みんなについて話してみた
その愛香さんに世界の平和よりも俺を選ぶと言われた夜。
愛香さんは俺の部屋に来てベルの事を不思議そうにあっちこっち見ていた。
「この子もアンノウンだなんてやっぱり信じられませんね」
「でもドラコがアンノウンだとするとここにいる俺と愛香さん以外は全員アンノウンなんだよな~」
愛香さんは俺とみんなの事を詳しく知りたいっという事で俺の部屋に集まっていた。
ぶっちゃけ奥さんの部屋の方が広くてよくない?っと思ったのだが、何故か狭くてもいいからという事で俺の部屋で話している。
「柊ぅ~助けてぇ」
「愛香さん。そろそろベルの事ひっくり返したりして見るの止めようか」
「あ、すみません。こんなかわいいアンノウンが実在するなんて知らなかったので」
「まぁ資料見る限りごっつい連中の方が圧倒的に多いしな。見た目普通かと思ったら擬態してるだけだったりするみたいだし」
「はい。前に集団型のアンノウンが発生した時、ウサギに似ているかと思っていたのですが、口の開き方が本当に怖かったです」
「グロ話は得意じゃないのでとりあえず話そうか。所で愛香さんの立場的には大丈夫なのか?」
「大丈夫とは言えませんが、だからと言って行動に制限をかけられるような事も出来ませんから。アンノウン退治は世界中で人で不足みたいなものなので、柊君の味方をするだけで制限は生まれませんから」
「それならいいんだけど……じゃあ改めてみんなの説明しようか」
「お願いします」
これから愛香さん似はみんなの事を改めて紹介する。
ベル、コッペリア、奥さん、ドラコの許可はもらっている。
そして愛香さんが身に付けている盗聴器からどっかの誰かさんに聞かれている事もみんなに話した。
だがみんなもバレても問題ないと言うのでここで改めてみんなと話し合いながら愛香さんに説明するつもりだ。
「とりあえず来た順でいいか。まずはベル。見た目はぬいぐるみだけど正体は夢魔らしい。本体は夢の世界にあるらしいけど、戦うときの姿とかは見たことない。基本的には今みたいに寝てて、ずっと力を溜めてるらしい」
「らしいって本当に力を溜めてるんですか?」
「らしいぞ。十分に力を溜めた状態なら瞬間火力はみんなの中でも1番強いらしい。前にも言ったが戦ってるときの事は見たことないからどんな風に強いのかは全く分からん」
「へ~。こんなに可愛いのに」
そう言いながら愛香さんはベルを抱きしめる。
ベルも俺以外の人間に抱きしめられるのは初めてだからか、俺との違いを確かめているらしい。
「次にコッペリア。コッペリアの正体はアンドロイド……でいいんだっけ?」
「この世界で例えるのであれば、フランケンシュタインの怪物の方が正しいわね」
「フランケンシュタインって、あの怪物を作った物語ですよね?でもコッペリアさんからアンデットのような気配は感じませんが……」
「初期の頃の私はそう変わらないわよ。人間の女の子を襲ってパーツ狩りもしていたし、人間の感覚を調べるために非人道的な実験もやってきたから。でも今は完全に機械の身体だからアンデットの気配がないのは当然ね」
「そ、それでアンドロイドですか。それじゃ前の戦いのときは……」
「どの戦いの時なのかは分からないけど、ドラコと遊んだ時の事ならあなた達が目に見えない速度でブースターを使用していただけよ」
「な、なるほど」
「お前そんなもんも装備してたのかよ」
「やろうと思えばロケットパンチでもお見舞いできるわよ。ま、自分のパーツを飛ばす技は美しくないからやらないし、それなら素直にレーザー系の武装を展開した方が効率的だもの」
なんて事のないように言うがお前マジでそんなロボットアニメでしか見ないような武装もってたのな。
あとで見せてもらおうかな。
「そんじゃ次に奥さん事レディ・マザー。元海の女神様だったらしい」
「女神様!?」
「そうよ愛香ちゃん。でも今はただの柊ちゃんのママだから~」
「俺の母親は今も1人だけだっての」
「で、でも何で女神様がアンノウンに……」
「それはね~、子供達に過保護杉って言われちゃって子供達に神の座を堕とされちゃったのよ~。だからフリーのママをしていたんだけど~、そうしたら世界の敵判定されちゃったわ~」
「ええと……」
「俺に助けを求めるな。俺だって過保護なだけで神の座を追われたとか理解できん。俺だって分かんない事を聞いても教えてくれない事があるんだよ」
その辺はプライバシーって事で深くは聞いていないが、やっぱり理解できない事はある。
「で、最後にドラコ。こっちに来たばっかりの時みたいにドラゴンだが……何故かめっちゃ子供だ」
「何故かってなんだ!ドラコは最強のドラゴンなんだぞ!!」
「その最強様が俺の背中に引っ付いている状況にどう理解しろって言うんだよ」
「ドラコは最強だから弱いシューはドラコが守る。シューはドラコのお世話する。これが自然の摂理」
「訳分からん」
「あはは……でも確かに改めてみると子供っぽいと言うよりは完全に子供ですよね。これはただ柊君に甘えているだけでは?」
「それならそれでいいんだが……とりあえず今いるメンバーはこれで全員。あと2人友達がいるんだが……あいつらもこの世界に来てるのか?」
俺はみんなに聞くがコッペリアと奥さんは首を横に振った。
ベルも寝たままだし何の情報もない感じだ。
だがドラコだけは元気に手を上げながら言う。
「ドラコはちらっと見たぞ!コンちゃんいた!!」
「え、コンの奴いたの?マジで?」
「マジで!」
「どこにいた?」
「えっとね、初めてこの世界に来たところ!」
そうなるとヨーロッパのどこかにコンがいる?
あのコンが俺を放っておいてどこかで暇つぶしするような性格ではないと思うが……
「ドラコ、それ本当なんでしょうね」
「本当だよ。でもね、お仕事があるからシューに会えなくて寂しいって言ってた」
「話もしてたのね。でもコンがシュウに会わずに優先している事って一体何かしら?」
「そうね~。コンちゃんの事だから柊ちゃんにとって大切な事だとは思うけれど……本当に意外ね~」
「えっと、そのコンさんと言う方はどのような方でしょうか?」
「あ、ごめんごめん。コンって言うのはまだここに来てない自称堕天使だ。簡単に説明するとヤンデレの両性人間なんだが……ヤンデレだからこの世界に来てたらいの一番に俺に会いに来ると思ってた奴だ。見た目は天使みたいなんだが天使の輪っかがない。輪っかがないのは堕天使の証拠だとかなんとか言ってたな」
「堕天使、ですか。私が前世の頃にいた世界だと大騒動になりますね。それとヤンデレ?」
「簡単に言うと俺の事を崇拝してる狂信者みたいな感じ。俺の事を神様扱いしてきてマジでやり辛かった。俺の言う事は全肯定で俺の命令だったら何でもやる、マジで俺が自殺しろと言ったら自殺するんじゃないかあいつ?」
「あり得る」
「しそうね~」
「絶対やるとドラコも思う」
満場一致。
やっぱりあいつ変わってるよね。
人間と言う雑魚い存在に絶対服従。
おそらく今は俺に会っていないから自分の考えだけで動いているだろうが、必ず俺のためになると思って行動している事だけは間違いない。
でもあいつ躊躇いが一切ないからな……そこだけが不安だ。
「で、でも強いんですよね?」
「ぶっちゃけどうなの?戦闘能力全く知らないんだけど」
「強いの基準にもよるけど、私達の中で最もバランスタイプって感じね。あいつが『完全』を体現してるって言えるわね」
「そうね~。コンちゃんは私の所の神話体系とは違うところ出身だから~、完全、完璧を求められたからこそでしょうね~」
「あいつは器用貧乏で特徴はシューへの異常な執着心なのだ。あれだけは怖い」
「え~っと」
「愛香さんごめん。コンの奴この中でも結構キャラ濃いんだよ。ヤンデレの絶対服従系ってだけでヤバさ伝わるだろ」
「う、うん。ちょっとその、近寄りがたい雰囲気があると言うか……」
「その反応がむしろ普通だから。あ、それからコンがやって来たとき用の対策だけどさ、コッペリアと奥さんに任せてもいい?」
「ま、仕方ないわね」
「は~い」
「えっとそれってどういう事でしょう?」
「あいつ基本的に身内以外に対して厳しいんだよ。表面じゃにこにこ笑って印象の良い中性系なんだけど、腹の中じゃ俺に害があるかないかばっかり考えてるから、俺と距離が近いとまず相手の事を徹底的に調べ上げて性格、精神構造、家族構成、友人関係などなど、ありとあらゆる情報を手に入れてファイリング。それが終わった後に俺に対して害を与えないと確信しないと絶対に信用しないから。これだけは俺の命令でも絶対にやるだろうから。で、害が1%でもあると判断したら何してくるかマジで分かんない」
「え、なんですかそれ。本当に怖いんですけど」
「それを軽減するためにもみんなの協力が必須なんだよ。最初っからこっちである程度情報を得てコンに愛香さんは仲間だーって言えるような環境にしておく方が安全なんだよ。いろんな意味で」
「分かりました。とにかくヤバい人だって言う事だけは分かりました」
「多分それで良し。さて、それじゃ今日は遅いしここまでにしておこうか。コッペリアと奥さんは愛香さんの送ってあげて」
「仕方ないわね~」
「これも寮母して、みんなのママとして当然よ~」
「それじゃ愛香さん。また明日」
「はい。今日はありがとうございました。また明日もお話ししに来て良いですか?」
「もちろん構わねぇよ。そんじゃまたみんなで集まって話するか」
「はい!よろしくお願いします」
なんだか最後に愛香さんはかなり嬉しそうにしていたな。
それにしてもコンか。
ヨーロッパで何してんだろ?




