ドラコとベル
今日も疲れと思いながらベッドに横になる。
俺がベッドの真ん中で大の字になっていると、2人は俺の両隣にそっと横になった。
ドラコは恐る恐るという感じで聞いてくる。
「……シュー、ドラコ達迷惑?」
「突然すぎて意味分からん。最初から頼む」
「ドラコ達、シューとずっと居たいから勝負してる。でもシュー凄く疲れてる。ドラコ達迷惑?」
あまりにも不安そうに言うものだから俺はついドラコの頭を撫でながら優しく言う。
「迷惑とは違うな。ちょっと困ってる」
でも適当にごまかすのはよくないと思うので、俺は素直に言う。
「俺はな、みんなの事が大好きなんだ。だからみんなの中で1番を選ぶのはもの凄く大変だ。でもみんな1番になろうと頑張ってるから……俺も頑張らないとダメだと思ってるだけだ」
「でもドラコ、お嫁さんになる方法本当はよく分かってない。ドラコ、ずっと1人でいいと思ってた。だから結婚の仕方、よく分かんない……」
「俺だって本当はよく分かってねぇよ。本当はみんなと一緒に居られるなら友達と言う関係のままでいいと思っているし、無理に結婚しなくてもいいんじゃないかって思ってる。でもみんな1番になりたいんだろ?」
「……うん。1番になって、シューと1番近くに居たい」
「きっとそれくらい単純な気持ちでいいんだと思う。だって好きなっちゃったのはもうどうしようもないじゃん。それじゃ勝負辞めて、誰も1番になれないのがいいか?」
「それは…………」
「嫌なんだろ?みんな好きな人の1番になりたいって言うのはきっと自然な事なんだと思う。だからドラコもそんなに思い悩む必要はない。素直なドラゴが俺は好きなんだから」
「でも、1番になる方法もよく分かんない」
「ならこれから見つけ出せばいい。俺自身みんながそう言う意味で好きだって考えないようにしてきたんだと思う。無意識……でもないか。みんな美人だったり可愛いから、ただえり好みしているだけかもしれない」
「ドラコはどっち?」
「可愛い」
「ベルフェゴール」
「可愛い」
「コッペリア」
「美人」
「マザー」
「美人」
「クロウ」
「あれは……これから美人になる気がする。今は可愛いかな」
「コン」
「今のあいつにまだ会ってないからな……」
「人間」
「愛香さんの事か?愛香さんは……もうちょっとしたら美人になりそうな気がする」
「む~」
「そう唸るなよ。みんなこれからも友達として過ごしていくとばっかり思ってたからどうしても結婚相手として考えた事がなかったんだ。まぁエロい目で見てたことはあったかもしれないけど」
「ドラコもエッチ?」
「…………もうちょっと背が伸びてからそう言う事言いな」
「ドラコ知ってる。脈なしって奴だ」
「どっから覚えた?そんな言葉」
「コッペリア。コッペリアがクロウに『お子様体形は脈なしに決まってるでしょ』って前に喧嘩してた」
「あいつら……子供の前でどんな口喧嘩してるんだよ」
「ドラコの体も人間の子供と変わらない。脈なし?」
「まぁ……子供を孕んでも大丈夫なくらい育っては欲しいと思う」
「シュー、子供欲しい?」
「出来ればな。まぁもちろん今すぐじゃないし、ちゃんと俺も大人になってからだけど」
「シューもまだ子供?」
「子供だよ。他の大人から見れば」
「そっか。それじゃ一緒に大人になる」
「そうだな。一緒に大人になれるよう頑張ろうか」
そう話している間に俺は大きな欠伸が出た。
ドラコは俺が大きく口を開ける姿なぜかじっと見て、「おお~」っと言う。
「なんだよ?」
「欠伸おっきい」
「まぁ体だけは大人だからだ」
「?さっき子供って言った。でも体は大人?何で??」
「人間は成長する生き物だ。だからどうしても中途半端な時期があるんだよ」
「……ふ~ん?ドラコ、よく分かんない」
「分かんなくてもいいさ。どうせ知らなきゃいけない時が来ればいやでも覚える必要がある」
俺はそう言いながらドラコとベルを抱きしめると、ドラコは安心したように穏やかな表情になりながら目を閉じる。
俺も目を閉じるとあっさりと眠りに落ちた。
――
目が覚めるとそこは心地よい風が吹く草原だった。
まぁ嘘なんだけど。
いやこの言い方は誤解されるな。
正確には嘘ではなく夢の中だ。
まだ起きていないし寝ている間にどこかに移動されたわけでもない。
周りには大人から子供まで、いろんな人が寝ている。
違和感を覚えるとすれば2つか。
1つはそんな寝ている人達の世話をするようにエロい悪魔達が世話をしている事。
素っ裸だけではなく水着か下着しか着ていないような奴、シールみたいなもので乳首と股を隠している奴。
一言で言うともう変態過ぎてドン引きするような恰好をした奴しかいない。
もう1つは巨大な黒い扉。
黒い石でできた巨大な扉がぽつんと建っている事。
まぁ気にはなるがどれも放っておいていい物だ。
扉は所詮扉だからこちら側から開けようとしなければ何も起こらないし、エロ悪魔達に関しては俺の事をちらちらと見ながらも何もしてこない。
おそらく理由は俺をこの夢の世界に呼んだ人物が関係しているんだろう。
「で、今日はどうしたベル?」
最近知った夢の中のベルが俺の後ろからやって来た。
夢の中のベルは茶色い熊の着ぐるみパジャマみたいなものを着た小学生くらいの女の子だ。
眠たげな表情をしているせいか余計に幼く見えるのも原因かもしれない。
こうして夢の世界に呼ばれるようになったのは本当に最近で、こうしていれば寝ていながら俺とコミュニケーションが取れるという事で使い始めた。
まぁ条件として俺が寝ている必要があるが。
「いや、今日も他のお話がしたいだけ。僕も柊と結婚できるならしたいからさ」
「夢の世界で俺とお前の間に子供ってできる?」
「流石にそれは無理だね。赤ちゃんは現実で生まれるからこそ尊いし、精神体だけで生まれた存在は人間とは大きくかけ離れてしまうからね。それに、君の場合は普通の子供を望むだろ?」
「まぁ極論言えば普通の子供でなくてもいいんだが……」
「が?」
「いや、いつもの口調じゃないからどうもしっくりこなくて」
この夢の中のベルは普通に話す事が出来る。
ここんところ寝てばかりで間延びした話し方を全然聞いていない。
俺はそう思って言うと、ベルはいつものぬいぐるみ状態に変身した。
そして俺の元まで飛んでくると、すっぽりと俺の腕の中に納まった。
「これでぇ~いぃ~いぃ~?」
「まぁぶっちゃけ何でもいいんだが、まぁいいか」
俺はベルを抱っこしたまま二度寝する体勢を取る。
でもベルはまだ話したりないようだ。
「柊ぅ~もうちょっとお話しぃ~しようよぉ~」
「それは良いが、なんについて話す?」
「もちろん結婚の事」
そう言うとあっさりとぬいぐるみ状態から女の子状態になった。
「ふぅ。やっぱりこっちのほうが話しやすくていいかも」
「そうか。それでお前にとって結婚ってなんだ」
「もちろん柊を独占する権利みたいなものだね。出来ればずっとこうして柊に抱かれながら居眠りしていたいよ」
「結局昼寝が目的かよ。それだけなら結婚までしなくてもよくねぇか?」
「……柊の腕の中は凄く安心できる。快眠できる。だから独占できるなら独占してみたい」
そう言いながら俺に抱き着いて離れないベル。
結構可愛い所もあるが、やっぱりドラコとは少し違う感じがする。
ドラコは精神的に子供だと感じる事が多いが、ベルはやはり精神的には成熟しているような気がする。
だから何というか、ドラコと違って女の部分を感じる。
ただ甘えているのではなく、女の色気のような物を感じる。
まぁだからと言ってエロ本みたくエロい事する度胸はないけどな!
「……ちょっとくらい手を出してもいいんだよ?ここは夢の中だし」
「お前らがまじめにやってるのにそんなつまみ食いできるかよ」
「真面目だね、柊は」
「そっちが真面目だからこっちも真面目にせざる負えないんだよ。もっと軽い感じだったらハーレムプレイもいいかもな」
「………………今度みんなに言ってみようかな?」
「それはマジで頼むから止めてくれ。童貞が6人一気に相手できる訳ねぇだろ」
「それは残念。ある意味1番平和的な解決かと思ったのに」
「俺にとってはどっちに転んでも平和的とは言えねぇよ」
そう言って目を閉じると自然と意識が落ちて行った。




