第27話 鬼の国の禍
第七位階上位
次は禍神についてだ。
白羅と向かい合う。
「禍神について詳しく教えて貰おうか」
「うむ……この大陸より遥か東に存在する鬼の国の事だ……」
そんな語りだしから始まる話を纏めるに……なんでも鬼の国には複数の悪鬼が封印されているらしい。
アルバ大陸で起きた負の化身との激闘、黒の災禍から近年、それら悪鬼共の封印が急激に弱まっているんだとか。
その為、禍祓いの勇者として数年掛けじっくり悪鬼を殺し、力をつけて回る筈だった桃花を急遽大陸に連れて行き、迷宮等で修行を付ける……つもりだった。
ところがどっこいお供の仲間達と桃花はそれは勝手気ままに行動を開始し、皆して行方不明と。
「来たる覆禍ヶ時を討ち払う為、ユキ殿にそのお力を貸していただきたい」
尻尾をふりふりしつつ、キリッとした顔で言う白羅。
話を聞く限りだと……悪鬼と言うのはおそらく、負の欠片や化身の類いだと思う。
「……敵の戦力は如何かな? 白羅だけではどうにもならないの?」
白羅は相当強い。
シスターアルメリアの実力を知らないのではっきりとは言えないが、僕の配下となっている者達の中では比類ない剣士だ。
それが警戒する様な相手となると、邪竜王・ザッハーク級の怪物と考えて良いだろう。
金の加護による補助が無い為、神性を解放した精霊帝6人掛かりでようやく互角レベルである。
果たして——
「昨夜戦った酒呑童子。それと同じ名前の悪鬼がいる……と言えばどの程度か分かるだろうか?」
「成る程」
酒呑童子は特殊な神性が付随する鬼神候補らしいし、実力で言うならおそらく650前後。
更に特殊な神性により、配下に500前後の鬼神候補が複数体存在している可能性は高い。
これは……白羅だけでは厳しいか。
僕がそう結論付けるも、白羅の話はそこで終わらなかった。
「他にも、9本の尾を持つ強大な妖狐。竜角を持つ黒き大狼。業火を操る緋角の白鬼。他無数の悪鬼が各地に封じられている」
「ふむ」
九尾の狐と言うと、僕の配下の狐ちゃん達が今レベル600代で8本だから、単純に考えると650〜700くらいの実力者と言う事になる。
他2つの例も、態々無数の悪鬼の中からピックアップされるんだから、レベル的に650前後だと考えて間違い無いだろう。
……話を聞く限りだと、封印されてる連中は負の化身では無いが影響を受けている。くらいの者が多そうだ。
これなら、封印を解いて各個撃破して回れば、白羅だけでも如何とでもなる筈。
…………と言うか、遊技神の言葉を信じるなら、九尾と白鬼は茉莉花と白夜だな。
まぁ、倒すか仲間にするかは会ってみない事には決められないが。取り敢えず……。
「各個撃破しないのは、何か理由があるんだね?」
僕の問いに白羅は厳かに頷いた。
「全ての封印が解かれる時、世は禍に覆われる。……らしい。残された文献が何処まで真実を示しているのか分からぬ故、確証がある訳では無いが……どうにも嫌な予感がしてな」
予感、か……白羅の直感なら十分信じるに値する。
此方もなるべく早く手を打っておきたい所だ。
流石に邪神竜・アジ・ダハーカ程の怪物は出てこないだろうが、ザッハーク級は覚悟しておいた方が良い。
「鬼の国の事情は理解した。近々軍団を編成して討伐に向かおう」
「ありがたい。ユキ殿のお力があれば如何なる災禍も祓えよう……申し訳ないが、もう一つ良いだろうか?」
言葉通り、白羅は非常に申し訳なさそうに僕に伺う。
「勿論、聞こうか」
「んむ……禅鬼と空華の事だ」
うん。そうだよね。行方不明者の捜索が先だ。
「手は尽くすけど、此方の都合上手広くは出来ないんだ。早く見つかると良いね」
「まったくだわ! 2人ともおバカなんだから、放っておけば良いのよ! ハニーの手を煩わせる程の事じゃないわ!」
「監視は常に行なっているから、手間と言う程の事ではないよ」
まぁ、今は黒霧の消耗が大きくて若干ザルだが、問題なかろう。
「詳細は追って連絡する。それまでは各自修行するなり準備するなりしてくれたまえ」
僕はふんぞりかえりながらそう言って、直ぐに予定表の更新を始めた。
ザイエは準備を急ぎたいらしくさっさと行ってしまったが、桃花は僕へにじり寄る。
「……桃花?」
「……ハニー、私、もっと強くなりたいわ!」
「……もうそろそろ命泉の風神雷神が復活するから、それを1人で倒してみなよ」
「待っててねハニー! 直ぐに倒してくるわ!!」
良い笑顔を浮かべダッシュで消えて行く桃花。
彼女の今の実力と装備なら……風神雷神とはほぼ互角くらいの筈。桃花なら勝てるだろう。
「……見守りお願いね」
「任されよ」
まぁ、危険そうな戦場を見守らせるのはいつもの事だ。
白羅はにっこり微笑んで、駆ける桃花を追いかけた。




