余計なこと言っちゃった……
「で、何でお前そんな格好してんだよ。お前性別男じゃなかったっけ?」
「当時の僕に性別はないよ。悪魔だから無性も有性も好きに選べるから、今回は女の子を選んだだけ」
「なのに一人称は僕のまんまなんだな」
「だってずっとそう言い続けてきた訳だし」
そう話しながら俺達はテレビゲームをしていた。
いや~ゲーム機をテレビにつなげて遊ぶの何時ぶりだ?ここんところずっと携帯系ゲーム機でしか遊んでなかったからテレビにつなげて遊ぶなんてしてなかったわ。
そうやって遊びながらコーラを飲んだり、冷凍のピザを食べたりしながら過ごしている。
もちろんスマホでコッペリア、奥さんには伝えてある。ベルとドラコには奥さんの方から伝えてもらうよう頼んでおいた。
「それにしても、こんな立派な家なのにほとんどがオタクグッズばっかりなのはどうよ?こういう家って普通なんかよく分かんない絵画とか飾ってるもんじゃないの?何で飾ってるのが限定盤に同封されてるタペストリーなんだよ」
「え、可愛いよね?」
「可愛いのは認めるが、なんか家の雰囲気と違う」
「だって丸まったまま置いておくのもなんか変じゃない?飾ってこそ価値が出るってものでしょ」
「まぁ言いたい事は分かるんだが……俺の場合飾る場所がないから普通にしまってるんだよね~」
「それこそ何のために買ったの?って聞きたくなるんだけど」
「ま、俺の場合店舗特典でもらう事が多いから。にしても本当に立派な家だよな。これで1人暮らしとか大変じゃない?掃除とかどうしてんの?」
「家政婦を数人雇ってるから大丈夫。それに平日だけだからこういう休日に人が来る事はないから」
「家政婦って本当に雇ってる人初めて見た。ああいうのって仕事が忙しい人が頼むもんじゃないの?お前全然忙しそうに見えないんだけど」
「忙しくはないけど株の売買で儲けてるから注意は必要かな」
「株か~。そんなに稼げるなら俺も買ってみたいな~」
「ちょ!そのコンボ悪質すぎない!?と言うか何でそんなに上手いんだよ相棒!!」
「最近はドラコ相手にやってること多いから。それにネットでどっかの誰かさんと戦えるし、慣れだよ慣れ」
話ながら大乱闘している間に俺が勝った。
まぁ今回は1対1の対戦だったし、楽な方だったかな。
コントローラーを置いて背伸びをしてからハンバーガーに手を伸ばす。
こんな風にジャンクフード食べながらゲームとか久しぶり過ぎ。
親の前だとゲーム機壊れるからって菓子食いながらゲームとか許してもらえなかったからマジで久しぶりだぞ。
「と言うか家政婦雇ってるなら飯も作ってもらえよ。テレビで見たぞ、家政婦さんに飯作ってもらうの」
「あ~僕はジャンクフードとかで十分だよ。アメリカじゃそれが普通だったし」
「いや少しは気を付けろよ。将来ジャンクフードばっかり食べて肥満だ糖尿だってなったら大変だろ」
「悪魔が人間と同じように病気になったりするわけないでしょ」
「でも人間社会に混ざってるって事はその身体、人間と同じなんじゃないのか?それにお前が女の子になって女の子らしい格好してるのも不思議だし。前世の頃は服も男物だったよな?」
流石に俺ほどヨレヨレの服を着ていたわけではないが、それでもユニクロみたいな安いとこの服を着ていたはず。
それなのに今はゴスロリ服を着てオタク活動とか、昔のクロウとかなり違う。
昔はゲームとかマンガとか買ってなかった気がするんだがな……
「それは……まぁ遊び心って奴だよ」
「遊び心?お前が??金を稼ぐためならどんな手段もいとわないお前が??」
「うぐ。僕だって相棒がいなくなった後も変化はあったって事。それにこの世界と言うより日本が異常なんだよ。何でこんなに娯楽あふれてるわけ?アメリカじゃここまで娯楽はなかったのに。おかげで有り余っているお金が減っていったよ」
「有り余ってるならいいじゃん。俺は金欠だぞ」
「あ、それなら僕と契約して遊び相手になってよ」
「なんか白い小動物みたいな言い方だな。契約して魂掴まれるのはマジで怖いんですけど」
「日払いで1万円はどう?内容はこうして僕とゲームしたりオタ活のサポートで」
「それって休日あるの?と言うか平日はどうなんだ?」
「平日も来てほしいな」
「寮生活者にそれは無理。土日祝日なら大丈夫。でもドラコとかも来る可能性高いぞ」
「みんななら問題ない。たまには別の刺激も欲しくなるだろうし」
「奥さんも来るぞ」
「…………ジャンクフード好きなんだけどな」
まぁ奥さんが来たらジャンクフードばっかり食べることは出来ないだろうな。
「で、聞きたいんだけど何で女の子の体にしたんだよ。前は男扱いしないと怒ってたくらいなのに」
「……大した理由じゃないよ。単なる気分の問題さ」
「日本人でもそんなに着ないゴスロリ着ておいて?」
「……仕方ないだろ!!ジャパンのHENNTAI文化に染まっちゃったんだから!!今じゃネットに僕のコスプレ写真をアップするのが日常だよ!!」
「想像以上に染まってて驚いた。え、それじゃ普通の服は……」
「あるけどコスプレ用の服の方が圧倒的に多いよ。もうちょっと胸とか大きくしたいけど……」
…………なんて言うんだろう。
前世の頃は男として扱っていたからか、クロウが自分の胸を大きくしたいと言っている事に色々複雑……
あと自分の胸揉むな。
本当に女の子なんだって思っちゃうから。
「ん?どうしたの僕の胸見て」
「いや、本当に女の子になっちゃったんだな~っと思って」
「……やっぱり引いてる?」
「引くとは違うが、驚いてはいる」
「だよね~。実際女の子になったのにまだ『僕』って使ってるし、日本じゃおかしいんでしょ?女の子が僕って使うの」
「まぁあまり聞かないな。でもオタクなら知ってるだろ。僕っ子ってジャンルがあるの。日本人は外国人が思っている以上に変態で、エロには寛大だ。だから俺にとっては問題ない」
「……そっか。問題ないか」
そうクロウはほっとしたように言った。
すると何を思ったのか俺の胡坐の上に座ってきた。
「何してんだよ」
「何って甘えてるんだよ。せっかく女の子の体なんだからこういう事をして少しずつ相棒の気を引いておこうと思って」
「なんだそれ。女の子の体になったって友達止める気はないぞ」
「そうじゃなくて、女の子として僕の事を好きになってほしいって言ったらどうする?」
「………………は?」
ごめん頭の中が一瞬フリーズした。
女の子として好きになってほしいって何?
「えっとクロウさん。確認してもよろしいでしょうか」
「どうぞどうぞ。契約の確認はしっかりとするものだからね」
「女の子として好きになってほしいとは……どのような意味でしょう?」
「どのようなって……そりゃ妻になりたいって感じだよ」
「妻!?恋人とかじゃなくてか!?」
「そうだよ。だって僕達の関係なら恋人なんて関係を確かめる行為は必要ないと思うし、ジャパンには見合い結婚ってものがあるんでしょ?ならいきなり結婚してもいいような気がするけど」
「いやいやいや!!ある程度段階は踏む必要があると俺思うよ!!それにほら!コッペリアとか奥さんとか、ドラコとか色々問題あるし!!」
「マザーは母親として一緒にいれればそれでよさそうだし、ドラコも恋だのそう言う感情は芽生えてないから大丈夫だと思う。コッペリアは……素直じゃなさそうだしね。ベルは論外。つまり僕の一人勝ち」
「そんな訳ないだろ!!あ~何で今になって友達から恋人になろう的な感じが増えてんだよ。俺これからもみんなと一緒に居たいからそう言う、コミュニティーが壊れそうな感じのことできるだけ避けたいんですけど!?」
「でも僕だけじゃなく、前世からの友達はみんな、相棒とずっと一緒に居られるようにはする。僕はその中でも妻と言う立場に立って法的にも一緒に居られるようになりたいんだ。ダメかな?」
こ、これはどうすればいいんだ!?
確かに俺クロウの事だって嫌いじゃないし、これから先も一緒に居たいとは思ってる。
でも恋愛感情を持っているかと聞かれれば否だ。
でもクロウの事は傷付けられないし……どうすれば!!
「危ない!!」
「え?」
クロウが俺をかばうように伏せさせると何かが割れる音がした。
音が静かになるまで少し待っていると、庭と繋がるガラスが割られていた。
そして明らかにガラスを破壊したと思われる人物が仁王立ちでこちらを睨み付けている。
「久しぶりねクロウ。シュウと結婚するために男を捨てた男」
「久しぶりだねコッペリア。酷いじゃないか。この家新築なんだよ。弁償してくれないかな?」
「弁償?この程度私の技術がなくても簡単に直せるでしょ。貴方の事だからお金で解決すればいいじゃない」
「その修理代を君が出してほしいと僕は言ったんだけどね」
「そんな事よりシュウと結婚するってどういうつもり?」
「結婚!?」
あれ?なんか意外な声が聞こえたな。
そう思ってみるとコッペリアの後ろには愛香さんがいた。
そう言えば一緒に買い物してるって言ってたもんな。
「男女が、シュウと結婚とはいい度胸じゃない。貴方の子宮を奪って私に取り付けようかしら」
「はは、面白いジョークだね。悪魔の子宮を機械人形に取り付ける訳ないだろ」
まさに一触即発の空気に俺はこの場をどう収めればいいのか考える。
考えるが……いい答えなんて見つかるはずがない。
俺が知っている恋愛知識なんてマンガから得た物しかないんだ。実戦で使えるとはとても思えない。
0距離でガンつけ合っている。
もうこれどうすればいいのか分かんねぇよ……
「はぁ。もうこれどうすりゃいいんだ……もう惚れさせた方の勝ちとかでもいいんじゃね?」
ついそう言葉が漏れてしまった。
するとコッペリアとクロウが怖い顔をしながら俺に顔に近付いてきた。
「それ、本当なのよね」
「今の言葉、もう取り消さないよ」
「え?……あ、やっべ」
「ならこれは、競争ね」
「そうだね。それにどうせこれはいつかぶつかる問題でもあったんだ。早々に決着を付けられるのであればそれでいい」
「あ、あの。2人とも?」
「ルールは監禁だけはなしでいいかしら?」
「どうせ君の事だから奇妙な電波を使って相棒を虜にしたりしないだろうね。これは要会議物だ。契約書に残しておかないと」
「あら、別にいいわよ~。ただし、あなたに有利な条件だけは飲ませてあげないからね」
「それは僕のセリフだよ。と言うか機械人形に本当に恋愛なんてできるのかな?」
やっべ~……自分で自分のコミュニティー破壊しちゃったかも。
え、これってもしかして俺が誰を恋人にするか決めるまで終わらない感じ?
え、マジでどうしよう……
「あ、あの~」
もしかして救世主になるか聖女愛香様!!
恐る恐る手を上げた愛香さんは核弾頭にウラン燃料を突っ込むような事を言った。
「私も柊君の事が好きなので、参加させてください……」
終わった!!
色んな意味で終わった!!
確かにみんなの事好きだけど!!そう言うエロい目で見てたわけじゃないんだよ!!
「この子誰?」
「アイカって言うシュウの事が好きな転生者。でも、ここで声を上げるのは少し意外だったわ。私達が争っている間に漁夫の利でも狙えばよかったのに」
「そ、それは流石に失礼なので!それにその、私だって負けるつもりはありません!!」
あ~ダメだ。
ストッパーが誰も居ねぇ……
つい口に出てしまった言葉だがこれ誰の手に求められない気がするのは、多分気のせいではないと思う。




