入学するって
俺の中でコンと言う存在を一言で表現するなら、変態狂信者という感じだ。
俺の命令は絶対であり、俺を神様のように崇めてくる。
何故変態が付くのかは、まぁ俺に命令されるたびに恍惚とした笑みを浮かべる事が多く、命令されるだけで快感と感じてしまうからだ。
「で、ヨーロッパで何してたの?」
そして現在、俺は体育館でコンがヨーロッパで一体何をしていたのか聞いていた。
周りには当然コッペリア達もおり、何かあったら取り押さえる事が出来る陣形になっているが、ぶっちゃけ形だけだ。
コンは俺のそばから離れようとしないし、離れたいと思うとは思えない。
「私がヨーロッパで活動した理由は、どういう訳かヨーロッパに柊様と同じ世界の人間が多くいたからです。そこで私は柊様が安全に暮らせるよう彼らの妨害を始めました。そしてコッペリア達もこの世界に来ている事は分かっていましたので柊様の護衛はみなさんに任せようと思い、私は柊様がいる事を悟られないよう妨害していました」
「いや、俺があの前世の世界の連中に知られたところで何ともないだろ。俺ただの一般人Aだぞ」
俺はそう言うと不思議そうにコンは俺の事を見た。
なんだその認識のズレがあるような目線は。
「もしかしてみなさん。あの事を話していないのですか?」
「話せる訳ないでしょ。それに伝えたところでシュウは何とも思わないでしょうし」
「そうね~。それに余計な事を言わない方が柊ちゃんのためでもあるでしょ?」
「ん?ドラコ何か関係あるか?」
「ドラコ。それ忘れるのは本気で不味いから。柊お兄さんの事だよ」
どうやら俺以外のメンバーは心当たりがあるらしい。
ドラコは忘れてるみたいだけど。
「なんだよ。俺が知らない事をみんなでなんかしたみたいだな。いたずらの相談なら前みたいに俺も混ぜろ」
俺はそう言ったが全員口を開かない。
コンは確認するように俺に聞く。
「柊様。失礼ですが前世の事はどれくらいまで覚えていますか」
「前世の事?多分ほとんどの事を忘れてる。前世の自分の名前も、両親の顔も名前も覚えてない。覚えているのはお前達と一緒にあの廃ビルの中でバカやってた時の記憶だけだ」
「……これは少し想定外ですね。修復可能なレベルですが……いや、あの状態では覚えていない方が自然ですか」
「あの状態?」
「……申し訳ありませんが、私達は柊様に対して大きな罪を犯しました」
コンの言葉に驚くみんなだが、口を挟もうとはしない。
「この罪は私達の我儘、柊様とまた会いたいという気持ちだけで行いました。こうしてみな柊様の前に姿を現したのはその細工によるものです。そしてこの提案をしたのは私です。断罪するのであれば私に責任がありますので、私を断罪してください」
「よく分かんないけど不問にする、でいいのかな?」
「よ、よろしいので?」
「うん。まぁみんな都合よく俺の前に現れたのは何かしていたからだろうな~くらいの予想はしてたし、それに対して不便を感じた事はない。むしろあんな別れ方をしたんだ。また会って今度こそみんなと馬鹿な事しながら笑っていられるのなら俺はそっちの方がいい。しんみりした別れは個人的に嫌いだ」
「柊様……寛大なお心使い。感謝します」
そう言うコンは普段の感じではなく、真面目に言ったのできっと何らかの事情があったのだろう。
「で、これからどうするつもり?」
「もちろん柊様にお仕えしたいと思っています。家事であろうと勉強だろうとなんだってお手伝いします」
「う~ん。それなんだけどな……」
「な、何か問題でも?まさか不要と言うのですか!!」
「まぁ……ぶっちゃけて言うとなぁ」
掃除と言っても自分の部屋だけだし、飯は学校の学食やコッペリア達の花嫁修業料理がある。
金は最近クロウのオタク活動を手伝う時にアルバイト料としてもらうようになってしまった。まぁ映像編集とか機材の設置とかだけだけど。
最近じゃ動画配信も始めたからな~クロウの奴。
そして部屋に変えればベルとドラコが待ってくれるわけだし、ぶっちゃけ頼む事がない。
「こ、これが最後に来た事による弊害か!!」
「そんな悔しそうに地面叩くなよ」
「そ、それなら私も働いて柊様に金銭だけでも!!」
「そんなダメ男みたいな事したくない」
「なら何がご命令を!!」
「今のところ頼む事はないかな」
「ならせめて体で!!」
「1番いらない。と言うかいい加減みんな自分の体大切にしよ」
何でみんな最後は体を売ろうとするんだろう。
俺だってさ、男だからそりゃ可愛い子や綺麗な子とエロい事できるのは興奮するよ。
でもやっぱりそう言うのは見ず知らずの他人だから適当感覚でいいと思うけど、友達相手だとやっぱり優しくしたいと言うか、もっと美少女様美人様なんだからもっと自分の事大切にしてあげてっとしか言えないんだよ。
「しかし私は柊様にでしたどのようされても嬉しくて女性としての部分がうずきます」
「だまらっしゃい。こう言っちゃなんだが今エロいこと求めてないの。平穏に生きる道探してるからそんな暇ないの」
「それは申し訳ありません。ではその不要分子を今すぐ排除いたしましょう!!」
「しなくていい。はぁ。お前昔はどっちかって言うと俺と喧嘩友達みたいなもんだったろ。そりゃ最後の方は仲良くしてたけどさ、それでもお互いの考え方が違くて何度もぶつかったじゃん。それなのに何で今はそんな忠誠心マックスなの?前はもっとあーだこーだ言ってたじゃん」
「その時は本当に私が愚かでした。どうぞ、私に性的なお仕置きをしてください!!」
「さらっと自分の要望入れてるんじゃねぇよ!!お前何時からそんな脳みそと下半身直結してるようなキャラになった!?」
「しかし完全に女性の体になった事でシュウ様の子が欲しいという欲望があふれて止まらないのです!」
「知るか!!」
もうヤダこいつ。疲れてきた……
「あの、そろそろいいでしょうか……」
あ、忘れてた一般転生者発見。
愛香さんは一応俺の見張りと言うか、コッペリア達の見張り担当みたいな感じになりつつあるので今も一緒に居た。
念のため奥さんの後ろに居てもらっていた。
「人間ごときが!柊様と私の――」
「黙れコン」
「……」
「で、愛香さんどうしたの?」
「えっと、こちら側。私達転生者としてお願いしたいのですが、この輪廻学園の生徒として入学してもらえないかと上から連絡が来ました」
「え、それマジ?上の連中正気?」
「色々苦悩したみたいですが、生徒として入学してもらい、一応転生者が管理しているという体裁を整えたいみたいです。日本だと自衛隊か警察の人達に任せるのはあまりにもその、負担が大きすぎますし、かといって野放しにするのはもっての外なので生徒として入学してもらえないかと」
「本当に苦渋の決断って感じだな」
「はい。ですがそのコンさん?と言うアンノウンがヨーロッパで他の転生者達と戦っていた事実は変わりませんし、どうしても管理できる状況にしておきたいので……」
「まぁそっちが納得してるならいいか。と言う訳でコン。お前今度から学校通え」
「は!!」
「それから愛香さん。コンの事制御できるの俺しかいないからさ、同じクラスにできるよう調整してもらえないかな?」
「あ、それはもう最初から決まっているそうです」
「そっか……決まってましたか」
自他共にって奴だな。
まぁ俺もみんなと一緒に居たいし、それくらいのことはするか。




