文化祭で何する?
「さてお前ら、文化祭で何やるか決めるぞ~」
ロングホームルームで担任がそう言った。
意外に思われるかもしれないが、こういう学校らしい事もちゃんとする。
昔は体育祭もあったらしいが、これに関しては転生者達の身体能力で暴れまわられるのは危険すぎるという事で自然と廃止されてしまったという。
その代わりと言うのも変だが、文化祭は盛大に行うらしく、店のクオリティーなどは普通の文化祭とは違いマジらしい。
「愛香さん。この学校の文化祭の定番ってどんな感じなんだ?」
「そうですね、やっぱり多いのは飲食系ですね。教室を使った物よりも屋台のような物が多いです。教室を使った物だと……やはり空き教室などを使った大規模な迷路、もしくはお化け屋敷などでしょうか」
「その辺は普通の学校と変わらない感じなんだな」
「まぁそうですね。でもお金のやり取りをする飲食系はやはり定番の焼きそばとか綿あめとか、最低でも火が通った物に限定されますからどうしてもメニューが似てしまいますね」
「そんなところまで普通の学校と同じかい」
「でもそれはあくまでも屋台形式の物だけです。教室を使った物だったら冷蔵庫も使えるので生物を使うとしたら教室に冷蔵庫を設置すれば大丈夫です」
「一気に普通の文化祭じゃなくなった」
「それに技術関連の転生者の協力で狭い空間をより広い空間にする技術や魔法が存在しますから、ファミレスくらいまでは広げる事が出来ますよ。前に迷路をするからと言って広くし過ぎた迷路で迷子になるお客さんが多かったので制限がかけられました」
「途中までは普通の文化祭と変わらなかったのにな……どんどん規模がおかしくなってきた……」
俺が居た中学校じゃ飲食系をやる訳にはいかなかったら色々やってたけど、なんか面倒くさくて夏の自由研究みたいなのを飾ってた記憶しかない。
高校じゃアニメみたいな事してみたいな~なんて思っていたが、想像以上に規模がデカい。
なんて話し合っている間に黒板にはクラスで何をするのか色々書かれていく。
喫茶店。
お化け屋敷。
迷路。
謎解きゲーム。
展示。
ゲームセンター。
キャバクラ兼ホストクラブ。
「いやちょっと待て。最後の奴なんだ?俺ら未成年ですけど?」
「あ~、たまにいるんですよね。わざとああいうふざけたの言って自分の案にさせようとする人」
「だからってなんでキャバクラとホストクラブ一緒なんだよ」
「男女共に指名できるとなれば少しはヘイトを落とせると思たんじゃないですかね」
愛香さんもさすがに呆れた感じで言う。
と言うかその場で却下しろよ。
未成年が酒出すわけにはいかないだろ。
「さて、この中で賛成反対、面倒臭いから多数決でもいいぞ。さっさと決めろ」
担任がそう言うのでまぁさっそくキャバクラはアウトだろうな~っと思っていると、すぐ後ろから意外な声が聞こえた。
「キャバクラ兼ホストクラブに一票」
「同じく一票入れます」
「は!?」
俺は驚きながら振り返ると、アンノウン2人が手を挙げていた。
「お前らマジで何言ってるか分かってんの!?」
「文化祭の出し物の話ですよね?これくらいインパクトがあった方がいいと思いますが」
「一体何に求めるインパクト!?」
「それはもちろん飲食店部門1位を取るためのインパクトよ。確かお客は校内だけではなくて外部からも呼ぶんでしょ?それなら確実に稼ぐわ」
「稼ぐわ!?」
ぶっちゃけこういうキャバクラとかを嫌いそうなコッペリアがまさかの参戦!?
意外過ぎる事態に俺は口がふさがらずにいると、コンの奴が言う。
「いいですか柊様。これは私達アンノウンが人間と共存する気があると示すいいチャンスでもあるのです。特に校外の人間に対して私達は人間と敵対するつもりがないと示す事が出来ます。これ私達にとっても都合がいいのです」
「お前本当に完璧主義者なんだよな?学生がキャバクラだのホストやるだの言ってる時点で結構危ない橋渡ってると思いますけど!」
「問題ありません。普段の制服ではなくドレスを着ればそれで間に合います。それに飲み物などは素直にジュース類を提供し、あとは酒のつまみの雰囲気を出すためにポテトチップスなどのジュースと合う菓子類を用意すれば大丈夫です。それから私達がお客様に丁寧に対応していれば最低限の目標は達成されます」
「お前らが人類と敵対しない事を示すために力を入れる事は分かった。でもなんでキャバクラとホストなんだよ。それなら喫茶店でもいいじゃねぇか」
俺の疑問に他のクラスメイト達も頷く。
この質問に関してはコッペリアが言う。
「だって喫茶店なんて言ったら他のクラスと被って目立たないじゃない。それなら少し異色を狙ってでもインパクトがある方を名前にした方がいいわ」
「だとしてもさ、やっぱり学生がキャバ嬢だのホストだのは印象が悪いんじゃないか?」
「それに関してはこいつが先生達を言い包めるつもりらしいから大丈夫よ。それにもうすでに外部協力者を選び終えてるし」
「外部協力者って何?お前らどこまで本気出す気だ?」
「もちろん全力投球よ。ど真ん中ドストレートでほんのちょっとだけスケベな雰囲気を出せばいいんでしょ。そう言うのは得意よ」
「頼むから得意じゃなくていいからな。それにお前がエロい方向に力注ぐって聞くとSM関連しか思いつかないんですけど。マジでそう言う服着てきたらダメだからな」
「着る訳ないじゃない。あんなの所詮雰囲気作りのコスチュームでしかないもの。私だったらあんなもの着なくても出来るわ」
「出来なくていいんだよ!!」
何でこいつらが本気出しているのかは不明だが、このままだとマジでキャバクラ兼ホストクラブをやる事になりかねない!!
俺が反論する前にコンが叫んだ。
「男子生徒諸君!!いま私達に協力してもらえるのであれば、女性モテるコツと私達のちょっとだけエッチな服装を生で見る事が出来ます!!」
「テメェ!やりやがったな!!」
スケベ男子達を確実に取り込むために先に行動してきた!!
「そして絶対反対意見の多い女子達!!私からもあんたたちが狙ってる男達を確実に落とす方法を伝授してあげるわ!!男受けのいい女のテクニック、手伝ってくれたら全部教えてあげる!!」
「お前もかよ!!と言うか俺の事口説けてない時点でお察しなんですけど」
余計な事を言って俺にコッペリアとコンから鋭い視線が飛んでくる。
そしてかなり曇った瞳を俺に向けながら恐ろしい事を言う。
「あら、そう言う事を言うなら今ここでシュウの事をみんなでマワしてもいいのよ。ねぇコン」
「ええそれも悪くはないでしょう。大丈夫です。優しく、甘い蜜でおぼれさせるくらいの快楽を与えましょう」
「もう自分で考えなくてもいいように」
「もう自分で動かなくてもいいように」
「「もう二度と私達から離れらないように愛情と言う密でおぼれさせてあげる(ましょう)」」
「はいごめんなさい生意気な事は言わないのでマジでその目は止めてくださいマジで怖いです」
狂気の入った愛情とかマジで怖い。悪意がない分さらに怖い……
そしてみんなはざわざわと周囲のクラスメイト達と話し合いながらどうするか考えていく。
で、最終結果。
反対2、賛成多数でキャバクラ兼ホストクラブがマジで決まってしまった。
先生。
本当に大丈夫なんですか?




