第5回:『あらすじ』
第5回:『あらすじ』
さて、第5回を始めていきたいと思います。
まず最初に確認させていただきますが、ここを読んでいる時点で、小説家を目指す皆様のお手元には『ストーリー』と『プロット』はございますか。
もし、万が一、お持ちで無い場合は、前回分までをお読み直しいただき、上記2点を入手された後、こちらまでお持ちください。
はっきり言います。『ストーリー』も『プロット』も無いのに、『あらすじ』は書けません。それでは、まじめに『ストーリー』と『プロット』を用意してきてくれた皆様、本題に入りましょう。
1.『あらすじ』とは
『あらすじ』とは、その物語の概略、概要などと言われますが、粗い筋、くらいで大丈夫です。
「身も蓋もない」とか言わないでください。実際、そういうものなんですから。
もう少し正確に言いますと、物語の冒頭から最後までの範囲から『セールスポイント』や『注目してほしい部分』を『ネタバレ』にならない程度に作者自身が抜き出して書く文章のことです。
書こうとしている作品を簡略化することで、物語の『因果関係』を把握することが目的です。
ファンタジー小説1本分くらいの文章に対する『あらすじ』の目安量は、400~800字程度、10~12行程度だと思ってください。
「そんなに短くて良いのか」と疑問に思う方もいるでしょうが、勘違いしない方が良いと思います。文章という物は『短ければ短いほど難しい』物なのです。
そして、だらだらと長い『あらすじ』を書いたとしても、そこに意味はありません。『あらすじ』の工程というのは、あなたの書きたい物語から削ぎ落とす必要がある『ムダ』を明確にすると同時に、物語の骨子を作者自身が見いだすための作業なのです。
2.『あらすじ』の書き方
それでは、用意してある『ストーリー』と『プロット』を用いて『あらすじ』を書きましょう。
全部で10~12行という限られた分量で、世界観を簡潔にまとめ、主人公が何をきっかけにどういった目的を定め、何に立ち向かうのかを書き出します。
そうして出来た『あらすじ』を見て、盛り上がりに欠けると思ったり、『ご都合主義』に見えてしまったとしたら、『ストーリー』と『プロット』をもう一度見直すことが必要です。
3.『あらすじ』が書けない!
実際にやってみると「意外と難しい」と感じる方が多いと思います。
『ストーリー』と『プロット』が決まっているのに『全く書けない』という方はほとんど居ないと思います。ただ、「クライマックスは書ける」のに「始まりが難しい」、「途中の展開が強引な気がする」と思われる方が多いのではないでしょうか。
さて、どうして始まりが難しかったり、物語の中盤が強引になってしまうのか。
その原因の一つとして、「物書きは『書く』ことが楽しいから書いている」ということが挙げられます。物語の中でクライマックスは一番盛り上がるところなので、書くのが楽しく、イメージもしやすくなります。
対して、『冒頭部』や『物語の中盤』は「クライマックスより盛り上がってはいけない」という原則がある上に、伏線を張ったり、ネタをしこんだりと「好きなように書けない」ために苦手とする方が多いようです。
しかし、この傾向は決して悪いことではありません。「クライマックス」がイメージできる場合、ある方法を用いることで物語全体を完成させる手法があるからです。
話を戻します。
今、私たちが取り組んでいる作業は、『あらすじ』作り、すなわち、物語の骨子を理解するために『余計な部分』を削り落とす作業です。ということは、当然のことながら「楽しくない過程」になります。
楽しく思い描いた全ての内容から「ムダ」を探して削り落とすという作業は、私たち物書きからすれば、恐ろしく難易度の高い作業です。なにしろ、本来やるべき作業と全く逆なのですから。
繰り返します。『着想』→『テーマ』→『ストーリー』&『プロット』とあなたが『書きたい』と思って膨らませてきた物語の原案から、メインストーリーという骨組みだけを残して、その他全てを切り取っていく作業。それが『あらすじ』を書くという作業なのです。
こうして、メインストーリーの骨組みだけを切り離すことに成功すると、物語の『因果関係』がはっきりします。
『因果関係』というのは、物事の『原因』と『結果』のことです。
例えば、『主人公は聖剣を入手した』ので『主人公は魔王を聖剣で倒せた』という流れが『因果関係』にあたります。
この『因果関係』をしっかり把握することで、物語に必要な要素が見えてくるのです。
4.理解はできても書けない!
『あらすじ』とは物語のメインストーリーだけを切り出した物、と言われても、それで『あらすじ』が書けるようになるわけじゃありませんよね。
そこで、比較的簡単で、整合性のある(強引にならない)『あらすじ』の書き方を説明します。
4-1.帰納法
古くから使われている物語の書き方に『帰納法』という物があります。
これは、物語の最後(結果)がどうなるかを決めて、そこから始まり(原因)へと遡っていく考え方です。
この手法は、大きく2つのメリットがあります。
1つは、物語の『因果関係』において、『結果』を見てから『原因』を考えるため、非常に整合性のある作品へ仕上がります。
これにより、無茶で強引な展開を作る必要がなくなります。
【例】第4回で作ったプロットをもとに。
主人公が聖騎士となる
↓
戦乱を引き起こした悪の魔法使いを倒す。
↓
魔法使いが支配する隣国に騎兵軍で攻め込む。
↓
騎兵軍を集めるために各地の砦を奪還する。
↓
国を守るため、隣国に侵略されていた城塞を取り戻す。
↓
民を守るため、攻めてきた隣国の敵を打ち破る。
↓
侵略してきた隣国から国と民を守る王命が下る。
帰納法の2つ目のメリットとしては、『結果(クライマックス)』から逆算するため、『原因(冒頭)』がイメージしやすくなることです。
大概の執筆者の方が苦労するのは、この『冒頭部』です。
とても素晴らしい『ストーリー』と『プロット』を持っていても、『あらすじ』の冒頭部で詰まってしまうと、そのまま書く気を失ってしまうという最低最悪のパターンにはまってしまうことがあります。
しかし、帰納法を用いればそのような問題も回避できるのです。
帰納法は使ったことによるデメリットがほとんどないので、腕前に関わらず、積極的に用いることをオススメします。
4-2.『起承転結』・『序破急』を意識する。
こちらも古くから言われている「物語の基礎」と言えるものです。
『起承転結』は知っている方も多いと思いますが、『起』は物語の冒頭、『承』で様々な説明を盛り込みつつ話を膨らませ、『転』でその前提をひっくり返して読者を驚かせ、『結』で物語をまとめる。
この書き方は長編のファンタジー小説に盛り込むと話の筋道が立ちやすくなります。
対する『序破急』とは、もともとは雅楽の用語なのですが、『序』は緩やかな導入部分、『破』が内容豊かな展開部分、『急』は話を一気に完全燃焼させる部分。そして、一瞬で燃え上がった作品の『余韻』を楽しむという技法です。
こちらは1話読み切り型の短編などを書くときに用いたい技法です。
どちらも同じように見えますが、『序破急』は右肩上がりに物語が盛り上がっていって最高潮に達したところで、ぷっつりと終わるのが特徴です。『起承転結』は一度説明パートに入ってから徐々に盛り上がらせ、最高潮を少し過ぎた辺りの後日談まで入って終わる形式です。
この2つの形式のどちらかを選び、意識して書くことで、物語の筋道がすっと通ることもあります。
5.まとめ
5-1.まとめ
○『あらすじ』
物語のメインストーリーを簡潔に切り出して、10行程度にまとめたもの。
物語の骨子がしっかりと見えるようになるので、作者も理解していなかったような落ち度がはっきりする。
○『因果関係』
物事の原因と結果を簡潔に示す関係。
ゲーム内などで、『フラグを立てる』とは、『原因』となる行為をすることで、イベントの続きである『結果』を発生させることであり、これは因果関係に近いものがある。
○『帰納法』
終わりから始まりへ物語を考えていく手法。
非常に便利で、整合性がある物語を比較的容易に書けるようになる。
○『起承転結』
始まり、発展、逆転、帰結からなる物語の構成方法。
物語の後日談まで描ききる完成された世界を書きたい人向け。
○『序破急』
導入、展開、完全燃焼からなる物語の構成方法。
物語の最高潮に達した時点でぶった切るため、最後の展開は読者の想像に委ねたい人向け。
5-2.終わりに
どうも、お疲れ様でした。第5回:『あらすじ』もこれで終了です。
思ったよりも執筆ペースが遅い気がします……やはりタイプ速度・精度が落ちているのかなぁ、と嫌なところで年齢を実感させられています。もう少し、現役の時の力を取り戻さないとダメですね。
5-3.次回予告
今回までで、『着想』・『テーマ』・『ストーリー』・『あらすじ』・『狭い意味のプロット』の全てを含む『広い意味でのプロット』が完成しました。
次回からは、『狭い意味のプロット』を作成する時に取り扱った『世界観』、『主人公』、『目的』、『動機』、『敵対者』、『始まりと終わり』の他に、『登場人物』などの詳細な設定方法などを説明することになります。
『あらすじ』までの課程が全て終了する前に、これ以降の課程に進むと、作品がパンクする可能性があるので、必ず、『あらすじ』までの全工程を終わらせてから読みましょう。




