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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【愛欲】の母神
20/80

奥さんちょっと暴走した

「さて、何して遊ぶ?」


 俺はそう2人に聞いた。

 海で遊ぶなんてかなり久しぶりなので何して遊ぶのか聞いておきたい。


「無難にビーチバレーでもしますか?もちろん全力は出しませんよ」

「それって海の中でも出来るのかしら?」

「出来ますよ。コッペリアさんってもしかして海で遊ぶの初めてですか?」

「初めてよ。だからこういうのには憧れてるの」

「そんじゃどっかからボール借りてくるか」


 っという感じでボールを借りて3人でしばらく遊ぶ。

 まぁ俺と愛香さんに関しては特に問題なかったのだが、ちょっとした問題としてコッペリアが浮上した。

 何が問題かと言うと、単純にコッペリアは水中で動くのに不慣れだった。

 それに安全なように浜に近いところで遊んでいたので海水だけではなく砂にも足を取られ、何度も転ぶ。

 でもコッペリアはそれに対して普通に笑ったりしながら少しずつ海の中でも普通に動けるようになっていく。


 それにしてもやっぱり2人は絵になるな。

 愛香さんもコッペリアも美人なのでただ海で遊んでいるだけでも華がある。


「みんな~、スイカ食べましょ~」


 それなりに遊んでいると奥さんから差し入れの声が聞こえた。

 海の中に足を入れていたから少し汗をかいている事に気が付くのが遅れていた。

 もしかしたら熱中症になっていたかもしれない。


「ちょっと休憩入れるか」

「そうですね」

「え~。もう少しくらい良いじゃない」

「奥さんの表情よく見てみろ。多分ストップしないと無理矢理止めに来るぞ」


 なんとなくだが奥さんから、いい加減帰ってこいみたいな雰囲気がする。


「……そうみたいね。もう少し遊びながら水中でも動けるようになりたかったのだけど、仕方ないわね」

「まぁこういうのは慣れがものを言うしな。それに海で食うスイカもうまいと思うぞ」

「スイカ割りはしないの?」

「明日のお楽しみか、個人的にやるしかなさそうだな」


 奥さんの足元にはすでに綺麗に切り分けられたスイカが並べられていた。

 スイカ割り用のスイカが残っているかどうか怪しい。

 でも美味いスイカに罪はない。

 1つとって食ってみると結構甘くて美味いじゃん。


「お~。当たりだ当たり。甘い甘い」

「よかったわ~。それじゃお塩要らない?」

「大丈夫でしょ」


 奥さんが塩を持って聞いてきたので素直に答える。

 それにしてもスイカを食べてみるとやっぱり身体は水分を欲していたことが分かる。

 遊んでいたからかどれくらい汗をかいていたのか自分で分からなくなってたんだろうな。

 なんて思っていると、ふと奥さんが俺の隣に座った。


「どうかした?」

「……柊ちゃん今楽しい?」

「そりゃもちろん。友達と遊んだり色々してるから」

「そう」


 …………何故かどことなく素っ気ない。


「え、何?本当に何かあった?」

「えっとね~……こういう時になんて聞けばいいのか分からないけど~、柊ちゃんは本当に今楽しく過ごせてるかな~って、確認したかったのよ~」

「なんだって急に……」

「まだ前世むかしの事を引きずってるからよ」


 そう言えばコッペリアが言ってたな。

 俺が死んだあと暴走したのが奥さんらしい。

 どんな風に暴走したのか知らないし、知る必要もないかもしれないけど。


「たとえ柊ちゃんから見て本当のマザーじゃなくても、私にとって柊ちゃんは子供。可愛い可愛い、素直で優しい子供。だからあなたを失った時は目の前が真っ暗になって、自分自身を見失ってしまった。それだけあなたの事が大切なんだけど……またウザがられたり嫌われたりしないか怖いのよ。マザーとして情けないかもしれないけど」

「…………じゃ、きつめの事言ってもいい?」


 俺がそう確認を取りながら食べ終わったスイカを置くと、奥さんは少し怯えた表情をしながら頷いた。


「前に俺が言ったように俺とマザーはやっぱり他人だ。どれだけ愛情を向けられたとしても、やっぱり他人で俺の母親は1人しかいない」


 そうはっきりと言うと分かりやすいくらい落ち込む。

 自分で言っておいてあれだが、まぁここまで大人が分かりやすく落ち込むともの凄く悪い事をした気になる。

 何故か俺達の事を遠くから見守っている連中も奥さんに何言ってやがる。みたいな雰囲気がある。

 コッペリアに関しては何と受け答えするのか真面目に見守っていた。


「でも友達なら別にいいだろ。友達になるのに年齢は関係ないだろうからな」

「友達……」

「前世からの友達なんて今のところ3人しかいないからな。これ以上の特別な関係なんて今のところないだろ。家族以上の関係ってのが難しいのは何となく分かるが、俺はお前らが俺の事会いに来てくれて本当に嬉しかったぞ。だから俺達は両思いなんだ~って分かってよかったよ。普通死別したらそれっきりだろ。天国か地獄で会えるとも限らないし、こうして転生先にまで来て会いに来てくれたのは本当の意味で両思いじゃないとできない事だと思う。その関係はある意味家族以上なんじゃないか?俺はそう思ってる」

「柊ちゃん……」

「だからまぁ、あれだ。奥さんが家族、特に母と子供っていう関係にこだわっているのは分かったけど、関係はそれだけなわけじゃないから。前に言ったように俺にとって奥さん、レディは1人の女性として特別なんだからあまり気負い過ぎるな」


 俺なりにできるだけ俺の感情をぶつけたつもりだが……上手く伝えられているだろうか。

 なんて心配していると――


「柊ちゃん!!」

「ぬお!?」


 なんて思っていると奥さんから突然押し倒された。

 え、何事!?っと思っていると貸していたシャツを脱いで水着姿に戻る。バカデカい胸が激し揺れる。

 そして俺の両腕を掴みながら俺を見る奥さんのギラギラした瞳がまっすぐ向かっている事が分かった。

 それは前に見た物と似ているが、なんというか……マジで食われそうな気がするんだが!!

 物理的な意味でムシャムシャされそうな気がするのですが!!


「柊ちゃん。そんな嬉しい事を言っちゃダメよ。私の中の“女”の部分が本気で起きちゃった。ふふ、本気で取りにいこうかしら」

「奥さん!ちょっとマジで起きて!!なんかヤバい感じがするんですけど!?」

「ある意味間違ってないわ。本気の女は好意を持った“男”に対して決して逃がさないように確実に近づいて、射止しとめる。それも女としての本能」

「奥さん!!ちょっとストップ!!マジでストップ!!ヘループ!!誰か助けてー!!」


 俺がそう叫ぶと誰かが俺の腕を掴んで引きずり出してくれた。


「助かった!誰だか分かんないけどマジで助かった!」

「私ですよ!助けるのが遅れてすみません!」


 そう言って助けてくれたのは愛香さんだった。

 奥さんはどうなっているのかと見てみると、寮母先輩に羽交い絞めにされている。

 その瞳はまだギラギラしており、よくあの体格差で動きを止める事が出来るもんだ。


「それにしても何で奥さんいきなりあんな状態になってんの?」

「…………えぇ~」

「あははははは!!シュウってばあれだけ情熱的な事を言っておきながら無自覚ってっ!!本物の天然たらしってこういう感じなんだ!!……私もその中の1人だけど」

「何の事だよ。俺が死んだあと追っかけてくれた友達だぞ。特別視したっていいじゃん」

「それでも言い方ってものがあるでしょ。みんな顔を真っ赤にして聞いてたわよ。1人の女性として特別なんて言われば、ああなるわよ」

「そうか?俺童貞だからよく分かんない」


 マジで分かんない。

 だって死んだ後も本当に追いかけてきてくれる人がいるなんて普通は思わないでしょ。ありえないでしょ。

 そのあり得ないを実行して、実現させた友達。

 特別視したっていいじゃない。


「普通の人間にとって死んだ後もまた本当に会える友達はかなり特別って思うのはそんなに変かな?」

「変ではありませんが、その、素直に伝え過ぎたんじゃありませんか?聞いてるこっちが驚きましたよ。柊さんがあんな事を言うなんて」


 愛香さんはどこか羨ましそうに奥さんとコッペリアの事を見る。

 何が羨ましいのか分かんないぞ。

 今の奥さん、マジで獣みたいになってるし。

 俺と言う獲物に向かってまっすぐ進む飢えた獣。寮母先輩が羽交い絞めにして止めているが、体格差と純粋なパワーの差でもうすぐ破られそうだ。


「これもしかして逃げた方が良い?」

「むしろそこにいてください。守りにくくなるので」


 愛香さんが自分専用の武器、転生前に使っていたと言う聖剣を出しながら構えた。


「え!武器出しちゃうの!?」

「もちろん殺すつもりでやるつもりではありませんが、天音先輩が本気で羽交い絞めしているのに力尽くで振り払おうとしている。いえ、もうすぐ振り払われる。これは本気出さないといけないかも」


 そう思っていると奥さんがマジで寮母先輩の拘束を力尽くで振り払って俺に向かってまっすぐ走ってきた!!


「失礼します!!」


 愛香さんが聖剣からでっかいビームみたいなのを発射させて奥さんを海の方に吹き飛ばした。

 大丈夫かと思っていると、奥さんはなんて事のないように海から歩いて上がってきて、再び俺に向かって走ってきた。


「全員!迎撃態勢!!」

「え、迎撃!?」


 迎撃するの!?っと思っていると奥さんは他の生徒達の攻撃を拳や蹴りではじき返す。

 え、そんなこと出来たの!?


「全員本気出して!寮母さん思っていた以上に強いよ!!」


 寮母先輩が声をあげながらみんなに指示をする。

 あ、これちょっとした戦争と変わらなそうだ。

 俺は防御が得意だというみんなの後ろに隠れながらみんなの事を見守るのだった。

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