年末行事って多いよね
コンに戦争が起こると聞いて4日後、いまだに他のみんなはいつもと変わらない日常を繰り返していた。
いや、もうすぐクリスマスという事もありその話題の方が大きいか。
「今年のクリスマスどうする?」
「彼女とデートしたいな~」
「パーティーするか?」
なんて話題が出てくる。
まぁ明後日には学校も終わり。また来年となっているのだから浮足立つのは当然だろう。
俺も戦争の話がなければみんなと一緒にあーしよこーしよって言いたかったな~。
「柊君はどうするんです?ご実家に帰省ですか?」
みんなの事を羨ましいと思いながら眺めていると、愛香さんからそう聞かれた。
「今年は帰省なしかな。帰省しようがないメンバー多いし」
「それじゃ今年はコッペリアさん達と一緒に年越しですか?」
「そんなところ。最低でも俺があいつらの事見張ってないといけないって先生達に言われたし、まぁこれも俺がそうするべきだと考えているし、仕方ねぇや」
「他にも色んな事情で帰省しない生徒もいますからね」
「愛香さんは帰省組?」
「いえ、私も今年は寮で年越しです。柊君達と一緒ですね」
「そっか。それじゃ聞きたいんだけど近くに神社知らない?正月の行事あいつら楽しみにしてるからさ」
「あ~、この町には神社とかはないですね。電車に乗って少し移動しないといけませんね」
「そっか~。それじゃ今年は寝正月にしようかな~」
「ちょっと待ちなさい。それは約束が違うわよ、普通の人間は正月にはお参りに行く物だって聞いたのだけど」
「ドラコも神社行ってみたい!!」
「ドラコ、お前神社が神様を祀ってる所って忘れてない?」
「えー!!それじゃドラコいけない!?甘酒って飲み物飲めない!?」
「未成年どころかおこちゃまに酒飲ませるわけにはいかないだろ」
なんて話をして一緒に笑う。
そう話しているとコンも話に加わってくる。
「どうやらほとんどの生徒達が帰省されるようですね。帰省しないのは海外からの留学生や飛行機を使わないと移動できない方ばかりのようです」
「そうなんだ。一応2週間は休みあるから飛行機使っても帰れそうな気がするけどな」
「金銭的な面での負担も小さくありませんから、おそらくそう言った理由でしょう。そして私達はどうしますか?」
「え~っと、奥さんの所でのクリスマスパーティーだな。奥さんめっちゃ張り切ってたよな」
「はい。スーパーなどで買ってきたお総菜ではなく、全て自分で作ると張り切っておいででした」
「ぶっちゃけ手を抜ける所は抜いても良いと思うんだけどな。正月のお節料理も自分で作るって言ってなかったっけ?」
「言っていました。なので私やコッペリアも手伝う予定です」
「俺も手伝うよ。絶対3人じゃ足りないって」
「いえ、キッチンの広さが3人でギリギリなので大丈夫です」
「…………クロウに相談してクロウの家でやるか?」
「…………その方が良いような気がしてきました。ただ仕込み中の料理がクロウにつまみ食いされないかが少し不安ですが」
「ちゃんと説明すれば問題ないだろ。それに基本的に冷凍食品かジャンクフードばっかり好きで食ってるし」
「それを聞くとレディ様が怒りそうですが、相談してみましょう。それからですが」
最後にコンは声を小さくして教えてくれた。
「彼らは冬期休暇中に攻めてくるようです」
「そっか~。それじゃ忙しくなりそうだな」
普段と変わらない感じで俺は返事をした。
その方が愛香さんや他のみんなに対して自然でいられると思ったからだ。
「それからクロウへの説得は柊様にお願いしてもよろしいでしょうか」
「俺が言い出しっぺだからもちろん俺がやる。クロウの奴も普段からキッチン使ってないし、軽く良いよって言いそうだ」
「ではその件に関しては柊様にお願いします。私はこのあと少し用事がありますので先に失礼します」
おそらく戦争の件についてだろう。
俺達は見送った後愛香さんに聞く。
「愛香さんも混ざるか?クリスマスとか正月とか」
「え、いいんですか?」
「俺と奥さんは多分オッケーだろ。コッペリアとドラコは……」
「構わないわよ。ずっと寮にいるのも暇でしょうし」
「一緒にゲームしよ!!」
「大丈夫だな。そうなるとクロウをどう説得するかだが……」
「クロウもなんだかんだでアイカの事を嫌っている訳じゃないから大丈夫だと思うわよ。でも一々寮に帰るのも面倒ね」
「それなら外泊届を出しますか?クロウさんのお家にお泊り会って事で」
「それにしましょう。名目は何でもいいわよね?」
「待て待て待て。クロウにまだ話してないんだから決まってからにしよう。クロウにだって用事とかあるし、年末はちょっと忙しいし」
「何で年末忙しいんですか?」
「あいつ完全にオタク生活にどっぷりつかってるから、コミケに行くんだと」
「あ~。あれって日付いつでしたっけ?」
「30日と31日。30日はコスプレメインで参加するって言ってたし、31日は企業ブースの方で欲しいのがあるんだと。まぁ電車で行ける距離だからいいし、31日は遅くても夕方には帰ってこれるからいいかもしんないが、30日は色々大変らしいぞ」
「何でシュウが知ってるのよ?」
「あいつのオタク活動をサポートするバイトしてるんだよ。撮影とか、配信とかで色々と。その中でコミケに行ってみたっていう感じで配信もしたいんだってさ。だから30日は結構忙しいぞ」
「そうだったの?あいつそんなことまでしてたのね」
「いや~俺もマジで驚いてる。ぶっちゃけクロウってかなりの守銭奴じゃん。それなのに株で儲けた金全部オタク文化にぶっぱだぞ。まぁ無料動画サイトで色々配信してるから広告料とかも入ってきてるみたいだけど、だとしてもあいつゲームとかいろいろやり過ぎだって。金儲けのために買ってる、なんて言うときもあるけどさ」
「あの、それって本当に生活の方は大丈夫、なんですよね?」
「ジャンクフードばっかり食ってるところ以外はな。新作のゲームを買ってその実況プレイとか、確かに動画配信のネタになる物も意外とあるんだが、生活面がな~。めっちゃ危ない」
「クロウ危ない?」
「だってあいつ株やってるからって基本的に食うもんは全部チンして温めるだけのもんだぞ。冷凍食品の盛り合わせで終わらせる事なんてまだマシな方。酷い時はカロリーバー?って言うんだっけ?栄誉補助食品だけ食って終わらせることだってざらだ。あいつはマジで食生活でいっぺん奥さんに怒られるべきだと思う」
俺がそう言うと全員うわ~っと言う表情をした。
土日のバイトと言う名のクロウとの遊び。
元々クロウは動画配信で金を稼ぐ方法を考えていたので俺はそのサポーターとして一緒に居る。
一緒に出演する事はないが機材の設置や、コスプレした時の写真係などをしているのでクロウの食生活はよく知っている。
部屋などは家政婦さんに頼んでいると言うだけあってあまりゴミ屋敷にはなってないが、それも放っておいたらゴミ屋敷になりそうな雰囲気は感じている。
「それは心配ですね」
「だろ?だから家政婦さんを雇ってるんなら料理も作ってもらえって言ってるのに全然聞かねぇんだよ。1人分なら買った方が安いだってさ。そうかもしんないけど痩せたまま生活習慣病にならないかマジで心配なんだよ」
「……ねぇシュウ。私もクロウにちょっと文句言って来てもいいかしら?」
「むしろ言ってやれ。菓子ばっかりじゃなくて飯もちゃんと食えってな」
「それとは少し違うけど、ちょっと試したい事があるから」
そう言うとなんだか怖い笑みを浮かべながらコッペリアは笑った。
何をする気なのかは分からないが、本当に忙しい年末になりそうだ。




