コッペリアが相談に乗ってくれた
コンに神様にならないかと言われてしばらく時間が経った。
もうクリスマスとお正月がもうすぐであり、ちらちらと雪も降ったりしている。
普段だったら雪か~やっぱ寒いもんな~っと思うんだろうが、今はそんな事すら思わない。
コンに言われた事、神様になるという内容と世界の壁についてばっかり考えており、授業中以外はぼ~っとその事ばかり考えてしまっている。
「シュウ。やっぱり変よ。何かしてるの」
またぼ~っとしているとコッペリアが聞いてきた。
「いや、超個人的な事。そんなに変か?」
「……この間コンの奴から聞き出した。本当に個人的な事だって思ってるのかしら」
怒り気味に言うコッペリア委に俺は両手を上げた。
お手上げ降参。
もうこっそり話す時に使う事が定番になった屋上に行き、少し聞いてみる。
「その話どれくらい聞いてる?あとどれくらい知ってる人いる?」
「私達は知ってる。アイカには話してない」
「そっか。それじゃ聞くけど何でコンは俺に神様になれ、なんて言ってるんだ?どうせ神様になるならコンみたいな完璧主義者の方が良いんじゃないか?」
「あれはそう言う意味ではとっくに世界を創ってるわよ。私達の世界の事、知ってるでしょ」
「うん聞いてる。みんな自分だけの世界を持ってるんでしょ?で、そこに信者達を住まわせてる。さらにその信者さん達から力を持ってる。でいいんだっけ?」
「ええ、人間に分かる認識で言えばそんな感じ。信仰心をエネルギーに変えて私達に供給されるの。私の場合は普通に電力でも構わないのだけど、その場合原子力発電所くらいのエネルギーが必要になるけど」
「お前そんなにコスパ悪かったのか?そりゃ他のエネルギーにも手を出すわ」
「ええそんなところ。そしてコンがシュウを神にしようとしている理由だけど、別に世界の壁を修復させるだけが目的じゃないわ。シュウを私達と同じ存在にしたいだけ。そしていつまでも一緒に居たいと言うだけよ」
「……その場合俺は神様じゃなくてアンノウンになるって聞こえたんだが?」
「あながちそれも間違ってないわよ。その時はシュウの価値観によって大きく変わるでしょうね。世界の敵か、それとも世界の守護者か。人間を辞めるのであればその辺りはしっかりと考えておきなさい。後悔のないように」
アンノウンになるか。
正直そんな事全く考えたことがない。
第一俺は平凡な人間なのだ。
転生者でありながら運動能力は一般人と変わらず、生まれ持った伝説の武器のような物もない。
それなのに何故俺が転生者と呼ばれるのかも分からないのに、何で神様になれると言うのかも分からない。
「なぁコッペリア。俺本当に神様になれるのか?全然なれる気しないんだけど」
「それが普通の感想よね。私だって今も昔の機械仕掛けの人形。あなたの名付けた通り動く人形。もし妖精が現れて突然人間にしてもらったらピノキオに名前を変えなくちゃいけないわね」
「おいおい。俺が名付けた名前捨てられるのは流石にショックなんですけど」
「私もそんなつもりはないわよ。そこじゃなくて私が人間になる方。何でそんなところに食いつくのよ」
「だって名前捨てられる方がショックだったから……」
「はぁ。何度も言うけどシュウからもらった名前をそう簡単に捨てる訳がないでしょ。初めてあなたからもらった宝物なんだから」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。で、その例え話の続きだけど、もしコッペリアが人間になれるって、人間にしてくれるって言われたらどうする?」
「私は断るわ。もう私は人間に対してそこまで強い願望がある訳じゃないし、このままでいいわ。人間だと不便すぎるもの」
「本当に良いのか?確かに今のコッペリアから見れば人間は不自由な存在かもしれないし、誰かの力を借りて間でって思うかもしれないけど。憧れてたんじゃないの?」
「そうね。父親の言葉に従っていただけのあの頃だったら迷わず手を取っていたでしょうね。でも私はもうすでに自我と言う物があるの。もし人間になる代わりに今の私を捨てろと言うのであれば、私は間違いなく拒否するわ」
「……そっか」
それの言葉に俺は安心した。
俺だって前から知っている友達が突然別の存在になってしまったら戸惑う。
まぁすでにクロウが女の子になっていたり、ドラコが小さくなったりと似たような事は経験してきたが、それでも前世の頃を覚えていると言うだけでかなり安心した。
だから同一人物なんだと分かったし、今も仲良くできている。
「そう言うシュウは神になりたいって思っているの?」
「いや全然。ただ神様になりたいって思ったことは一度もない。ぶっちゃけ神様になったところで何のメリットもないし、コンの考える永遠の命?って奴を手に入れたところで手に余るのは目に見えているからな」
「それじゃ拒否すればいいじゃない」
「でも俺が神様にならないとこの世界終わっちゃうんだろ?しかもアンノウンの進撃とかじゃなくて、無が入ってくるって言う自然現象?みたいな奴にさ。確かに敵なら倒さなきゃって思うけど、自然現象ならいくらでも手段を選ぶ事が出来ると思うからさ」
「普通逆じゃない?自然現象だったら仕方ないの一言でもよさそうなものだけど」
「俺の中では戦争の方がやりやすい。だって一定数倒すか親玉潰せばたいていは終わりじゃん。自然現象だったら家の中に引きこもるとか、大抵はそれで済むだろ。でも今回はその家の方が壊れてるから自然現象から身を守る事が出来ない。そんな感じの解釈だったんだけど間違ってた?」
「いえ、間違ってはいないわね。確かにそう聞けばアンノウンを倒すよりは楽に聞こえるわね」
「だろ?しかもその壁の穴をふさげばもうアンノウンがやってくることだってなくなる。それなら神様になって穴をふさぐのも仕方ないかなって思う」
「シュウ。それだけはダメ。自己犠牲なんて認めない」
「そんなつもりじゃないって。それに多分だけど世界の壁を直すのは本当はコンにもできるんだと思う。ただその役割を俺に押し付けて少しでも俺が神様になるよう言ってきたんだと思う。あいつ目的のためだったら本当に何でもやるからな」
「ええ。その通りよ。だから神になる必要なんてないわ」
「そこで質問。コンはなんでそこまでして俺を神様にしたい?本当にただ一緒に居たいだけ?」
「…………今回はその通りでしょうね。私だって本当はシュウといつまでも一緒に居たい。永遠に居たい。でも」
そう言いながらコッペリアは屋上の柵に腕を乗っけながら言った。
「寿命が尽きると言うのも人間の特徴だもの。それを否定してはダメ。だけどコンの気持ちも分かる。ようやくこうしてまた一緒に過ごす事が出来るようになったのだもの、この幸せを永遠に浸っていられるのであれば浸っていたい。でもそれが人間だもの。仕方ない」
「コッペリア……」
「だからシュウ。約束しなさい。前みたいな死に方はしないで。幸せに生きて、幸せに死になさい。それが約束できるのであれば人間のままでいいわ」
「約束も何も、前世みたいな死に方は嫌だよ。誰が何度も拷問されながら死にたいなんて思う。今回はちゃんと大人になって、結婚して、子供作って、ジジイになって寿命で死にたいわ」
「それならいいのよ。私は柊の幸せな最期を必ず見届ける。それだけは許さないわ」
「最期までいる気かよ。まぁ別にいいけど」
そうコッペリアから教えてもらった。
他のみんなも知っていると言うし、一人で抱え込まず、相談してみようかな。




