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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【強欲】な悪魔
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奥さんも本気出してきた

「全く。僕だけ全然相棒と2人っきりになれないじゃないか」

「まぁそう言うなよ。と言うかお前学校行ってないの?」

「アメリカで卒業資格はとっく持ってる。一応大学も卒業したし、もう学校に通う必要はないんだよ」

「あらあら~。クロウちゃんは凄いわね~。でも~、やっぱり同じ年頃のお友達を作るのならやっぱり学校は良いと思うわよ~?ママちょっと心配」

「マザー。君にとっての子供は相棒の事だろ。僕の事まで子供認識なのかい?」

「当然じゃない。クロウちゃんもちゃんと可愛い娘として接していきますからね~」


 土曜日。

 学校が休みなのでみんなでクロウの家に遊びに来ていた。

 クロウは俺とお家デートと言う奴をしたかったみたいだが、これにコッペリアと愛香さんが危機感を覚え阻止しに来たらしい。

 一体どこに危機感を覚えるのかは分からないが、まぁ今はドラコと俺を相手に大乱闘中なのでそこまで危機感を覚えるような事態にはなっていないようだが。


「あ~……ちょっと目が疲れた。クロウか奥さんパス」

「それじゃ僕がやるよ。ちょっと実力差って言うのを教え込んであげる」

「あら。それじゃお手並み拝見と行きましょうか」

「ドラコも負けない!」

「あの、私は初心者なのでお手柔らかにお願いしますね」


 こうして始まったゲーム勝負。

 俺は目頭をもみほぐしながらソファーでぐだ~っとしていると、奥さんがお茶を持ってきてくれた。

 奥さんは俺の隣に座って同じようにお茶を飲んだりお菓子を食べたりする。


「はいどうぞ」

「ありがとね」

「いえいえ~。それにしてもこうしてみると柊ちゃんはみんなのパパみたいね~」

「パパって。俺そんな年に見える?」

「年と言うよりは雰囲気かしら?みんなが楽しそうにしてるのを見ている姿が。だから私と夫婦になってくれませんか」

「まさかそんな方面から誘惑してくるとは思わなかった」

「夏合宿の時に言いましたよね。私は柊ちゃんの事を男性としても魅力的に思っていると」

「ありがたいけど……この年でパパか~。なんか複雑」


 ただ単に他のみんなが楽しくやっているのを眺めるのが好きって人は他にもいると思う。

 奥さんが指摘するように俺は多分そのタイプだし、みんなが仲良く遊んでいるのを見て何となく楽しいと感じてしまう。

 でもそれだけでパパ扱いされるのはな~。


「でも柊ちゃんは良いパパになれそうな気がしますよ」

「良いパパの条件がよく分からん。野原ひ〇しでも目指してみるか?」

「足の臭いが兵器みたいになっているのはさすがにちょっと……」

「でも良い父親の代表格だと思ってるけど?」

「そうですね。子供のためにああやって頑張れる人は少ないですから。やっぱり子供を得ても自分自身を優先してしまう人はいますからね。これだけは性別とか関係なく」

「それは性格だからな。でももし子供が出来たら子供優先にしたいけど……結婚した相手の事も大切にしたいな~」

「そう考える事が出来るから良いパパになれそうだって思うの。私も、また自分の赤ちゃんを産んで育てたいって思えるようになってきたから」


 それは少し意外だ。

 奥さんは昔実子に追放された過去を持っているから、自分の子供を持つことに恐怖のような物を持っているとばっかり思っていたが、そうでもなかったらしい。

 もし子供が出来たら今みたいに誰かを子供扱いしたりしなくなるんだろうか?


「それはそれでいい事だな」

「ええ。でもその一緒に子供を作る相手として、柊ちゃんの事を見てるの。さすがにコッペリアちゃんや愛香ちゃんみたいな若さはないけど、こうして家事とかはできるし、子供を育てた経験もあるからそこでアピールしていかないと。ちゃんと大人になるまで育ててみるわ」

「…………ちょっとくだらない事思い出した」

「くだらない事?」

「野生動物の中では子供を産んだことがない雌よりも、何度も子供を産んで育てた雌の方がモテるって話」

「確かに私のアピールポイントはそれに似てるかも。やっぱり若い子の方が好き?」

「う~ん。まぁできる限り同世代が良いなって言う希望はあるね」


 正直に言うと奥さんは少し悲しそうな顔をした。


「でもそれは相手の事を知らないからって言うのが大きいかな」

「相手の事を知らない?」

「だって普通に考えれば年が離れれば離れるほど価値観と言うか、常識とかが変わっていくわけでしょ。いわゆるその時代の生き方みたいな感じで。だから年が近ければそう言う価値観の違いによるすれ違いみたいなのが減っていいかな~って感じで考えてたから。でもこうして一緒に居てこんだけお互いの事を知ってたら、問題はないんじゃないかなって思う」

「柊ちゃん……」

「だから奥さんの事もちゃんと考えてるから、そんな表情すんな」


 そう言うと奥さんは安心した表情と目の奥に女としての本能のような強い視線を感じた。


「あらあら。そんな事言うと本当に――本気出しちゃうわよ」

「もうみんな本気出してるみたいなのでご自由に」

「そこはぶっきらぼうなのね。それじゃ私の本気を教えるために胃袋から掴んじゃおうかしら」

「あ、昼飯作るなら手伝うぞ」

「パパはそこで待っててください。なんてね~」


 奥さんは上機嫌でキッチンに向かって行った。

 そして今になって気付くみんなからの視線。


「ちっ。やっぱりマザーは強敵ね。しかも本気を出してくるわ」

「どどど、どうしましょう!!寮母さんが本気出して来たら、本当に胃袋掴まれちゃいますよ!!」

「ドラコ、なんかもやもやする」

「相棒。今度デートで銀座に行こう。そこでマザーがどれだけ頑張っても手が届かない美食を味あわせてあげるから」


 なんかそれぞれ色んな感情を持ったようだが、ベルだけは相変わらず寝ている。

 もう最近は本当に俺が寝ている間に夢の中でしか話していない。

 一体ベルは何に警戒しているんだ?

 何時から寝ているのかは分からないが、これはただ寝ているだけではなく力を溜めているともいえる行為だからどうしても少し不安が残る。


「全く。やっぱり相棒はタラシって奴だね。あの子供扱いのマザーまで本気にさせるとか、やっぱり才能だよ」

「タラシの才能とか俺いらねぇ」

「うまく使いこなしてるくせに」

「そんなつもりはない」

「ちょっとシュウ。マザーとばかり仲良くしないで私ともイチャイチャしなさい。念のため言っておくけど、マザーは性欲強めよ」

「それ聞いた俺はどう反応すればいいんだよ」

「そ、そうです!!まだ私達は学生なんですから!その、そう言う事はほどほどにしておくべきです!!」

「全否定しないのね。元聖女なのに意外」

「だ、だって私だってそう言うのに全く興味がないわけではありませんし、前世では卒業せず一生を終えたわけですし……」

「シュウ。気を付けた方が良いわね。アイカみたいなのも性欲が強いと思うわ」

「コッペリアさん!!想像だけでそう言う事を言うのは止めてください!!私はそんなに性欲強くありません!!ちょっと恋愛に興味があるだけで、そこまでの事は……」

「シュー。性欲強いの困る?」

「そうだよ相棒。僕みたいにしっかりコントロールできる方が良いに決まってるよね」

「いや、もう疲れるし、そう言う話はまたその内って事にしておこうや」


 元々そう言う一線超えた行為はなしって話なんだからこんなところで話し合わなくてもいいじゃん。

 俺はため息をつきながらもにぎやかだな~っと思った。

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