引っ越してきた友達
流石にそろそろ寒くなってきた感じがするので秋が短くて、すぐに冬が来るんじゃないかと勝手に予想している今日この頃。
俺はただなんとなく街をぶらぶらしていた。
今日はドラコも1人で部屋で遊んでいる。
最近発売されたゲームに夢中になっているので、最近はそればっかり遊んでいる。
愛香さんとコッペリアは2人で買い物に行ってるみたいだし、奥さんは寮母として寮で仕事中。人の世話をする仕事と言うのは休みが少なくて大変そうだ。
で、俺は久しぶりの本当に1人で街をぶらぶらしていた。
新しいマンガなど出ていないか本屋に行ったり、ゲーム屋に行って中古で面白い奴がないか見てみたりと色々巡っていた。
でもいいマンガもゲームも無かったのでこうして散歩をしている。
何か面白い事は起きないかな~っと思いながら歩いていると、珍しいのがいた。
白と黒のゴスロリの服を着た人がいた。
学園都市と言うだけあってコスプレっぽい服を着た人や、ゴスロリみたいな珍しい格好をした人は非常に少ないのでかなり目立つ。
しかも両手にはどこかの服屋の紙袋を大量に持っていたのでもの凄く重そうだ。
「あんた大丈夫か?」
流石に見てられなくて声をかけると、その子は顔を上げた。
「え、うん。僕大丈夫だよ」
…………女の子でいいんだよな?
なんか日本人と比べるとやけに肌が白いし顔の形が違う気がする。
それに今僕って言ったよな?
もしかして女装男子だったりする??
見た目は中学生くらいか?背が低いから小学生に見えなくもないが、さすがにこんなに服を持った小学生はいないだろう。
あと誰かに似てるような……
「本当か?それ持って家に帰れるのか?」
「大丈夫だよ。そこのバスに乗って帰れるから」
「……あのバス停のバス、確か1時間に2本くらいしか来ないはずだぞ。本当に時間大丈夫か?」
「え?」
ゴスロリ君は時刻表を確認するために歩いていき、トボトボした足取りで戻ってきた。
「次のバス1時間後だった……」
「全く。手伝ってやるからその荷物持ってやろうか?」
「え、いいの!?」
「別にいいぞ。この町なら小さいし、どうせすぐだろ」
「あ~……僕の家結構遠いよ」
「歩きでどんぐらいだよ?」
「30分くらい」
「あ~。それじゃお前にはちょっとキツいよな。そんじゃその服俺が全部持っててやるから、さっさと行くぞ」
「え、いいの!?」
「いいって。どうせ暇してたし」
っという事でこの男だか女だかよく分からない子供を家まで送る事にした。
何の会話もなく歩くのもつまらないのか、子供と話しながら子供の家に向かう。
「え、お前アメリカ人だったの?」
「そうだよ。お兄さん僕の事かなり珍しそうにしてたけど、この町に居るって事は転生者なんだよね?そんなに僕珍しいかな?転生者の方が個性的だと思うけど」
「ま~……言われて見るとそうだな。ゲームのキャラクターかって言いたくなるような髪の色も少なくないし、今思うとそんなに珍しいわけでもないか」
「逆に珍しいのはお兄さんの方じゃない?転生者なのに黒髪黒目の普通の日本人。トーキョーとかじゃ普通だったけど、この町じゃあまり見ないよ」
「まぁそれに関してはどうしようもないと言うか、俺前世の自分の姿もよく覚えてないしな~」
「そうなの?」
「そうなんだよ。あと聞いてもいいか?」
「何?」
「お前男か?それとも女か?」
俺がそう聞くと子供は分かりやすくガーンっという表情をしながら怒った。
「酷いよお兄さん!!このゴスロリ服って言う女の子の服を着てればすぐに女の子だって分かると思ってたのに!!」
「あ、すまん。この町に来る前にピンクの甘ロリ服を着たおっさんとか見た事あるから、もしかしてそういう趣味なのかな~っと思って」
「それはそれでかなり貴重な体験じゃない?と言うか男の人も着るの?」
「そう言う趣味の人としか言いようがない。ちなみに俺はお断りだ」
「そうなんだ。こういうの来てる女の子はどう思う?」
「可愛いと思う」
「そっか……可愛いか……えへへ~」
そう言いながら表情を緩ませるが……やっぱり引っ掛かる。
この中性的な顔がダチの1人を思い出す。
でもあいつは女扱いすると怒ってたしな……やっぱ他人の空似か?
「ねぇお兄さん。お兄さんってご飯もう食べた?」
「いや、まだ食べてない」
「それじゃ僕の家で食べてってよ!料理できないから宅配になっちゃうけどさ」
「お、たまにはいいな。奢ってくれるの?」
「もちろん!ピザとハンバーガーどっちがいい?」
「……冗談半分で言ったが普通に俺の飯代くらい普通に出すぞ。子供に飯奢ってもらうって言うのはこう、なんか気が引ける」
「え~、気にしなくていいよ。僕お金はいっぱいあるからさ、それくらい大したお金じゃないよ」
「でも親御さんとか居るだろ?娘が知らない男と帰ってきたら心配するぞ」
「あ、そう言うのは大丈夫だよ。親居ないから」
「え」
「あ、着いたよ。ここが僕の家!」
親がいない事に驚いたが、子供改め嬢ちゃんの家にも驚いた。
俺がこの町に来てからずっと工事していた豪邸がこの嬢ちゃんの家だった。
何と言うか、アメリカにある豪邸をそのまま日本の持ってきたような感じで、家がデカいと言うだけではなくプールやでっかいガレージまでついているマジで豪邸。
日本人の庶民代表として言おう。
こんなでっかい家掃除するの大変じゃね?
「早く入って入って」
「お、おう」
嬢ちゃんに手を引っ張られ、家の中に入ったが……やっぱり広いな~。
どっかのテレビで見た有名人の家って感じで広くて明るい。
こんなでっかい家なのに1人暮らしってマジ?絶対嘘だろ。
「買ってきた服はそこら辺に置いておいて。あとで僕が持って行くから」
「そうか……本当にここお前1人で住んでるのか?本当に親居ないの?」
「いないよ~。まぁ一応親代わりの人はいるけど、名義だけだから全然かかわってないから親って思った事はないよ。もう自分でお金稼いでるし、あとは年齢制限だけが面倒なんだよね~」
「なぁお前今いくつだ?」
「12歳。ジャパンで言うと中学一年生だね。でももうお金は稼いでるよ」
「稼いでるって。まさかこの家自分の金で買ったなんて言わねぇよな?」
「そうだよ。そうじゃなきゃわざわざ僕の家なんて言わないよ」
こいつ、本当に何者だ。
12歳で自分の家を買うとか普通ありえねぇだろ。
「それにしてもやっぱり日本製は性能が良いね。省エネとかジャパン独自の言葉が少し難しかったけど、慣れればどうってことないや。飲み物はペプシでいいよね?」
「それは構わないが、マジか……」
嬢ちゃんの口から出てくる言葉はどれも自然と放たれている物で、嘘をついているようには全く見えない。
本当に自分の稼いだ金だけでこの家を買ったとか、何者なんだこいつ。
いや、本当はこの嬢ちゃんの正体に予想はついている。
俺の勘が正しければ間違いなくあいつだが、嬢ちゃんの格好や行動が俺の知っているあいつと全く違う。
どういうことだ?
「ほら座って座って。それにしてもジャパンは冷凍食品まで本当に美味しいんだね。アメリカじゃ本当に燃料補給と言うか、空腹を紛らわせるために食べてた感じだったからな~。いや~アメリカのご飯が美味しくないってのは本当だったよ」
「それは嬉しいが、マジでハンバーガーとピザしか食ってねぇの?」
「それはあくまでもアメリカでの話だよ。ジャパンの冷凍食品も美味しいから最近はチャーハンとかパスタとか、色々食べてる」
「なんか食生活偏ってそうだな。で、俺がここに居るのは偶然?それとも必然?」
「僕は必然だと嬉しいな~。なんとなくお兄さんとは特別な物を感じる。もしかして、これが恋!?」
ピザを電子レンジでチンしながら頬を手に当てて顔を横に振る嬢ちゃん。
でもその仕草は計算してやっているようで、やっぱり格好は違うがあいつなのかな~っとなんとなく思った。
「どうせ計算高くあっちこっちの監視カメラとか操作して俺の行動見てたんだろ。クロウ」
俺が確信を持って言うと嬢ちゃん、クロウは笑った。
「HAHAHA!!やっぱり相棒は相棒だね。久しぶり、相棒」
それはまだ来ていないとばっかり思っていた最後の俺の友達だった。




