第3話 趣味は魔改造 二
第七位階上位
相も変わらず食料確保に奔るカナデを呼び出し、その間にセラ&レティとそれぞれ対話する。
先ずはセラナトゥスから。
『セラ、レティの様子は如何かな?』
微笑みながらそう問うと、セラは何故か怯え気味に返答した。
『そ、それは勿論、レティは大丈夫です!』
『具体的には?』
『え、あぅ、その……』
セラは暫くマゴマゴした後、絞り出す様に応える。
『そのぉ……レティは……元気いっぱいでぇ……強くて…………ま、前よりはずっと素直なので大丈夫です!』
何やら慌てているが、理由は不明だ。
『素直なのは良い事だね?』
『そうですね! 良い事です!』
『それじゃあセラ、ちょっと確認するね』
『え……?』
セラナトゥスの魂魄や身体を覗き込む。
火にほぼ完全な耐性を誇る神霊金属、ヒヒイロカネで作られた鞘、セラナトゥスは、スルトと言う名の魔物の素材を用いて作った剣、レヴァンティンの火と意志を押さえ込む為の一品だ。
だが、神霊金属と言えども完璧では無い。
勿論、各分野における耐性はピカイチだが、その力と金属に宿る意志を上回る攻撃を受ければ、神霊金属もただでは済まない。
アトランティスがアルフ君の炎に焼かれたのが良い例だ。
……まぁ、アレはアトランティスが酷く消耗していたのも原因の一つだろうが、それでもアルフ君が神霊金属の基礎スペックを上回る力を行使出来たのは間違いない。
そんな訳で、セラナトゥスが如何に強力な耐火性を誇ったとしても、レヴァンティンのスペックはセラナトゥスより上なので、ダメージの蓄積がどの程度なのかの確認である。
ざっと見た感じ…………ダメージ、ほぼ0。
『ふむ……』
『え、あの』
やはり、レヴァンティンが暴れなくなったからだろう。
炎の吸収と排出のダメージはやや残っているが、ダメージの殆どは自力での修復が出来ているし、その分の成長も見られる。
制作段階では、暴れようとするレヴァンティンの意志がセラナトゥスを消耗させ、それを都度僕が調整する事でセラナトゥスの急速な成長を促し、やがてはセラナトゥスでレヴァンティンを支配する。と言う事を考えていた。
今の状況はそれとは異なるが、結果的には悪くない方向に向かっているので問題ない。
たとえ成長が遅くなろうとも、2つの武器がアルフ君に協力してくれる方がずっと良いからね。
ともあれ、セラナトゥスの経過は順調だ。放って置いても勝手に強くなってくれるだろう。
普段からアルフ君とレティの2人の戦場に連れ回されてるいるからか、多少の疲労やちょっとした歪みが蓄積しているので、今回はそれを治すだけで良いだろう。
『……それじゃあセラナトゥス。少し整備するね』
『え……う、や——』
——ちゃちゃっと終わらせよう。
◇
鞘の整備を終えて、次は剣。
『……私は、創造主様を誤解していました』
『え? な、なに言って——』
「——じゃあアルフ君、レティを預かるね」
ヒョイっと剣を取って、工房に戻る。
部屋に入るなり、何故かビクビク怯えているレティが声を上げる。
『お、あ、う……ね、ねーちゃんになにした!』
『ほう?』
『ひっ……』
いやまぁ、いい加減にセラ&レティがどんな誤解をしていたのか、僕も気付いている。
別に僕は催眠とか洗脳とかしている訳では無い。
ただ何がいけなくて何が良くて何をすると己に得なのかをご理解頂き、ちょっと賢くなって貰っているだけの話なのだ。
そこら辺、幾らかの人には誤解されている。
ちょっと頭良くなるだけだから安心して欲しい。
まぁそんな事は置いておいて……ねーちゃんとな? 随分とまぁ丸くなった物だ。
僕を糾弾しようとするのも可愛い物である。
『それじゃあちょっと確認するね』
怯えてるレヴァンティンに構わず中身を見る。
レヴァンティンの身体は……相当な疲労と歪みが蓄積していた。
『むむむ……これは……』
『な、なななに、なに!?』
おそらく、過剰且つ強引に力を行使し続けているから、即ち無茶をし続けているからだろう。
勿論素材の質が高いので殆ど問題ないレベルではあるが、回復や成長と比べてダメージが蓄積する方が早い。
このまま無茶を重ねれば、いざと言う時に最高のパフォーマンスを発揮出来なくなってしまうかもしれない。
しかし、彼女の教育はアルフ君が行う事になっているので……まぁ、アルフ君に詳しく説明すれば良いか。
取り敢えず整備しよう。
『それじゃあレヴァンティン、ちょっと調節するね』
『ひぃっ!?』
……虐めてる訳じゃなくて、ちゃんと誤解を解く為に必要な事だから。
怯えるレヴァンティンを整備した。
◇
『と言う訳でアルフ君。レティには魔力操作能力の教導をしてやった方が良い』
『分かった、意識してやってみよう』
アルフ君との面談を終えた所で、カナデが到着した。
アルフ君を戦場に転送し、カナデを迎える。
「やぁカナデ、調子はいかが?」
「好調ですねぇ〜」
「バアルとはどう?」
そう聞くや、カナデからにゅるんとスライムが生えた。
「好調ですよぉ〜」
『呼びましたかっ、呼びましたかっ!』
「なら良かった」
それじゃあ2人の魂魄の確認をしよう。
荒ぶるスライムをギュギュっとカナデの中に戻し、早速良く見てみる。
新たに取得されたスキルは……魔物由来の魔法型が多い。
ブレスは勿論の事、本来は毒魔法から派生するであろう酸液や眠鱗粉、蛇毒、痛毒。それから、牙系や爪系、角系の属性攻撃スキル。
それら多くは、単純な魂魄のスキルだけでなく、魔石に刻まれたアビリティをも含んでいるのだろう。
自力の目と鑑定スキルを駆使し、魂の中にバラバラに存在するスキル群を観察するに……容量は問題ないが、やはり無駄が多い。
牙とか爪とか角とかは無くても、捕食再現スキルでそれらを再現して使えるので問題は無い。
肉体に根付くスキルは、バアルのスライムボディを利用して捕食再現で必要な器官を幾らでも作れるので、無駄は無い。
問題は、同系統スキルが重複している点だ。
例えば、牙系スキルは変換した属性魔力を牙に宿し、口腔内から顔付近の属性耐性を上げ、魔法を発動する。
つまり、牙に限定する機構。魔力を送信する機構。耐性を上げる機構。発動する機構。等々の、2つ以上無くて良い部分が多数重複しているのだ。
牙系は牙系で纏めてしまった方が、魂魄の容量を圧迫しないし、使い手側もスキルの成長が一本化されてより使いやすくなるだろう。
……まぁ、カナデにはカナデの魂魄の他にバアルの魂魄もあるので、容量に関しては本当に問題ないのだが。
と言う訳で、例の工具達を使ってスキルの再編を行なった。
慎重に補填と移動と分解と融合を行い、ささっと編集を終えて戻ると——悲鳴が響いた。
『あ、あぁー! クローネェ〜、スキルが、スキルがぁ……』
「え、なに?」
「な、なにしたんですかぁ?」
「纏めただけだけど……」
……もしかして集めてた?
確かに因子を回収するスキルにコレクターと名付けたが……本当にコレクターにならなくても良いのに。
「全種類の生物のスキルを集めようとしても、流石に魂魄の容量が足りないよ?」
『えぇー、そんなぁ……クローネェ〜』
「うぅーん……どうにかなりませんかぁ?」
「そうだな……」
スキルをそのまま残しておくと容量が足りないけど……ちょっとの因子とそのデータだけを残すなら問題は無い、か。
「良し、それじゃあスキルの目録だけ作ろうか。因子を残すけど、スキル育てないでね?」
「あぁ、出来るんですかぁ。バアルも良かったねぇ?」
『良かったですクローネ、流石ですクローネ!』
僕が作るんだけど? まぁ、仲が良くて良かったよ。
一応編集したスキルにもそれぞれの因子が含まれてるし、少し因子を回収し、記憶してあるスキル構造と名前、効果の情報データを個別に整理、分類して、取り敢えず完成。
情報データの編集は現状黒霧か僕にしか出来ないので、消耗を考慮するなら、その都度僕の所に来て欲しい。
さぁ、次は、細々とした装備の親和性向上と分配。




