹の様に似ており、違うのは髪が白いのと、瞳の色が青い事だけ。

 でも顔のパーツとかは日本人と変わらないので、ヒロの2Pカラーみたいだ。


「シン。いい加減飯を食え。今のお前は人間と変わらない体なんだ。そのままじゃ死ぬぞ」

「構わん。死ぬ事が目的だ」

「またそんなこと言いやがって。あのな、コンとかコッペリア達が調べてくれたけど、今の体は日本の平均的な女子高校生と変わらないそうだ。あえて違う点を挙げるなら普通に生まれたばっかりの赤ん坊並みの健康状態くらいだと。そして俺はお前の事を普通の人間として見てる。つまりお前は空腹には耐えられないんだよ」

「食事をした事がない私が?それは食事をするのが普通であった者達の考え方だ」

「でもお前の体はその普通であった者達と同じだと俺は見ている。言いたい事、分かるよな」


 そう言うとシンは悔しそうに噛みしめるが、シンの腹から音が鳴った。

 シンはその音に驚き、またその音が自分の腹からなった事にまた驚いている。


「な、何故だ。私は食事をした事がないのに……」

「いいか元神様。生物は他の生物を殺して食うのが普通だ。と言っても人間の場合は畜産業をしてくれている人達から金を払えばそれで済むが、生物の死体を食っている事には変わらない。ここでは俺のルールに従ってもらうぞ」

「貴様のルールだと」

「当然だ。お前は勝って自分のルールを押し付けてきたんだろう。なら俺に負けたんだから俺のルールに従え」

「……性奴隷にでもする気か。それとも腹いせに拷問でもするか」

「俺そんな奴に見えるか?それならあの時すっぱり殺してる。俺は前世のトラウマでそう言う虐めとか拷問とか、自分でするのは嫌なんだよ。だから言っただろ。生きろって。俺のルールはそれだけ。生きろ。だから生きるために飯を食え」


 シンの目をまっすぐ見ながら言うと、何故か俺の目の奥を覗き込むように見返してくる。

 そして渋々飯を食べ始めた。

 フォークでソーセージをさして食べる。


「やっとか。このままだと手のかかるペット枠に収まりそうだな」

「ゲン。一応本物の神様だからペット枠って言うのはちょっと……」

「でも実際手のかかるペットみたいなもんじゃん。死にたいから食べませんって普通は言わないっての。言うとすれば精神的のかなり追い詰められた連中だけだ」

「それはそうだけど……あとゲン。1つ聞きたいんだけど」

「なんだよ」

「その、あの悪達ってずっとこの世界じゃあんな感じなの?」

「あんな感じって……まぁあんな感じだな」


 パーティーではしゃいで飯を食べたり配信したり、それぞれ好き勝手にしながらも他のみんなに気を使っている。

 多分少し探せばどこにでもある光景だ。


「それがどうかしたのか?」

「いや、その、意外だったから……てっきり悪い事でも考えているのかもって思ってたから……」

「まぁ普通はそう考えるか?でも本当にこれが普段の光景だからな……みんなで集まってバカやって。仕事とかで離れてもまた集まってるからな。多分いつも通り」


 今回はパーティーという事もあり、結構はしゃいでるけど。


「……そうなんだ。これが普通なんだ」

「意外か」

「意外。そっか、ゲンにとってはこっちが普段の彼らなんだね。私が知ってる彼らは、本当に敵だったから」

「仕方ない。お互いに殺し合ってたんだ。のんきに相手の事を見る余裕なんてないだろうよ」

「なかった。相手の戦い方とかを調べてばっかりで性格なんて見てなかった。ただ弱点と殺されないようにするところしか見てなかった」

「俺は戦争を経験してない。ヒロは戦争を経験してる。きっとこのはかなり大きいんだろう。だから前の事ばっかり考えないで、今の事も見てほしい」

「ちょっと難しいけど、ゲンがそう言うなら」

「できるだけ頑張ってほしい。無理な部分も当然出てくるだろうけどさ」

「ちょっと柊お兄さん!早く来てよ!!」


 クロウがそう呼ぶので俺は立ちあがる。


「また様子見に来る。いつでも飯取りに来いよ」

「うん。しばらく休ませてもらうつもりだから」


 そう言うヒロは本当に穏やかな表情をしながら言った。

 きっと憑き物が取れたっと言う表現は今のヒロにふさわしい。

 久しぶりに会ったあの険しい表情はなくなり、俺の記憶にある優しい顔になっている。

 まだシンの問題が残っているが、今は楽しむべきだろう。

 さて、俺も食って飲んで騒ぐか。

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