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第20話 ファイアボールとホーンラビットの登場率は異常

 ――巫女装束の少女が、日本刀を構えている。


 神薙(かみなぎ)玲於奈(れおな)

 その双眸(そうぼう)は切れ長で、まっすぐこちらを見据えている。

 鳩羽(はとば)さんの話じゃ、たしか静玖(しずく)と同い年だっけな。

 つまりは14歳。

 

 ……いやー、人間って千差万別だ。


 戦闘中にこんなことを考えるのも何だが、思いついたからには説明しておこう。

 玲於奈の顔立ちは凛々しく、静謐(せいひつ)な雰囲気を漂わせている。

 そして彼女の体形もまた、それを裏切らない清純派なものだった。


 嘆きの壁というか。

 流線形ならぬ直線形というか。


 静玖と並べればその差は一目瞭然だろう。

 あっちは頭と性癖が残念なぶん、スタイルはやたらめったら恵まれている。


「いま、とっても失礼なことを考えてましたね」


 なぜ分かった。


「男性のチラ見は、女性のガン見です。……そもそも胸など飾りに過ぎません、大きければ大きいほど戦場(いくさば)においては邪魔なだけ。わたしの身体は、剣士として理想的な進化を遂げているのです」

「お、おう……」


 妙に気迫のこもった玲於奈の言葉に、俺はかるく圧倒されていた。

 

「まあそもそも、わたしは女である前に剣士です。胸のことなど気にしてはいません。気にしてはいませんが――やっぱり何かムカつくのでそれはそれとして死にやがってくださいこのセクハラ幼稚園児」


 瞬間。

 玲於奈の姿がかき消える。

 おそらくは《隠形(おんぎょう)》と何らかの技術を組み合わせた移動手段。

 コンマ1秒と経たずに接近されていた。


「――その首、貰い受けます」


 宣言とともに玲於奈は、()()()()()()()に向けて刺突を繰り出す。

 さっきの騙し討ちといい、つくづく奇襲が好きなタイプらしい。

 とはいえ、こっちは前世でさんざん修羅場を潜ってきた身分だ。

 この程度は予測できるし、俺はとっくにフィリスを庇うような立ち位置に移動している。


 接近してくる玲於奈の胸にソッと手を当て、術式を発動させる。


「《火炎術式(フレイミィ)》・《我が炎は(バーニング)浄華灼滅の(・パイル)鉄槌である(バンカー)》」


 衝撃が突き抜ける。

 神薙玲於奈の身体は弾き飛ばされ、岩壁に激突した。

 胸の中心には大きな風穴が空いており、ガクリと項垂(うなだ)れたまま動かない。

 ――《我が炎は浄華灼滅の鉄槌である》。

 ゼロ距離で放たれた炎の「杭」が、彼女の心臓を打ち抜き、灰へと変えていた。

 間違いなく、即死だろう。


「……ヨシト、私の出番がなかったのだけれど」


 フィリスはちょっと拗ねたように呟く。


「これはもう、ヘルベルトへの制裁を2倍増しにするしかないわね」


 2倍じゃなく、2倍増し。

 つまり「1+2=3」で合計3倍。

 南無三としか言いようがない、3倍だけに。


 ともあれ。


「フィリスは先に行って、真月さんを確保しておいてくれ」

「ヨシトは来ないの?」

「実は神薙玲於奈みたいな顔がタイプなんだ。もうちょっと鑑賞したら後を追いかけるよ」

「あら、デート中に堂々と浮気するなんてひどい人」


 クスクスと笑うフィリス。


「それじゃあ私はヘルベルトをボコボコにしておくから、あんまり火遊びしないようにね」




 * *




 さっき俺は神薙玲於奈にパイルバンカーっぽい魔法をかましたわけだが、その時あくまで必要にかられてのことなんだが、彼女の胸にタッチしている。

 ふにゅっとしていて、わずかな膨らみを確認できた。


 これが何を意味するか分かるかね、諸君?


 神薙玲於奈は絶壁ではない。

 小数点以下のサイズだが、たしかに起伏が存在しているのだ。

 これは人類にとっては小さな発見だろうが、俺にとっては大きな発見だ。

 今の感動を俳句にしたためてみようと思う。


 ――おっぱいは 触れてみないと わからない


 え? 季語? 

 おっぱいは森羅万象を包括しているのでオールオーケー、以上、QED。


 ふっ、また下らないことを証明しちまったぜ。

 ほんとに下らないな。


 ところで俺がここに残ったのは、こんなエロモノローグ――略してエロローグを披露するためでは、ない。

 フィリスも十分に離れたし、そろそろいいだろう。


「《火炎術式(フレイミィ)》・《我が炎は(フツウノ)浄華灼滅の車輪である(ファイアボール)》」


 俺は右手から火炎の玉を放つ。

 おそらくファンタジー系ラノベで最もよく出てくるであろう魔法、何の変哲もないファイアボールだ。

 分裂もしないし爆発もしない。

 シンプルイズベスト。

 さっき《時間術式》を使いまくったことを考えると、そろそろ魔力を節約していきたい。


 悲しいくらいに無個性なファイアボールは、猛烈な勢いで飛んでいく。

 神薙玲於奈の死体とは反対側、何もない空間へと向かい――


「《解呪(ディスペル)》」

 

 魔力の籠った言葉が響く。

 すると、ごく平凡なファイアボールは特に見せ場もないままサァッと消滅した。

 

「意外な展開にびっくりなのです」


 ふと、小柄な人影が現れる。

 ちょうどファイアボールが消えた場所だ。

 漆黒のローブで身体を包み、顔をピエロの仮面で隠している。

 黒くて、仮面の、怪しいヤツ。

 外で鳩羽(はとば)たちを襲った魔導師だろう。

 

「いつから気付いてたのです?」


 魔導師は、どこかイントネーションのおかしな日本語で問いかけてくる。 

 声からすると女の子、しかもかなり幼い。


 答えは「最初から気付いていた」だ。

 こいつはずっと、姿を隠してここに潜んでいた。

 俺たちが神薙玲於奈と接触した時からずっと、姿を隠して不意打ちの機会を窺っていた。


 それが分かっていたからこそ、フィリスを先に向かわせたのだ。

 いま一番重要なのは、ヘルベルトの儀式を止めて真月(まつき)綾乃(あやの)を助けることだしな。


 もちろんこれを魔導師に説明してやる義理はない。

 俺は返答の代わりに術式を発動させた。


「《多重詠唱(マルチタスク)》・《拘束術式(バインドリィ)》・《汝の手足は(ロープデ)汝のものならず(シバルヨ)》」

「《多重詠唱(マルチタスク)》 ・《(オコトワリ )(スルノデスヨ)》」


 合計二十八本、光のロープが魔導師へ襲い掛かるものの、あっというまに無効化される。

 どうやらこの魔導師、なかなかの実力者らしい。

 

「緊縛趣味だなんて、最近の幼児は恐ろしいのです」

「待て、それは誤解だ」

「否定するところがかえって怪しいのですが、アリアは大人なのでスルーしてあげるのです」


 大人?

 どこか舌っ足らずな喋り方だし、背もかなり低い。150㎝もないだろう。

 正直なところ小学生くらいにしか見えないんだが……まあ、仮面の下はオバさんかもしれないよな。

 

「フィリスイリスが来た以上、ヘルベルトの計画は失敗なのです。とはいえフリーランスの退魔師は潰せましたので、あとは神薙玲於奈を回収できれば大満足なのですよ」

「つまり彼女の死体を引き渡せ、と」

「いえす、なのです。今ならそれだけで正面衝突は避けられるのです。ぶつかればお互い無事では済まないと思うので、ここは交渉に応じてくれると感謝感激石礫(いしつぶて)なのですよ」


 そこは感謝感激雨霰(あめあられ)だろう。

 石を投げてどうする、石を。

 そこまでの感謝も感激も台無しだろうに。

 

 ともあれ。

 相手の条件に応じるか、応じないか。

 俺は思案するフリをしつつ、【鑑定】を発動させた。

 相手が視界に入ってないと効かないんだよな、このスキル。

 だから今の今までステータスを覗くことができなかった。


 さて、どれくらいの強さだろう。


 


 [名前] アリア・エル・サマリア

 [性別] 女

 [種族] 人造魔導師

 [年齢] 不明

 [称号] 不明 

 [能力値]

  レベル50-200

   攻撃力  50-300

   防御力  50-300

   生命力  50-300

   魔力   100-600

   精神力  10-150

   敏捷性  50-300

 [アビリティ] いっぱいある

 [スキル] すごいたくさん

 ※この子、よくわかんない! \(>o<)/  (byアルカパ)



 なんだこれ。

 アルカパ様がお手上げになっている件について。

 何も分かってないのと同じじゃないか、コレ。


 ああ、でも名前が判明したのは大きいな。

 アリア・エル・サマリア。

 聞いたことがある。

 オヤジの愛人だ。

 とある魔術結社によって生み出された「人類最高の魔導士の試作品(プロトタイプ)」だったっけ。


「いま、アリアをスキャンしたのです?」


 まさか【鑑定】に気付いたのだろうか。


「目には目薬、歯には歯磨き粉、覗きにはストーキングという言葉もあるのです。――《解析(アナライズ)》」


 こちらが対抗術式を組むより、相手のほうが早かった。

 全身を(さす)られるような感覚が通り過ぎ、そして。


「……えっ?」


 アリアが、やけに間の抜けた声を発した。

 虚空を見つめてフリーズしている。

 もしかするとそこにステータス画面みたいなものが表示されているのかもしれない。


伊城木(いしろぎ)芳人(よしと)? ナオキの、子供? うそ、うそ、うそ――」


 何が起こっているのだろう。

 アリアは頭を抱えて苦しみ始める。

 黒いローブが脱げ、仮面がカランと地面に落ちた。

 露わになった顔は、かなり幼い。

 さすがに俺や未亜ほどじゃないが、小学校低学年くらいに見える。


 うわー。

 この子が愛人ってことは、オヤジ、ロリも食っちまうヤツなのか。

 故人を貶すのは好きじゃないが、正直、地獄に落ちるべきだと思う。

 もし万が一生きていたら、この手で引導を渡してやろう。


「ナオキに子供なんていない、いない、いるはずない。認めない、認めない認めない認めない――」


 譫言(うわごと)のように繰り返し呟くアリア。

 それとともに爆発的な魔力が渦巻き、ついに、


「……コロス」


 とんでもない結論に辿り着いた。

 最近の化物って怖い。

 







 ……幼い容貌に反し、アリア・エル・サマリアの戦い方はとても荒々しいものだった。


「ァァァァァァァァァ――――アアアアアアアアアアアアアアッ!」


 魔力で何十倍にも強化した手足を、ただ本能のままに叩きつける。

 そこに理性はまったく感じられない。

 前世で言うなら、【狂化(バーサーク)】を発動させた竜種と戦っているような気分だ。

 

 仮に紙一重で躱したとしても、その拳に伴う豪風で姿勢を崩される。

 となると大げさな回避行動を取るほかなく、反撃の糸口が掴めない……わけじゃない。

 被害上等、突撃だ。

 こちらも魔法で身体能力を底上げし、ダメージを受けた傍から《時間術式(クロックリィ)》で打ち消していく。

 真正面からの激突。

 体格ではアリアが勝っているものの、徐々に俺のほうが押していた。おそらく戦闘経験の差だろう。


「……ッ!?」


 やがて、決定的な隙が訪れる。

 アリアが乱暴に振り下ろしてきた腕をいなし、そのまま、懐に潜り込んだ。

我が炎は(バーニング)浄華灼滅の(・パイル)鉄槌である(バンカー)》で、決定打を与えるつもりだった。


 そこに。


「――わたし、寝起きって機嫌が悪いんですよね。ちょっと八つ当たりさせてください」


 想定外の乱入者が現れた。

 紅白の巫女服。

 涼やかな容貌。

 さっき殺したはずの、神薙玲於奈だ。

 胸の大穴も、いつの間にやら塞がっている。


 驚いている暇はなかった。

 ヒウンと空気を切り裂き、白刃が迫っていたからだ。

 地面を転がるようにして斬撃を避ける。


「この身体は剣士として適切な進化を遂げている。そう言ったでしょう」


 淡々と呟きながら、次々に剣を振るう玲於奈。


「幼いころに真姫奈(まきな)姉さんから怪しい術を施されまして。おかげでちょっと死ににくいんです」


 いや、心臓を焼き尽くされても蘇生するとか「死ににくい」の次元を超えちゃいないか?

 そして真姫奈(まきな)といえば、神薙真姫奈(まきな)のことだろうか。

 本当にオヤジとその関係者はロクなことをしないな。


「それにしても先程の一撃は感動しました。わたしみたいな美少女を容赦なく殺しにかかるなんて、もしかして修羅の国の住人ですか? ふつう、ちょっとは躊躇するものでしょう」


 自分で美少女と申告するなんて、玲於奈もけっこういい性格をしている。


「……あのすいません、相槌くらいは打ってくれると嬉しいのですが」

「はーい!」


 意味もなく元気に答えてみた。

 俺はいま玲於奈の斬撃だけでなく、並行してアリアの攻撃も(さば)いている。

 わりと忙しいのだ。

 例えるならネトゲの回復職みたいなもので、先の先まで考えて行動しないと詰んでしまう。


「ッ!?」


 突如として俺が大声をあげたことに驚き、アリアの動きが鈍った。

 チャンス。

 一気に距離を詰め、至近距離からの風魔法で遠くに吹き飛ばす。


「会話まで武器にするなんて……」


 ほう、と感嘆のため息をつく玲於奈。


「貴方、本当に子供ですか? 人生二周目でも驚きませんよ」


 玲於奈くん、正解。

 正解者に拍手。

 昔、平成教育委員会って番組があったよな。

 年号が変わったら、やっぱりそれに合わせて番組名を変えるつもりだったんだろうか。

 

 つうかさ。

 戦闘中だってのに雑念が多いよな、俺。

 前世じゃ小学校の通知簿に「落ち着きのない子」って書かれたっけ。


「……ところで、つかぬことをお伺いしますが」


 玲於奈も玲於奈で、殺し合いをしてるってのに口数が多い。

 そのうち舌を噛むぞ、舌を。


「私みたいな顔がタイプというのは、本当ですか」


 は?

 思いがけない言葉に、戸惑ってしまう。

 そういや俺、ここに残る時にそんなジョークを口走ったっけ。

 まさか聞かれていたとは思わなかった。


「今日はじめて人間を斬ったのですが、まったく楽しいとは思えませんでした。真姫奈(まきな)姉さんは嘘つきです。……それよりも貴方と戦っているほうが面白い。ええ、つまり私にとっては貴方がタイプということなのでしょう」


 ポッと頬を染める玲於奈。

 なんだかヤバいフラグを立ててしまった気がするのは俺だけだろうか。

 そんなうすら寒い予感を感じたのと、


「――――シャァァァァァァァァァッ!」


 背後から凶悪な殺気が迫ってきたのは同時だった。

 風魔法で弾き飛ばされたアリアが、態勢を立て直して飛び掛かってきたのだ。


 計算通り。


 今のアリアは理性を失った怪物だ。

 このままヒラリと回避すれば、玲於奈との同士討ちに持ち込めるだろう。

 そのスキに二人まとめて倒す。

 俺としてはそういう予定だった。

 その、刹那。


 ――最悪のタイミングで、洞窟が揺れた。


 遠くで爆発めいた音が響いたかと思うと、足元が激しくグラついた。

 その地震はかなり大きく、とても立ってはいられない。


「うわっ!?」

 

 おかげで俺は横に逃げることができなかった。

 姿勢を崩し、前のめりに転んでしまい――


「きゃっ!?」


 結果、玲於奈を押し倒す形になった。

 その頭上を、アリアが砲弾のような速度で通り過ぎていく。


「…………庇ってくれたの、ですか?」


 玲於奈が呟く。

 いいえ、ただの偶然です。

 と言いたいところなんだが、なんだかやたらキラキラした視線を向けられてるせいで真実を告げられない。


 ええと、よし。

 とりあえず俺は立ち上がる。

 ついでに玲於奈に手を差し伸べた。

 過程はともかくとして、いまの彼女には歩み寄りの余地があるように思える。

 だったら不必要に敵を増やすこともないだろう。

 というか裏表なく懐かれると弱いんだよ、俺。


「あ、ありがとう、ございます……」


 照れくさげに俯きながら身を起こす玲於奈。

 我ながらズブズブと泥沼に沈んでいるような気がする。

 

 他方、アリアはかなり間抜けな状態だった。

 俺への突進が外れた結果、勢い余って岩壁にドン。

 そのまま上半身がメリ込んでしまっている。

 スカートもめくれ返り、くまさんパンツが丸見えだった。


「……私のも見ます?」


 ちょっとだけ袴の裾を持ち上げる玲於奈。

 すごく興味があるけど後にしてください。



 * *



 ともあれアリアを無力化するか。

 四肢の神経遮断、それから魔法の封印でいいだろう。


 俺が術式を組み上げていると、しかし、突如として見慣れない魔法陣が浮かぶ。

 数は二つ。

 気絶しているアリアと、ぽけーっと俺を眺めている玲於奈の足元だ。


「……どうやら撤退せよ、ということみたいですね」


 玲於奈が名残惜しそうに呟く。


「姉さんについていても面白いことはなさそうですし、適当なところで裏切ろうと思います。近いうちにお邪魔しますので、よければ()り友からお願いします」


 えらい物騒な関係からスタートだなおい。

 というか、まず警察に行くべきだろう。

 二十人も殺してるわけだし。

 それとも退魔師の業界には、業界なりのルールがあるのだろうか。

 あとで静玖に訊いておこう。


「たぶんあと十五秒くらいで転移するでしょうし、時間のかぎり内情を暴露しておきましょうか」

「……ありがたい話なんだが、いいのか、それ」

真姫奈(まきな)姉さんは『人間を斬るととっても気持ちいい』と言いましたが、まったくそんなことはありませんでした。騙されました。親代わりに育ててもらった恩はありますが、今回の件で堪忍袋もプッツンです」


 なんだか玲於奈の家庭環境、わりとロクでもなさそうだな。

 

「ヘルベルトを日本に誘導したのも、真月綾乃の誘拐に便乗してフリーランスを集めたのも真姫奈姉さんの計画です。目的はよく分かりませんが、日本国内の有力な退魔師を潰したかったのは確かと思います。あとは……そうそう、真姫奈(まきな)姉さんは伊城木(いしろぎ)直樹(なおき)とかいうエロ中年に夢中ですが、私は毒牙にかかっていないので安心してください。ちゃんと処女です」


 最後の処女アピールは必要だったんだろうか。

 いや、それより。


「オヤジは、伊城木直樹は生きてるのか?」

「飛行機事故で死んだと聞いていますが……また分かったらお教えします。そのときはご褒美として3回くらい殺し合ってくれると嬉しいです」

「いや、人間って一度死んだら終わりだからな」

「大丈夫ですよ。私は死ににくい身体ですし、貴方も似たようなものでしょう」


 まあ、間違っちゃいない。

 魔力さえあれば《時間術式》でいくらでも再生できる。

 

 それから数秒ほどして、玲於奈の姿はどこかへとかき消えてしまう。

 アリアもだ。


 このとき使われた転移魔法はまったく未知のもので、俺には解析することはできなかった……が、指をくわえて見逃すのも悔しいところ。アリアには幾つか「トロイの木馬」的な呪いを密かに掛けさせてもらった。次に戦うときはもっと楽に終わるだろう。


 プラスアルファ。


「――《充填術式(チャージ)》・《付与(アンド)》・《時間術式(クロックリィ)》・《汝らの(コレハ黒幕ヘノ)血肉は(嫌ガラセナンダカラ)逆巻きに(勘違イシナイデ)流れる(ヨネッ)》」


 残る魔力を振り絞り、ここで斃れた二十名を強制的に蘇生させた。

 さすがの俺もギリギリだ。

 ふとすると意識が薄れそうになる。

 とはいえフィリスを放っておくわけにはいかない。

 蘇った連中には《催眠術式(ヒュプノリィ)》をかけて出口に向かわせ、俺は洞窟の奥へと進んだ。

 


 


芳人くんがファイアボールに対して複雑な感情を抱いているのはこういう理由です。


 ファイアボール = いろんな小説に出る魔法

         = 人気者で知名度抜群

         = つまりリア充

          → ぶっころしてやる!



 今回は長いので3分割して話数を稼ごうと思いましたが、やっぱりやめました。

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