第25話 嫌な物は嫌
第七位階上位
見た所、フライにチーズ焼き、ワインを効かせたムニエル、バター醤油のソテー、カルパッチョ。
取り敢えず色々やってみたって感じだ。新しい食材なのだろう。
「どうかねクローネ。俺としてはやっぱり燻製とか試してみたい所だが……」
「頂きまーす」
料理の後片付けをするアラン。
カナデは相変わらずの綺麗な所作で、料理を食べ始めた。
あーたんが驚きに目を見開く程だから相当だ……まぁ、所作が綺麗なのに物凄く早いから驚いてるんだろうがね。
黙々と食事を続けるカナデは置いておいて、アランに声をかける。
「アラン、調理器具とかの使い勝手はどうかな? 改善点とかはある?」
「特には無いな、文句なしだ……ただ、強いて言うなら……リッドみたいな機能があると凄い嬉しい」
「あぁ〜」
そりゃあね。リッドは配慮の出来る凄い子だからね。
一度その便利さを知ってしまうと普通にやるのも不便に感じるだろうね。
後片付けなんかはより一層に。
リッドなら体に突っ込めばゴミだけ食べて綺麗にしてくれるからね。
「取り敢えずコレ、あげるよ」
取り出したのは、小さなお菓子の家、お菓子の家と可愛らしい装飾の一冊の本、菓子聖のレシピ。
アランは机に置かれたそれをじっと見つめ……。
「……鑑定しても何もでないんだが」
困った様に苦笑い。
まぁ、それは置いといて、改造である。
「アラン、鍵出して」
「おう」
アランの厨房を開くヒヒイロカネの鍵と、各種アイテムを接続した。
これで、アランの厨房にはお菓子作り専門の部屋と、色々サポートしてくれる相棒が配置される事となった訳である。
単に接続させるだけでなく、空間内に通路を作ったり対話したりと色々調整もした。
「まぁ、説明するよりも実際に使って貰った方が分かると思うけど、お菓子作りに色々と便利な施設が追加されたよ」
「おお! マジか……おぉ、業務用のデカイオーブン、マドレーヌ型まである……発酵機あんじゃん、パンが焼けるぞ。蒸し器もあるし……」
早速とばかりに空間を開き、お菓子作りの部屋を覗き込むアラン。
子供の様に目を輝かせつつも、一つ一つしっかりと確認している。
「それじゃあドゥー、アランの補佐をよろしくね」
「ドゥー? 何だ——」
次の瞬間、片付けの途中だった鍋や包丁が宙に浮き、浄化が掛けられて整頓されていく。
「おお」
「名前はドルチェ。厨房内の管理をしてくれるよ」
「マジか……ドルチェはどこまでの事ができるんだ?」
「人が出来る事ならなんでも」
「へぇ……サンキューな、ユキ。ドルチェもよろしく」
食器が軽く振るわれる。ドルチェは寡黙らしい。
にっと笑うアランに、僕もにこりと微笑んで——
「お礼は例のブツで」
「お? ……あぁ、例のブツね。オーケーオーケー」
まぁ、料理だけどね。
そうこうしてる内に、カナデが大量にあった謎料理を全て食べ終えた。
「ごちそうさまぁ。美味しかったぁ」
「そうか。で、どうかね? クローネ的には」
「やっぱりぃ、チーズ焼き?」
「まぁ、そうだよな」
「ムニエルとカルパッチョはぁ、凄くびみょー? 不味くはないけどぉ? びみょー?」
「だよなぁ」
「フライはぁ、良い感じぃ? ソテーもぉ、良いけどぉ……要研究?」
「やっぱなぁ……材料が材料だけに難しいな」
思案顔のアラン。
食べるだけなので気楽なカナデ。
普通の肉や魚ならそう悩まないだろうし……もしかして素材はおたまじゃくしかな?
対して気になる事でもないが、一応聞いておく。
「材料って何使ってるの?」
「あぁ、ほら、でっかい奴いただろ? 化け物タガメ」
「は?」
おっと、唐突な未知との遭遇で殺気が漏れた。
取り敢えずびくっと硬直したちびっこ3人を愛属性を込めて撫でて誤魔化し、一瞬硬直した後ぷふっと笑ったカナデを一睨み。
カナデ同様硬直して直ぐ復帰したアランが、苦笑いで口を開く。
「……あぁ、なんだ……ユキって昆虫食ダメな人?」
「いや別に? どうしてもと言うなら食べれない事もないよ?」
どうしても。僕が食べないと世界が滅ぶと言うなら食べれるとも。
「そうか……あれ? でも前にゴキブリ食ってなかっ——」
「食べてナイヨ?」
「……あ、あぁ」
「食ベテナイヨ?」
「あぁ、うん……悪かった」
「タベテナイヨ」
「すまん。失言だった」
タベテナイヨ。タベテナイ。タベナイヨ。タベナイ。
僕が深淵に封じられし記憶と戦っていると、僕の配下である筈のカナデの奴が追い討ちを掛けてきやがった。
「メジャーなのはぁ、ミルワーム? コオロギも美味しいしぃ」
「タベナイタベナイタベナイ」
「クモはぁ、栄養豊富? アリとかシロアリも美味しい?」
「………………」
「ゴキブリもぉ? 割とメジャ——」
「——カナデ」
僕はにこりと微笑んだ。
「絶食の呪術にちょうど良い触媒があるんだ」
絶食と言った時点でカナデは庭の芝生に五体投地していた。
僕もそれで一応の溜飲を下げ、インベントリに神結晶をしまう。
「二度としないでね?」
「はいぃ」
しょんぼりしながら起き上がるカナデ。
彼女が席についたのを見てから、口直しにドリンクを一口。
「あ……」
「……何?」
「な、なんでもないですぅ」
誤魔化す様に顔を伏せるカナデ。
苦笑いしているアラン。
「?」
一体なんだと言うのか。




