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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【完璧】な天使
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友達が飛んできた

「……どうやら私以外は全員集合したみたいですね」

「ふぅ!ふぅ!」

「もう全員そろったので私の役目はここまでですね。これからは我が主様のために誠心誠意尽くしていかないと」

「絶対に、逃がさない!!」

「逃がさない?何を言っているのですか?」

「……っか!!」


 天使型アンノウンは目の前にいる因縁のある転生者に対して軽くはらう程度の力で転生者を壁に叩き付けた。

 圧倒的な力の格差。

 人間ではどうする事も出来ないほどの差は絶望を転生者達に与える。

 彼女の仲間達も生きてはいるが重傷なのは間違いない。

 むしろギリギリ生きているように手加減されているの容易に分かる。


「逃がさないのは私の方ですよ。貴女には必ず絶望の底に沈んでもらいます。今すぐにでも主様の元に行きたいのを我慢していたのそのためです。そして主様の安全が絶対だと言えるまでここで貴女を足止めするために居ました。ですがもうその必要はなくなりました。ですからさようなら」


 そう言って天使型アンノウンはどこかに向かって飛んで行く。

 彼女は痛み以上に悔しさに襲われていた。

 同時に何故あのアンノウンが自分達を生かすのかが理解できない。

 おそらく彼女達を苦しめるためと言うのは分かるが、足止めと言ったりするのは理解できない。

 それでもまだこのズタボロの状態から回復しなければならない。

 そして早く追いかけないといけないと彼女が思った時にはすでに気絶した。


 ――


 今日も俺、柊は今日もみんなに囲まれて賑やかな学生生活をおくっている。

 それにしても寒くなってきたな……

 もう雪が降ってきてもいいくらいの寒さだから朝起きるのが少し億劫おっくうだ。

 ポケットに手を突っ込み息が白くなってきたな~っと考えながら俺は学校から寮に帰ってベッドの上で寝っ転がる。


「シューお帰り~」

「ただいまドラコ。なんか変化あった?」

「特にない」

「ないか」


 そんな短い会話をしてぼんやりと考える。

 それにしてもこの1年、いろんなことが一気にき過ぎて大変だったな。

 俺が正式に転生者と言われてからこの学校に来て、そこから前世の友達に再会して、まだ会っていないのは後1人だけ。

 あいつがこの世界に来ている事は既に判明しているが、いつどのタイミングで来るのかは分からない。

 そこだけが不安だ。

 どうせ他のみんなのように突然現れるのは分かっているが、ドラコの時みたいに大袈裟になるのは嫌だな。

 なんて思っていると校内放送が入った。


『高等部1年生の柊さん、急ぎ校長室に来てください。繰り返します。高等部1年の――』

「……嫌な気がするな。ドラコ、一緒に来てくれ」

「分かった」


 ドラコはゲームを止めて俺の背にしがみつく。

 そして嫌な予感はかなり強いので念のためベルも連れて行く。

 すると寮を出たところでコッペリアと奥さん、そしてクロウまでいる。


「みんな。やっぱりなんかヤバい感じか」

「シュウにとってはヤバくないわよ。ただ学校にとってはかなりの大災害になるかも」

「そうね。あの子は本当に柊ちゃんのためだったらどんな手段も選ばないところがあるから~」

「あいつ、我慢して多分柊お兄さんに何するか分からないしね。それにここに居る転生者達が束になったところで絶対に勝てないから、マザーには生徒や先生達があいつと戦おうとしたときに止めてもらう。僕とコッペリアは、一応あいつのストッパー。それからドラコも借りていいかな?少しでも戦力は多い方が良い」

「分かった。ドラコ、みんなの事守ってもらっていいか?」

「いいけど……ベルフェゴール。ちゃんとシューの事守ってね」

「当然だよ~」


 久しぶりにベルが起きているという事はそれだけ緊張があるって事だろう。

 俺は急いで校長室に行き、校長先生と会った。


「校長先生。どうしました?」

「……もう気付いているんだろ?君の最後の友達が今こちらに来ている。何故かアンノウン警報を掻い潜ってだ。目的地はおそらくここだろうね」

「なるほど。今コッペリア達が何があってもいいように対応しています。校長先生は他の生徒や先生達があいつに手を出さないようにだけ注意を促してもらっていいですか。あいつは【完璧】なので」

「……【完璧】。本当にそんな存在がいるのかね?」

「分かりません。ですがあいつがそれに最も近い事だけは間違いないと断言できます」

「分かった。職員や生徒達には決して手を出さないように通達しておこう」

「よろしくお願いします」


 校長先生にはそう言ったが、もうすでに着いてる可能性の方が高いんだよな……

 話が終わってすぐにスマホに連絡が来る。

 校長先生が通達した内容が通信網を使って送られてきたんだろう。

 思っていた以上にスムーズさに少し驚きながらも俺は校舎を出ると、もうすでにあいつはいた。


「随分ゆっくりしたご登場ね。社長出勤のつもりかしら?」

「まさか、私は私がやるべきことをしていただけですよ。それよりも主様は今どちらにおられますか?早くご挨拶させていただきたいのですが」

「柊ちゃんは今校長先生とお話し中よ~。あなたと他の生徒や先生達が戦わないようにね~」

「マザー様。私は主様の生活を脅かすつもりはございません。むしろより良いものにするため尽力したいと思っています」

「グルルルル」

「ドラコ、あまり警戒しないでください。本当に敵対するような行為は致しません」

「でも君は僕以上に計算高くて、何よりも完璧主義者だ。狂気的と言ってもいいくらいの君は、今まで一体何を仕込んでいたのか気になるな。もしそれが柊お兄ちゃんに害を及ぼすのであれば、君でも本気で戦うよ」

「クロウ。あなたなら分かるでしょう。どうしても守りたいものがある時、それはどこまでも究極で完璧でなければならない。あの時の私は本当に完璧ではなかった。だから主様を失ってしまった。そしてもう二度と失わないためにより綿密に計算し、行動してきただけです」


 ……空気は最悪だな。

 まさに一触即発と言う言葉が正しいくらい、ちょっとした変化であっという間に戦いが始まりそうだ。

 それにあいつらだけじゃなく周りにいる転生者達からもピリピリとした緊張感が張り詰めている。

 そりゃコッペリア達とは違い、明確に人間に攻撃したことがあるアンノウンだ。

 愛香さんの友達もヨーロッパの方でかなり虐められていたみたいだし、それぞれ思うところはあるだろう。

 だがここで暴れさせるつもりはないし、あいつは、コンは俺の事をかなり特別視している。

 それは異常、狂気じみていると言ってもいいくらいに。


「そこまでだ、お前ら」


 俺がそう言うとコンから一気に戦闘をするような空気は消え失せ、俺の前にダイビング土下座を決めてきた。

 土下座の形が綺麗なのがムカつく。


不肖ふしょうコン!ただいま主様の前に参上いたしました!!」

「あ~そう言うの要らないから。俺達友達、同格、仲良し、土下座する必要ないから」

「しかし今まで主様の前に現れなかった私をどうか!どうか罰をお与えください!!」

「別に悪い事なんて何もしてないだろ。それじゃ……とりあえず立って。逆に話しにくい」

「は!!」


 周りから見たらどんな風に見えているだろう。

 ご主人様に久しぶりに会った犬?


 コンは堕天使でありその顔も非常に整っている。

 神様に作られた~なんて説明されたこともあったが、納得できるくらいの美貌であり、非常に中性的ではあるがよく見ると女性寄りかな?っと思うところもある。

 サラサラの髪をまっすぐ長く伸ばしているのも要因かもしれない。

 っと言うかあれ?前世の頃よりも女性的になってないか?

 首から下、つまり胸とか尻とかが俺の記憶にある物よりも発達しており、コッペリアよりも胸が大きいが、奥さんほど爆乳と言う訳でもない。

 腰は綺麗なくびれがあるし、見た目だけなら女性向けファッションモデルと勘違いしていたかもしれない。


 まぁそんな美人様が出会っていきなり土下座だから何とも言えないのだが。


「お前、前よりも女性的になったか?」

「はい。この世界に来るときに改めて体の方をより女性の方に近付けました。今のホルモンバランスは平均的な女性の性ホルモンと同等です」

「そうか。でもま何でそんな風に調整をした?」

「それはもちろん……ご主人様の子供を授かる事が出来たらっと淡い希望を持っていましたので……」


 顔を赤くして言うがさすがにもう慣れたぞ。

 前世の友達みんなそう言ってくるんだ。

 さすがにもう飽きた。


「そうかよ。とりあえず俺はこの転生者達の学校で平穏に過ごしているんだ。問題は起こさないように頼む」

「は!!」

「そして今の俺の名前は柊だ。これからは名前で呼んでくれ」

「おお!!ではこれからは柊様と呼ばせていただきます!!」


 はぁ。

 このテンションがマジで疲れる。

 コンは何故か俺の事を崇めたてまつろうとしてくる。

 これが俺にとってどれだけ面倒だと思っている事か。

 それに俺は友達だと思っているのにこんなへりくだられると調子が悪くなる。


「それじゃとりあえず命令。これからは転生者達と喧嘩しない事。喧嘩になったら防御と逃げに全振りして傷付けないでくれ。そして傷つくな。以上」

「はぁ。なんとお優しいお言葉。転生者だけではなく私の事も気遣ってくれるだなんて。これよりコンは柊様の忠実なしもべ、いついかなる時もお呼びください。もちろん日々の生活から人には言えない特殊な性癖を解消するためでも存分にお使いください!!」

「……もうヤダこいつ。特殊な性癖なんて持ってないのに持ってるような事言ってくる」


 こうして最後の1人、コンが俺の前に姿を現した。

 絶対今後忙しくなり、面倒臭い事があふれてくると俺は確信を持って言える。

 どうやったら制御できるんだろうな……この変態。

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