第18話 正確に見抜く瞳
第四位階上位
おにぇちゃんは甲斐甲斐しい放任主義なので、おにぇちゃんの代わりにアヤとおねぇちゃんとシロ姉が皆を見ておく。
見た所、タク兄ことタクヤローは早速美人さんを引っ掛けてるし、同じくアランさんも赤くて角が生えた美人さんと、何となくおにぇちゃんに似てる銀髪の美人さんを引っ掛けてる。
刺されてもフォローしないからね! インタビューが来たら、あいつならいつか刺されると思ってましたって言うからね!
一方、心配なマヤちゃんとメグ、メィミーちゃんは、レイエルちゃんとニュイゼちゃん、レイーニャちゃんの3人とお喋りしていた。
レイエルちゃんがピクリとも動いてない様に見えるけど……おにぇちゃんが何も言わないなら私も言わない。
おねぇちゃんにはアマねぇが付いてるし、シハルちゃんにはナツナねぇが付いてるし、ノアちゃんにはココネちゃん、アキちゃんにはヒヨリンが付いてるので、交流に問題がある子はいなさそう?
まぁ、見かけたらフォローする様にしよ——
「——お前、ユキの妹なのです?」
「んん?」
ふいに声を掛けられてそちらを見ると、そこにいたのは桃髪の美少女。
くりっとしたお目々の可愛い子だ。
「そうだよー。おにぇちゃんの妹のアヤです! よろしくねぇ」
「ふーん、まぁよろしくしてあげるのです。ルムはルムなのです」
ルムちゃんは自信満々に胸を張って、顎を逸らし、見下す様に私を見る。
なーんか生意気な感じ? ……おにぇちゃんドSだから、多分この子凄くいじめられたんだろうなぁ。うらやま。
ルムちゃんはジロジロと値踏みする様に私を見る。
「……ふ、ユキの妹と言うだけの事はあるのです。ルムが貰ってやるのです」
「んん? どう言う事?」
「……察しが悪いのです。ルムはユキの愛人なのです、だからお前をルムの——」
「——は?」
「っ!?」
今、なんて言った? おにぇちゃんのなんだって? 良く聞こえなカッタヨ。
……まったく、おにぇちゃんは隙だらけなんだから……海に沈めても流れ着く場合はあるし、山に埋めるのが現実的だよね?
「——……ちょうしょう、むだなどりょく」
幼く拙い声が聞こえ、私と害虫の間に白い影が割って入った。
「……うそつきははんざいのはじまり。はんざいしゃはにんぎょうからやりなおし」
「……る、ルムは別に……嘘付いてないのです……いずれなるのです」
消え入りそうな言葉に、状況を把握する。
成る程、つまり……自称恋人みたいな子か。極稀にいるんだよね。
てっきりおにぇちゃんの寝込みを襲ったのかと思っちゃったよ。
まぁ……おにぇちゃんがそんなミスをする訳ないよね。
やっぱり数を作る予定でも、相手の格と言うのもアルワケデスシ? おにぇちゃんと結婚するには一親等3人以上の許可が必要なんだから!
でも……これだと、ここにいる子達全員の見極めが必要かも……。
白雪ちゃんはアヤ的にはOKなんだけど、他の子は知らない子の方が多いし……。
取り敢えずこの2人から見てみようかな。
「……ぶをわきまえるべき」
「……ルムは直ぐ強くなるのです……」
拙い口調なのにきっぱりしている白髪の子と、モゴモゴ言ってるルムちゃんに、微笑みながら声を掛ける。
「——2人ともおにぇちゃんの事大好きなんだね」
さぁ、どう来るかな?
最初に口を開いたのは、ルムちゃん。
一瞬キョトンとした後、自信満々に胸を張った。
「ユキがルムの事を大好きなのです」
「……わたしはますたのことだいすき。ルムはちがうみたい」
「ち、違うとは言ってないのです!」
成る程……ルムちゃんは好意5割。忠誠2割。崇拝3割。ってとこかな? 自分が劣位である事を理解し崇拝しているけど好きで少しでも気を引きたい、近付きたいと思って世話をしたりちょっかいを掛ける、キリカちゃんタイプ。
白髪の子は、好意6割。忠誠3割。崇拝1割かな? 典型的なユウミちゃんタイプだ。自分の立ち位置を良く理解し、他の子をフォローして、一定量働くと視線に熱が篭り始める調停役。
両方とも分母が大きいからどうとでも使えそう。
流石はおにぇちゃん。
自分に都合の良い人を作る腕前で並ぶ人はいない。これで無自覚な所があるのがおにぇちゃんのイケズな所だ。
程々にお話をして情報を集めた所、白髪の子はクラウちゃんと言うらしい。
クラウちゃんはアヤ的にOK。でもルムちゃんはアウト。可愛ければ誰とでも関係を持とうとする人におにぇちゃんはあげられません。
◇
時間は十分あるし、取り敢えず他の子達は遠目から観察して行こう。
レイエルちゃんとニュイゼちゃん、レイーニャちゃんはOK。
サンディアちゃんは良く分からなくて——
そんな風に考え事をしながら歩いていたからかな? アヤとした事が、誰かにぶつかってしまった。それも追突だ。過失10だ!
「——わっ、ご、ごめんなさい」
振り返ったのは、真っ白な法衣の美人さん。
所謂僧侶、と言うか聖女っぽい美人さんはにこりと微笑んだ。
「まぁ、妹様。初めまして、シャルロッテです」
「は、初めまして、シャルロッテさん。アヤです。よろしくお願いします」
透き通る様な透明の笑み。確かに目の前を見ているのに、まるで遠くを見ている様な瞳。
この人……おにぇちゃんみたい……。
シャルロッテさんはふいに私の足元を見て……いや、最初から足元見てたかな? 見てた……よね?
「妹様、おみ足に汚れが」
自然な動作で伸ばされた白く細い手が、私の足に触れる。
「え、あ、あの、良いですっ、自分でやれますからっ」
「いえいえ、お気になさらず。折角なのでちゃんと確認しますね」
シャルロッテさんは私の足を腿から靴先まで、丁寧に払ったり擦ったりした。
……そんなに汚れてたかな? 恥ずかしいなぁ……。
スッと立ち上がったシャルロッテさんは、ニコリと微笑んだ。
「……素晴らしい。綺麗ですよ」
「あ、ありがとうございます……?」
「それでは私はこれで。妹様も良い夜を」
そう言うや、シャルロッテさんはさっさと行ってしまった。
「……んー……不思議な人」
…………て言うか……やっぱり突然現れたよねあの人。幾らアヤがおにぇちゃんのお相手を吟味していたとは言え、そんなの見逃す筈ないもん。
……感覚的には……多分……隠密系? デカ蝙蝠と戦った時とちょっと似てるし……態々気配を隠してアヤにぶつからせた? 何の為に?
「…………バレる事は想定済み。なら目的はさっきの内に達成された……?」
唯一おかしな行動は……足に触れた事? ……成る程、足捌きは体捌き。足からアヤの力量を正確に測ろうとしたんだ!
ここまで気付く事は想定済みの筈。つまり、シャルロッテさんはアヤに油断するなと、常在戦場の在り方を伝えようとしている!
流石はおにぇちゃんの配下だね。合格!




