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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【強欲】な悪魔
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クロウと一緒にアンノウン退治へ

「さて、今日のホームルームはアンノウン被害が出た町でアンノウンを倒すメンバーの選出だ。ついこの間の、そこにいるドラコほどではないが、憑依群生タイプのアンノウンだから別な意味で面倒臭いぞ~」


 朝のホームルームの時間に担任からそう言われた。

 憑依群生タイプについて軽く説明すると、一般人がアンノウンに取りつかれてしまうタイプであり、あまり強力ではないが一般人を救うためにちょっと特殊な力が必要と言われている。

 簡単に言うと聖なる力とか、降霊術みたいなものとか、そんな力が必要らしい。

 ただし群生となると親玉となるアンノウンがいて、そいつを倒すまで何度助けても無駄になってしまう事もある。

 ゲーム風に言うなら周りの雑魚を無視して、ボスモンスターを倒さないと永遠にクリアーできないみたいな感じだ。

 なので非常に面倒なアンノウンとして有名なタイプだ。


「今回はかなり特殊なタイプだから学年問わず憑依された人を助けられる奴、そして本体であるアンノウンを倒せるだけの実力を持った奴をこっちで選出した。これは上から決められている事だから拒否できないからな~。と言ってもこのクラスからは3人だけだが」


 へ~。3人もこのクラスから選出されるんだ。

 なんとなく多いな~っと思っていると担任は言う。


「今回出張に行くのは愛香、コッペリア、柊の3人だ。3人は明後日から他の学年の連中と一緒に行動できるよう準備しとけ。以上」

「え、俺カウントされてんの!?」


 驚いた事に何故か俺が含まれていた。

 これに関しては愛香さんもコッペリアも不満そうで担任に言う。


「先生。さすがに柊君は危険じゃないでしょうか。彼は身を守る手段がないんですよ」

「そうよ。下手をすればそのアンノウンに憑依される可能性だって捨てきれないじゃない。シュウを危険な目に遭わせるような事はしたくないんだけど」

「それに関しては上の連中が決めたとしかこっちは言えないが、理由は聞いてる。柊は特別に外部の協力者、クロウって子を一緒に連れて行けだそうだ」

「あ、あ~。先生。つまり新しい俺の友達、アンノウンの実力や能力を見ておきたいって事ですか?」

「そう言う事だ。資料その物はお前と同じ世界から来たと思われる子から情報提供があったんだが、それでもやっぱり実際に実力や能力を確認しておきたいそうだ。それに憑依タイプの相手に対して有効的な面もあると判断された。まぁお前としては外部の人間を巻き込みたくはないだろうが……納得してもらえたか?」

「納得は出来たけど多分あいつ手伝ってはくれないと思いますよ」

「え、それマジ?」

「マジです。相棒、クロウの正体は悪魔です。俺の言う事は友人だからある程度聞いてくれますが、それ以外からの頼みとなると報酬が必要です。それから多分俺より詳しいと思いますけど、悪魔と契約するって事になるんでその意味分かってますよね?」


 悪魔。

 それは神様と敵対する存在としてかなり有名だろう。

 でもクロウと言う悪魔に関しては特に神様相手に敵対心と言うか、殺し合ったりすることに興味はない。

 どちらかと言うと人間を堕落させるという意味合いでの悪魔と言う方が正しいだろう。

 契約者がつい手を出したくなるような条件を出しながら、誘惑し、甘い言葉を投げかけ、快楽に落としたところで魂を支配する。

 言ってしまえば神様が定めたルールを破らせる事を面白がっていると言っていい。

 まぁクロウは少し特殊な悪魔だと奥さんは言っていた気がするが。


「悪魔契約、か。生贄とか無理だぞ」

「あ、あいつの場合は金さえ積めばある程度は言う事聞いてくれると思うので、生贄とかは必要ないですよ」

「そ、そうか。現金な悪魔だな」

「あいつにとっては金が人類最大の発明と言うくらい金が好きですから。それからこれ、クロウの名刺です。これでクロウを悪魔として召喚し、契約する事が出来るので先生に渡しておきますね」

「そ、そうか。ちなみに柊の方から頼めば安くなったりしないか?」

「さあ?俺がクロウに頼んだことは何度かありましたが……誰かの頼みを間接的に頼んだことはありませんから分かりません。それに直接交渉した方が後で痛い目見なくて済むと思いますよ?俺じゃ契約の交渉とか無理なんで」

「……それもそうだな。上と相談してみる」


 さて、クロウが出てくるとなると……日本経済大丈夫だよな?

 まぁすでにアメリカの企業の株がどうこう言ってたけど、悪い事はしたりしない……よね?


 ――


「やっほー相棒。今日は依頼された悪魔としてきたよ」


 出発する日。

 クロウは相変わらずゴスロリ服を着て登場した。

 他の生徒達はクロウを見て奇抜なファッションとしか感じていないのか、それとも事前にクロウの事を聞いていたのか、意外と反応は薄い。

 まぁそれよりも濃いキャラがいるからかもしれないが。


「ヒャッハー!!」

「除霊とは久しぶりでござるな」


 前に相談した先輩達、ヒャッハー先輩とござる先輩も一緒だ。

 どちらかと言うとあの2人とその仲間に存在感を奪われているような気がする。


 ヒャッハー先輩の前世は意外な事にその世界の悪霊を鉄パイプやメリケンサックでぶん殴っていたらしい。

 そしてござる先輩の方も秘密裏に除霊をしていた忍者集団の棟梁が前世だったとか。


「いや~……あの集団キャラ濃すぎるって。あんな違法改造したバイクとかマンガの中でしか見たことないぞ。下手すりゃ世紀末だぞ。あんなよく分からん棘くっつけてどうすんだよ。バイクじゃ横から体当たりとかできないじゃん」

「このパンクでイカス格好が理解できないとは!まだまだだなぁ~後輩!!」

「しかし機能美ももう少し目を向けてほしい所でござるな。いいバイクだからこそ製作者の意思が込められている。そうは思わぬか?」

「んだとゴラァ!!機能美言い出したら詰まんねぇんだよ!!これは全て無駄じゃねぇ、ファッションと同じだ!!自分を表現するためのファッションなんだよ!!」

「しかし戦場ではいらぬだろう。しかも今回は森に囲まれた町の中。その棘が草木に絡まり動けなくなる可能性は捨てきれぬでござる」


 機能美VS装飾美がぶつかり合いそうになったので俺は逃げる。

 クロウも俺の後ろにくっ付いて逃げてきた。


「え、何あの世紀末集団。暴走族だってあそこまでやってないよ」

「と言うか現代日本で暴走族すら見てないけどな。それにあの世紀末集団、全員バイセクシャルだから仲間内で大乱交会とかやってるらしいぞ。仲間との結束を強めるためだとか」

「…………キャラ盛り過ぎじゃない?僕も悪魔だから性別に囚われてないけど、あの見た目で?とんでもなく大きいモヒカンとかいがぐりみたいな頭の男同士で性交してるの?」

「……噂ではそうらしい」

「キャラ濃すぎるって……ある僕達悪魔よりもキャラ濃すぎるって。僕達アンノウンよりもキャラ濃すぎるって。これじゃ僕ただのコスプレゴスロリ少女じゃん」

「普通からすればそれでも十分キャラが濃いんだけどな~」


 ゴスロリ服を普段から来ている奴なんて見たことないからな。


「ところでクロウ。お前学校と契約したんだな」

「まぁね。相棒の学校だから定価で受けてあげたよ。優しいだろ僕」

「元々詐欺めいた事をしているようには聞いてなかったけど?」

「まぁそれでも金額に換算すると思ってたのと違うって言うのは多いからね。それに仕事をするにはそれなりに金が多くなる。僕は人間のためになんて考えは全くないからね。僕は僕のために金を得て好きに使う」

「俺だってそう思う。金があればある程度は好きにできるからな」

「それならさ~前に言ったみたいにお金もらってよ。ドラコのおやつ代とかゲーム代とか、色々必要なんでしょ?」

「ドラコはまだまだ子供だ。自分で稼ぐ方法を学んでいるならともかく、まだ与えられるのが当然な状態なら金の使い方は教えてあげないとダメだ。ただでさえ今回同行出来ないから不機嫌だって言うのに」


 ドラコの力はあまりにも強大すぎる。

 だからアンノウンに取りつかれている一般人を巻き込まないため今回は奥さんの所でお留守番だ。

 もちろん泣き叫んだし、暴れたが最終的には奥さんの母性でどうにかお留守番させる事が出来た。

 その代わり欲しいゲーム1つ買ってやることになってしまったが……


「あ~金が欲しい」

「だから僕が出すって」

「親しき中にも礼儀ありって事で友達同士で金の貸し借りはしたくない。絶対友情壊れるぞ」

「その程度で壊れるほど僕達の友情って薄い?」

「壊れなくてもきっかけになりそうだから怖い」

「僕ならあげるよ?」

「そうなったら俺はダメ男街道一直線になりそうだからマジでやめて」

「なんだ。学校側が悪魔と契約したなんて驚いてたら、その子だったのか」


 クロウと話していると、先輩が片手を上げながら話しかけてきた。


「あれ?先輩も参加ですか?」

「ああ。と言っても俺は補充要員だけどな。町を囲んでいる英雄達もそろそろ交代時期だから向こうにいる先輩達と交代して町の外にアンノウンが出ないよう監視、及び防衛がメインだ。お前の方はアンノウン退治の方だったよな?大丈夫か?」

「まぁ多分大丈夫じゃないかと。護衛感覚で愛香さんとコッペリアがいますし、今回はクロウがいる。どんなタイプの憑依型なのかは分かりませんが、クロウがいれば問題ないかと」

「なるほどな。できるだけ住民を元に戻したいから協力してくれ、悪魔ちゃん」

「お金払ってくれるならいいよ。あと相棒と友達以外からはミス・クロウって呼んで欲しいな」

「分かったよミス・クロウ。それから俺個人は敵対している存在を倒すためなら悪魔でも平気で手に取る手段を選ばないタイプだ。そこだけは安心してくれ」

「仕事上の仲間なら僕も歓迎だよ」


 先輩はクロウと握手をしてバスに向かった。

 さて俺達はっと。


「そんじゃ俺達も例の町に向かいますか。一応能力は聞いてたが、ちゃんと現金持ってきたんだろうな?」

「当然じゃないか。僕専用の亜空間にしまってある。いつでも使えるさ」

「それじゃよろしく頼むぜ、相棒」

「そっちこそ。いいアイディア頼むよ、相棒」


 拳をぶつけあって俺達はバスに向かった。

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