先輩達に相談してみた
余計な事を言って俺を奪い合うという内容の乙女の戦争が勃発。
学校内ではすでに面白おかしくなっているようだ。
「お前……これでもう学校一の有名人だな」
「もうやめてくれ。周りで生暖かい視線を送ってくるだけならまだ耐えられるが、実際に目の前で騒がれるのは別物のストレスがかかるんだよ」
校内でのつかの間の休息。
俺は今夏合宿で世話になった先輩を中心に数名の男子生徒と共に食堂に来ていた。
先輩達は彼女持ちだったり、同性の方が良いと言う男子生徒だ。
ちなみに先輩は彼女がいるから面白おかしく見てると。
「で、現状はどうなんだよ」
「どうって言われましても……毎日大変ですよ。気が休まるのが部屋の中しかない。ちょっとマンガとか見てこようとすれば積極的なのがいつの間にか俺の後ろにいるし、女同士の戦いってマジで怖いし、もうどうすればいいんだが!」
「しかし柊殿はハーレムにご興味はないのでござるか?そうすれば解決するような気がするが……」
「多分それやったら今度は正妻戦争に変わると思います。と言うか俺自身ハーレムにそこまで興味があるかと聞かれると、憧れはするけど現実的には面倒くさそうって言うのが正直なんです。一部ハーレムでもいいと考えている組みもいますけど」
「あひゃひゃひゃ!!でも戦争のルールは決められているんだろぉ!?」
「まぁ一応ですけど」
「どんなルールなんだゴラァ!!」
「簡単に説明しますと、俺の部屋に何か仕込むのはなし。夜這いはなし。媚薬や洗脳はなし。俺が不快だと思う行動はなしって事になってますけど……」
「この状況じゃ最後の項目はあってないような物だな」
「……はい」
なぜこんなにも大事になっているかと言うと、理由は大きく分けて3つある。
1つは夏合宿で俺が愛香さんやコッペリア達に好意を向けられている事を知っている生徒の方が圧倒的に多かったため、とうとう戦争が始まったと想像以上に盛り上がっていた事。
2つ目は校外からクロウと言う美少女が参戦してきたこと。これにより学校のみんなはダークホースが現れたとまた盛り上がった事。
3つ目は愛香さんがコッペリア達に負けないよう他の女子生徒達に応援を要請した事で情報が一気に拡散されてしまった事だ。
ちなみにこの戦争に参加しているのは愛香さん、コッペリア、クロウ、奥さん、ドラコ、ベルの6名である。
全員俺の友達である。
え、なにこれ?
普通はもっとこう、最初っから知ってる感じではないんじゃないの?
「普通恋愛ってお互いに何も知らない状態から始まるんじゃないんですか?何でとっくの昔に知り合ってる連中とばかり……」
「いやいや、それはあくまでも切っ掛けだろ。知り合った相手の事が良いなって思ったらこうしてスタートしたんだろ」
「それは何となく分かるんですけど!分かるんですけど!!なんて言うかこう、もうちょっとなかったんですかね!?5/6が前世からの知り合いでめちゃくちゃ複雑なんですけど!!」
「もしやこれは、愛香殿の一人勝ちでござるか!!」
「まだ決めてない!!」
「それはそれで優柔不断すぎるでござるよ~。前世からの知り合いではないと言う点においては、愛香殿しか条件が満ちていないでござるよ」
「そうなんですけどね!!でもみんな本気出してるみたいだから、それだけで決めるのも不誠実と言うか、かといって馬鹿丸出しでスタイルとか顔だけで彼女決めるのも失礼な気がして……」
「つぅ~ことわよぉ~。おめぇなりに真面目に決めようとはしてるんだよなぁ~?」
「それは……もちろん。みんな本気なので俺もちゃんと吟味したいって言うとやっぱりクズ発言ですかね?相手は物じゃなくて人なのに……」
「それはそれで真面目に考えすぎだ。もっと軽く考えろ」
「でも……そのほとんどが結婚する事を前提としているというか、そこまで考えていると思うとどうしても重たく考えちゃって……」
俺の愚痴に対して先輩達はう~んと唸っている。
俺だって軽い関係、こう言うのも失礼だが学生らしく付き合うと言っても青春の1ページみたいな感じで別れてもまぁ仕方ないよね。みたいな感じだったらもっと楽だった。
でもみんなは俺とずっと居たいと考えているからこそ結婚と言う言葉を使っているように感じる。
それにみんな人間ではない。
みんなにとってずっと一緒とは、一体どれくらいの期間の事を言っているのだろう。
本当に死ぬまで?
それともそれ以上の時間の事を言っているのか?
正直それが一番不安だ。
俺は、みんなと同じ時間を生きられない。
それが一番不安だ。
「まぁ確かに。俺達の年で真面目に結婚まで考えてる奴はそう多くないよな」
「それを言われると確かに簡単に答えを出すのは難しいでござるな」
「あぁ~ん?俺様はそこまで考えてるぜぇ~?」
「「お前(お主)は同性の場合いだろうが(でござろう)!!」」
「と、とにかくそういう事です。みんな真面目に言ってくれているので中途半端な気持ちで答えるわけにはいかないんですよ」
少し俺と考えている事とは違うが、そこまで大きくずれている訳でもないだろう。
そう思っていると奥さんがお盆を持ってきてくれた。
「柊ちゃん。はい今日のご飯。残さず食べてね」
「ありがと奥さん」
「も~マザーって呼んで」
何と言うか、語尾の最後にハートマークでも入ってそうなくらいノリノリな感じで言ってすぐにどこかに行った。
先輩達はお盆に乗った料理を見て首をひねる。
「なんだこれ?」
「こんなの今日の食堂にあったでござるか?」
「見事にバラバラだぜ!!」
お盆の上に乗っているのはご飯とみそ汁、麻婆豆腐、魚の煮つけ、野菜炒めが乗っている。
「今日はこれか。いただきます」
「これなんだ?」
「奥さんと愛香さん、コッペリアが作った飯です。コッペリアは今回のために料理を奥さんに教えてもらったそうです」
「それは凄いでござるな」
「ヒャッハー!美味そうだぜ!!」
まぁ実際美味いんだよね。
今日作ったのは……麻婆豆腐が奥さん、魚の煮つけが愛香さん、コッペリアが野菜炒めみたいだ。
なんとなくだけど最近誰がどれを作ったのか分かるようになってきた。
コッペリアなんて今回の勝負のために料理を本格的に奥さんから学んでるからな……
それにインターネットでレシピとかを集めて、最初はそれ通りに作った後に自分好みに調整できるようになったらしい。
愛香さんは愛香さんのお母さんから教えてもらっているそうだ。
愛香さんのお母さんからは電話で作り方を教えてもらったり、レシピを送ってもらって少しずつ成長しているとか。
「これもアピールの1つなんですよね……」
「これもか。しかも3人」
「他の3人は料理できないので他の所でアピールするって言ってました」
「……確かに本気だな。こりゃ」
「本気も本気でござるよ」
「俺も久しぶりにあいつらに食わせてやっかー!!」
なんか盛り上がっているけど、まぁ確かに最近は上手くなった。
特にコッペリアは料理を科学実験の様にレシピ通りに調理しているのにうまくいかないと塩っ辛くなっていたり、しょっぱかったりとなんか味の調整がおかしかった。
だから今は簡単なものから奥さんに教えてもらいながら料理をデータだけに頼らない料理をしている。
「はぁ。美味くなっていく分さらに悩む」
「……贅沢な悩みだな」
「……自分でも思います」
愛されているというのは感じる。
でもみんな好きで、今の関係を維持していきたいからこそこの関係を壊せない。
どうすればいいんだろうな~。




