表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/145

第77話 逆行系の二次創作はどこまで原作を外れてよいのだろうか

逆行系のセンスって、いわゆる「乙女ゲー転生悪役令嬢系」に通じるものがあると思います。 (唐突な主張)


今回は解説多め。

 女神アルカパは、未亜とフィリスの両名に向かってこう告げた。


「2人とも、たぶん、色々とわたしに訊きたいことがあるんだよね。いいよ。こっちの仕事もひと段落したし、全部答えるから。……何から話せばいいかな」


 

 この時。

 別の場所で別の者が、ほぼ同様の内容を口にしていた。


「少年もさ、いろいろとオジサンに訊きたいことがあるでしょ。時間ならたっぷりあるし、大サービスだ。全部答えようじゃない、全部」


 黒獣の内部。

 未来の己からの言葉に対し、伊城木芳人はいくつもの疑問をぶつけていった――。






 * *





 

 ――そもそも貴方は何がしたいのか。


「要するに新規ルートの開拓だよ。オジサンは《泡》に勝てたけど、人類、滅びちゃったしねえ。だーれも死なないベストエンドがあるんじゃないかって思うわけ」


 ――過去を変えれば未来にも影響するのでは?


「ああ、それなら大丈夫。SFでパラレルワールドってあるでしょ、あんな感じ。オジサンが干渉した時点でココは別ルートになってるから無問題(モーマンタイ)。新しい時間軸というか、世界線というか。どうでもいいけど『〇teins;Gate』がアニメになってからは一気に“世界線”ってフレーズが主流になったんだよねえ」


 ――“ベストエンド”とやらを探すためにどんなことをしたのか。


「少年が《三世因果》を使うまでは時空の壁も厚かったし、まー、言うほど大したことはしてないんだよ。うまいこと過去(そっち)に送れたのは眷属神を一柱と、力の欠片くらいかね」


 ――その眷属神とは?


「アルカパちゃんって分かる? そうそう、あの胸部装甲が超衝撃吸収型(ポヨンポヨン)のゆるふわ系。でもアレ、本来とは別モノだから。元々は愉悦系つーか黒幕系つーか、とにかく性格がすっごい悪いんだよね。クトゥル〇神話に出てくる、ポトフっぽい神様みたいな? ぶっちゃけオジサンの人生を狂わせたのもアルカパだし。だからこっちの眷属神で“上書き”したわけ」


 ――ならアルカパの“中の人”は俺の知り合い、と。


「それはちょっと言えないんだよ、申し訳ない。ほら、オカルトでよく『真の名前は隠すもの』って考え方があるでしょ。うっかり真名を知られたら呪われたり操られたり、あんな感じ。正体がバレたら“上書き”が解除されちゃうし、この土壇場でアルカパちゃんが敵に回ったらキツくない?」


 ――わかった、じゃあ質問を変える。アルカパを過去(こっち)に送った目的は?


「ルート調節・フラグ立て・フラグ折り、かね」


 ――やべえ抽象的過ぎてよく分かんねえ。


「少年にはベストエンドに行ってほしいんだけど、オジサンの辿ったルートから外れすぎても手綱が取れない。そのへんを上手いこと制御しながら破滅フラグを潰す……ってのがアルカパちゃんの仕事だねえ」


 ――ああ、二次創作の逆行モノみたいな?


「そうそう、それそれ。原作をなぞりながら鬱展開の芽を先に刈り取っちゃう感じ」


 ――具体的にはどんなことを?


「うーん、割とややこしい説明になるんけど……まずはオジサンのルートを知っておいてもらおうかね。といっても、途中まではほとんど一緒なんだよ。小学四年生の時にヤンデレ(伊城木直樹)から《精神操作》を食らって記憶が欠けたり、高校三年生の時に神薙真姫奈と再会したり、その後また憎いあんちくしょう(伊城木直樹)にココロを弄られてトラックに轢かれたり――で、異世界に勇者としてワープ。ひたすら戦いまくった末、最後はダンジョンの崩落に巻き込まれてジ・エンド。

 ただこっちの場合、アルカパがとんでもないクソ女神だったんだよね。アレが性悪を発揮しまくって、オジサンを“伊城木直樹の息子(YSTω―101)”に転生させてくれやがったわけ」


 ――じゃあ俺が“伊城木芳人”の肉体に転生したのは……


「うちのアルカパちゃんの仕込み。そうしないと既知のルートから大きく外れちゃうし、早いうちに(クレイジー)(サイコ)(ホモ)(ナオキ)の件を片付けたかったんだよ。《泡》の襲来にも関わってるし」


 ――マジかよあのオヤジほんとにロクなことしねえな。


「伊城木月って子いるでしょ。ほら、伊城木直樹の義妹の。たぶん知らないと思うけど少年にとっては従妹だから。ま、それはともかくオジサンのルートだと、彼女、色々とあって心が壊れちゃったんだよ。で、そのせいで妙なところに“繋がった”わけだ。具体的には《泡》のいる別次元」


 ――月さんが従妹だって? いや、それもそれで驚きなんだが、20年前とか30年前の時点でオヤジを殺しておけば全部丸く収まったんじゃないのか?


「オジサンもそう思う。けどアルカパちゃんもあんまり強く現世には干渉できないし、後で話すけど伊城木月に関しては予想外のことが結構あったんだよね」



 



 * *





「予想外のことは結構あったけど、基本的な方針はずっと変わってないよ。未来の芳人くんが辿った道を再現しながら、けれど《泡》との戦いで足を引っ張りそうな因子を早めに解決させる――それがわたしの役割なの」


 と、アルカパは2人に語って聞かせる。

 ここまでフィリスはジッと考え込んだまま沈黙を保っており、質問はほとんど未亜が行っていた。


 ――足を引っ張る因子って、たとえば。


「まずは未亜ちゃんの転生先かな。()()()だと吉良沢家じゃなくって、ヨーロッパの小国の王室だったの。前世の記憶もあいまいで、だから魔法の腕もすごくなまってて、その……」


 ――呆気なく《泡》に殺された?


「ごめんね、嫌な話をして」


 ――ううん、教えてくれてよかったよ。あたしが前世のことをはっきり覚えてるのはアルカパさんのおかげなんだね。ありがと。


 ぺこり、と頭を下げる未亜。

 そこでひとまず会話が途切れ――


「とりあえずここまでの話を整理しましょうか」


 しばらくの後、フィリスがおもむろに口を開いた


「未来では《泡》とやらのせいで人類は滅亡していて、ヨシトも頭のおかしな神様になってしまった。そうならない可能性を探すためにアルカパが派遣されたのよね。色々と介入しながら今日まで頑張ってきたけど、私たちの時間軸のヨシトは《時間術式》を暴走させてさあ大変、身体を神様に乗っ取られてしまった、と」


「うん、フィリスさんの言う通りだよ」


 頷くアルカパ。


「こうなったのはわたしの失敗でもあるけど、ただ……」

「妨害というか暗躍というか、とにかく伊城木月が動いていたのでしょう? いったい彼女は何者なの?」




次回、月さんの正体が明らかに。

あと活動報告とか「覚書 (http://book1.adouzi.eu.org/n5413do/)」 で設定・伏線の整理やってます。

ネタバレ注意ですがよければどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ