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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【完璧】な天使
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文化祭3日目……

 文化祭最終日、俺は周りから非常に視線を集めていた。

 それもそのはず、今日は俺1人ではなく友達全員と居るのだから。


「シュウ。次ぎあそこ行くわよ」

「こうして見てみるとやっぱり色々ありますね……どこに行きましょうか?」

「柊様が行きたいところはないのですか?」

「ドラコ綿飴食べたい!!」

「安くていい所はリサーチによるとこの丸で印をつけたところだし、食べる時はそっちに行こう」

「お弁当もいいけど、こうやってみんなで屋台を回るのもいいわね~」


 忙しいはずの愛香さんとコッペリア、コンがここに居るのはコッペリアが3人のシフトを調整してもらったからだ。

 初日と2日目は働き、3日目は完全にお休みで一に文化祭を回る事を約束させたのだ。

 で、それを伝えに来たコッペリアは俺と文化祭デートという事で来たのだが、もちろん他のみんなも黙って見ている訳ではない。

 自分達もデートしたいと言ったのでこうしてハーレム状態で文化祭を回っている訳だ。


「それにしても、大所帯になったな~」

「まぁこればっかりはその、難しいかと」

「だからと言って1人ずつなんてやってたらいくら時間があっても足りないし、仕方ないか」


 効率と言う意味では確かに全員と一緒に居るのが良いのだろう。

 だが俺は彼女らに対してまだ明確な答えを出せていない。

 それなのにこうして仲良くしていいのだろうかと考えてしまう。

 だからと言って明確な答えを出してしまえば、これまでの関係は必ず壊れてしまう。


 どうすればいいのか悩みながら、目を背けながら俺達は思いっきり遊んだ。

 お化け屋敷に巨大迷路、体育館でバンドの発表を見たり、とにかく楽しんだ。

 そして放課後、各部門の売り上げの結果だが、飲食店部門学年1位を取ることは出来たが学校全体では5位という微妙な位置で終わってしまった。

 これに関して本気で悔しがったのがコッペリアとコンだ。

 こうして楽しい文化祭は幕を閉じた……


「いえ、勝手に閉じないでください」


 校庭で行われている後夜祭を屋上からのんびり眺めているとコンが飛んできた。


「なんだよコン。後夜祭中だからまだ文化祭は終わってないって言う気か?」

「その通りです。そして1人でこうして眺めているだけではなく、一緒に参加していただけませんか?」

「それもいいんだが……さすがに疲れた。もうちょっと眺めさせてくれ」

「では満足するまで隣にいる権利をください」

「なんだそれ。好きに居ればいいじゃん」

「では失礼します」


 そう言ってコンは俺の隣でみんなが騒いでいるのを一緒に眺める。

 みんな楽しそうにジュースを飲んだり、友達と遊んでいた。

 もちろんその中には愛香さんやコッペリア、ドラコや奥さんもいる。

 愛香さんとコッペリアはクラスメイトの女子と一緒に飲みながら楽しんでいるし、ドラコは仲良くなった女子生徒や男子生徒から餌付け、奥さんは教師陣と何か話していた。


「やっぱいいな~、こういう光景」

「……柊様。私から柊様に1つお願いがあります」

「ん?何?」

「どうかこの世界の神になっていただけないでしょうか」

「……何言ってるんだ?俺は人間で神様になれる訳ないだろ?」


 あまりにも突飛な発言についそう突っ込んでしまった。

 俺は校庭を眺めていたが、コンは俺にまっすぐ視線を向けながら真剣に言う。


「いえ、柊様なら本当にこの世界の神になる事が出来るのです。この世界には神は不在であり、宗教的な神、自然を神と呼称しているだけなのです。ですから柊様が神になろうと思えば本当に神になる事が出来るのです」

「無理無理。コンの言うようにこの世界に神様が本当にいなかったとしても、俺は人間だ。人間は人間以上にはなれない」

「確かにそれは柊様の言う通りです。ですが人間から神になるからこそ信仰心や親しみが生まれる事もあるのです。そして柊様が理想とする世界を創造する事が出来るのです。いや、しなくてはこの世界はもちません」

「もたないってどういう事だよ。まさかこの世界は滅ぶとでも言う気か?」

「はい。この世界は放っておけば100年経たずに滅びます」


 流石にその言葉に俺はついコンに振り返ってしまった。

 校庭では変わらず楽しそうな声が聞こえてくるのに、楽しそうな声が遠くに聞こえる。


「それってどういう事だ。まさかとんでもないアンノウンがやってくるって言うのか?」

「原因は似たような物ですが、強力なアンノウンなどは関係なく、ただこの世界に異世界の存在が多く来る事でこの世界を守る壁が壊れかけているのです。これをどうにか修復しなければこの世界はアンノウンに滅ぼされるなどではなく、異世界と異世界の狭間にある無に当てられ、消滅してしまうのです」

「待ってくれ。本当に突然すぎて訳分かんねぇんだよ。は?世界が100年もせずに終わる?無ってなんだよ?」

「……柊様にも分かりやすくお話しします」


 そう言うとコンは俺に真剣に話し始めた。


「まずこの世界、宇宙を含めたこの世界は常にバリアーのような物で守られています。それが世界と世界の狭間にある無が世界に侵入するのを守っているのです」

「まず無が入ってくると世界はどうなる」

「消滅していきます。ボールに穴が開いて中に水が入り込むイメージといえばわかるでしょうか。その水がボールの中に入ってしまうと、その世界に住む我々は溺れて死んでしまいます。実際には無に触れると私達も無に還ってしまうと言うのが正しい表現ですが」

「無に還るって言うのは……」

「肉体、精神、魂。すべてが消失します。本来であれば神が居る事でその世界の中で輪廻転生が行われるのですが、この世界には神がいない。なのでその穴を通って無に還っている可能性の方が高いです」

「何でそう言える」

「神がいない事と、穴が開いているからです。本来であればふさがっているはずの世界の壁に穴が開いているという事はそこに魂が触れる可能性が非常に高いのです。無は魂を消滅させる効果を持っていますから。本来の世界であれば神が魂を浄化、つまり前世の記憶を消して当たらな肉体に定着、つまり新しい命として再びこの世に生を受けるのです。それが出来ない場合は、無に触れて魂が消滅する事しか出来ないのです」

「それじゃ今の俺達はどうやってこの世界で生きているんだ?異世界の存在がどうしてこの世界で転生者として生きている?」

「それこそ魂の強さが物を言います。無の力どれだけ強いと言っても触れた瞬間に即消滅するほどではありません。ですからこの世界にたどり着いた魂こそがこの世界で転生者として生を受けていたと言えます。そしてこの世界の転生者でない普通の人間は、死によって自然と魂から記憶が消えた魂が新しい命になっていたのでしょう」

「まさか、アンノウン達もその世界の穴ってのを通ってこの世界に来てるのか?」

「その通りです。アンノウン達もその穴を通ってこの世界に来ています。しかし彼らは何らかの方法で肉体ごと来ているのでしょう。倒されて肉体を再び拾ってきたのか、それとも別な世界で似たような物を得てきたのか、はたまた肉体がなくても生きていける精神と魂だけの存在だったのか。これに関しては世界が広すぎてすべては言い切れません。ですがこのままだと世界の壁の穴はさらに大きくなり、魂だけに影響を与える無が、物理的な肉体にも影響を与えるでしょう」

「……それを止める方法は?お前の事だから何かあるんだろ」

「そのために柊様が神になっていただきたいのです。柊様が神となり、この世界の壁を修復していただきたいのです」

「それは本当に俺にしかできない事なのか?完璧超人であるコンじゃ出来ないのか?」

「……できなくはありません。しかしその場合はこの世界の延命は出来ても、いつかまた必ず壁が壊れ始め、同じ事が起きてしまうでしょう」


 もっとコンに聞きたい事がある。

 何で俺なら絶対に修復する事が出来ると言い切れるのか。

 何でコンじゃなくて俺なら完璧にこの世界の壁という物を修復できるのか。

 そもそも何で神様にならないといけないのか。

 俺には全く分からない。


「……少し考える時間をもらえるか」

「もちろんです。壁の崩壊はそこまで急激な物ではありません。ですが必ずお答えください」


 そう言ってコンは静かに屋上から出て行った。

 俺は楽しそうにするクラスメイトや先輩達、愛香さんやコッペリア達を見ながら、本当にどうしたものかと思いながら悩むのだった。

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