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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【強欲】な悪魔
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浄化開始

「これだから人間は……」


 僕、クロウはそう愚痴りながら仮設住宅の屋上に来ていた。

 既に前線では住民達の除霊を行いつつ、悪魔と無理矢理引き離された衝撃で気絶した住人達を急いで運んでいる。

 その光景を見ながら僕は札束を地面に叩き付け、大量のドローンを購入した。

 購入したのはアメリカで作り上げられた農業用ドローン。

 今回必要な物、聖水を空中から散布するために軍事用ではなく薬品などを散布する事が出来るものを選んだ結果だ。


 これが僕の能力、お金を消費する代わりに欲しい物、必要な物をいつでもどこでも購入できる魔法だ。

 だからこの魔法はお金があればあるだけ好きなよう物を用意する事が出来る。

 弱点は単純にお金が尽きれば僕の能力も使えなくなる事、そしてキャッシュレスが出来ない事。

 だから僕は常に僕専用の空間に一定の金額をしまってある。ざっと1億は戦闘用として確保済みだ。

 それを消費して作り出したドローンを飛ばし、住民達に聖水をかけて悪魔から解放する。

 いくら数が多いと言っても所詮は聖水をかけただけで嫌がり逃げていくような雑魚悪魔。他の転生者達がやっているようにわざわざ除霊や悪魔退治の術なんて必要ない。


 でも……あの主犯の少女に関しては聖水で引きはがすことは出来ないだろう。

 彼女の憑りついている悪魔達はおそらく人間の怒りと言う感情を好むタイプの悪魔だろう。

 悪魔の主な食事は人間の感情だ。

 そしてどんな感情を好んで食べるかは悪魔の個性による。つまり人間の好き嫌いとそう変わりはない。


 だから彼女に憑りついた悪魔達は人間の怒りが好物なのだろう。

 もしくは初めて食べたからそれ以外の味を知らないだけかもしれない。


「相棒も本当に面倒な事をしてくれるよ」


 そう1人で愚痴りながら僕はあの悪魔の集合体に取りつかれた彼女を悪魔から引きはがす方法を考える。

 実は僕は彼女が相棒に対して強い恐れと怒りを感じている事は分かっていた。

 そしてそれにあからさまに反応した悪魔達。一部の悪魔達はそれの感情を嫌がり逃げていったが、ほとんどの悪魔達は残った。

 これに対しては元々加奈ちゃんが怒りで召喚したから、怒りと言う感情の味が好みでやってきた悪魔達が多いのだろう。

 だからと言ってここまで集まってくるのは予想外だったが。

 精々救出する際にちょっと手間取るだろうな~くらいの考えだったので、相棒の楽観視に僕もいつの間にか影響を受けていたのかもしれない。


 おそらく憑りつかれた住人達は加奈ちゃん、もしくは相棒を探すためにこの仮設基地にやって来た可能性の方が圧倒的に高い。

 つまりこの哀れな住人達は斥候のような物。

 怒りをぶつける相手を探しているだけだ。


「本当に逆ギレほどはた迷惑な物はないよ。そしてこっちは……うん。そろそろ来ておかしくないか」


 タブレットで大量の悪魔に取りつかれている彼女の様子を確認すると、醜い化け物が生まれそうになっていた。

 手足が大量にあるのに指の本数がバラバラ。

 そして手足には悪魔の顔が浮かんでいる。

 頭のような物はなく丸い胴体に手足が生えているように見える。

 しかもその胴体は常に動いており、手足の位置も常に動いてウニが棘を使って移動する動画を思い出す。


 この明確に形が決まっていないのはおそらく宿主と契約が出来ていない証拠だ。

 彼らは怒りと言うエサに群がっているだけど寄生虫。

 どれだけ素早く助けたとしても、もう憑りつかれた彼女は一生まともには生きていけないだろう。


 そう思っていると体育館の壁を壊して出ていく集合体がカメラから最後に映った姿だった。

 その後遠くから何か壊れる音が聞こえたので彼女が動き出したことはもう分かり切っている。


「さてと。僕も加奈ちゃんとあの悪魔がどうなるか気になるし、手伝いに行きますか」


 そう思いながら久しぶりに悪魔の力を開放した。

 基本的にはお金を消費して好きな物を召喚する、つまり既に存在する物を購入するのが基本的な使い方だが、本来の使い方は創造だ。

 お金を消費する代わりに自分が求める武器などを創造する魔法。

 その時必要な物を僕のイメージ通りに使える物を作り出す事が出来る。


 と言ってもこの創造だと既存する兵器を購入するよりも高くつくのであまりやりたくはない。

 それに現金でしか使えないと言う点は変わらないので予算内でやりくりする必要があるのが欠点だ。


 だから今回用意したのは特別仕様の槍。

 弓矢や銃となると消耗品になってしまうのであまり生み出したくない。


 僕とは悪魔の集合体の所へ飛んで向かうと、すでに戦闘が開始されていた。

 元からここに配置されていた除霊や悪魔祓いを主とした転生者達が戦っているが、核である彼女を傷付けないようにか手足の端を中心に削っているので効率的とはいいがたい。

 その周りにはあのキャラの濃い世紀末集団がバイクを乗りこなしながら除霊の効果が付いたバットで殴ったり、忍者集団が除霊の札が付いたクナイなどを投げて応戦している。


 だがどの転生者達も決め手に欠けるように感じる。

 まぁ彼女の安全を優先しているからやるにやれないと言うところだろう。

 でもまぁ僕はあくまでもサポートがメイン。

 この槍を使ってヌルゲーにしてやればいいだけだ。


 僕は槍を構えながら彼女がどこにいるのか見る。

 あの悪魔の集合体の中で悪魔でない部分を見つけてしまえばいいだけだ。

 人間にとっては難しい事かもしれないけど、僕にとっては簡単な事。

 何せ僕も悪魔だからね。

 同種かどうかくらい一目で見分けられる。


「……見つけた」


 やはり悪魔達は頭が悪いからか、彼女を一か所に留めている。

 彼女は虚ろな目でぶつぶつと相棒と加奈ちゃんに対して恨み言をつぶやいているが、ほとんど意識はないに等しい。

 おそらく悪魔達が無理やり怒りの感情を引き出そうとして頭がおかしくなっているんだろう。

 この様子じゃ精神的に回復するのはいったい何時になるのか分からない。

 まぁこれも自業自得って事にしてもらう。


 僕は彼女に向かって槍を使おうと思ったが、相棒から愛香と呼ばれている人間が悪魔達を結界でぶつけた。

 結界で閉じ込めたのではなく、壁のようにして動きを止めたという事はおそらく相棒の指示だろう。

 似たような能力を持った転生者達が四方から悪魔の集合体を押し付け、動きを止める。

 これなら楽勝だと思い、僕は槍を投げた。


 槍はまっすぐ悪魔の集合体に突き刺さり、彼女にまっすぐ向かっていく。

 彼女に槍の先が当たる寸前に槍は形状を変えた。

 それは巨大な鳥籠、加奈ちゃんの小悪魔に使った鳥籠の巨大バージョンだ。

 彼女を傷付けるのは契約違反なので無理やり鳥籠の中に閉じ込めたので、周囲に張り付いていた悪魔も一緒に鳥籠の中に入っているが、まぁこれは後から除霊でもなんでもすればいい。


 これで大部分の悪魔と彼女を強制的に切り離す事が出来た。

 彼女に引っ付いている悪魔も強制的に切り離すと、それこそ治療不可能なほどの負荷を与えてしまう事になるので今回はしない。

 そして彼女と言う核を失った悪魔達は彼女から感情のエネルギーを得る事が出来なくなり、誰にも憑りつく事が出来なければ勝手に消滅するか、召喚される前の所に戻るだろう。


 烏合の衆となった悪魔達は逃げたり彼女にもう1度憑りつこうとするが鳥籠がそれを許さない。

 結果彼女に集まっていた悪魔達は全て消され、町の住人達も悪魔達から解放された。

 さて、あとの問題は加奈ちゃん達がどうしたいか、だね。

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