第7話 vs.幻想竜・ジャヴァウォック
第七位階上位
激しい戦闘となる事を見越して、相応の準備を進める。
まぁ、準備と言っても大した事では無い。
休息に入ったルクス君から回収したヴァルゴ装備を装着。
六翼の生えるチョーカーに光の輪っかが付いて、天使僕に変身。
更に、紋様型装備の極彩豪雨と光輪の終焉の極光を装着、おまけで群星銃も浮かせておいた。
極彩豪雨は、レベルにして400を消し炭に出来る王級上位魔法を連発出来る紋様装備。
終焉の極光は、レベルにして600の敵に致命的ダメージを与える事が出来る覇級上位魔法を6種類一発まで放てる七色の光輪だ。
これだけでも、レベル750に大きな損害を与えられるだろう。
念の為、魔力タンクとして禁忌の聖杯をアイテムボックスの方に入れておく。
そして最後に、夢の星珠と至福の星珠、死神の星珠、玄帝の星珠を、上部4枚の翼に仕込んでおく。
これで態勢は磐石だ。
ジャヴァウォックに第二第三の形態があっても対応可能である。
750から飛んで900なんて事になると消耗が洒落にならないが、上がっても精々800とか850だろうし、問題は無い。
快速ニコラ便で灰色のお城前に送って貰った。
「ありがとう、ニコラ」
「いいのいいの、ニコラは良い子の味方だもん! ユキちゃん、頑張ってね☆」
キラーンとウィンクで星を飛ばすニコラ。
プチニコラはもう僕の物だけど、本ニコラやアリーチェ、アデルとは今暫く此処でお別れだ。
「……それじゃあ皆、またね」
次会う時は、僕がちゃんと神になれた時になるだろう。
ニコッと微笑み両手を振ると、ニコラが歩み寄り僕を抱きしめた。
「んふー☆ ユキちゃんまた今度ねー」
ニコラが離れると、次はアリーチェとアデルが歩み寄る。
「えへっ、また後でね!」
「あっとぉっ……まぁいいや。今更だわ。また後でな」
……どうやら2人とはもう一回会うらしい。
「そう言う事なら……また後で」
「えへ♪」
「おう」
最後に皆に手を振って、僕は城へと振り返った。
◇
不思議の世界の虹色の城から一転、そこだけ灰色となった奈落の世界の城。
音すらもなくなったその城の中、止まった砂時計の前に、ジャヴァウォックはいた。
ジャヴァウォックは瞑っていた赤い瞳を開き、次の瞬間——僕の目の前で剣を振り上げていた。
しかし、ジャヴァウォックの振り下ろした灰氷の剣は、鉄壁の結界によって防がれる。
隙を付いた群星銃十基による射撃は、いつのまにか離れていたジャヴァウォックには届かない。
更に追撃で群星銃を十基動かし、射撃。
移動を察知すれば更に十基ずつ動かして射撃。
それを繰り返す事数十回。
やはり、攻撃は擦りもしない。
群星銃自体はステルス性能を持っているので、小竜撃弾の弾を見て避けられているのだろう。
ざっと観察した感じ、ジャヴァウォックの仮定時間停止は、現時点では攻撃に転用していない。もしくは出来ないのだと分かる。
まぁ、時間停止と言うよりも、僕の体感的にはこれは時間遅滞の類いだと思われる。
つまりは空間の流れを極限まで遅くして、尚且つその中を移動する力なのだろう。
合理的に考えると、仮称時間遅滞とその空間内を移動する力は、別種の力、もしくは別ベクトルの力だと考えられる。
攻撃時に時間遅滞を解除するのは、その必要があるからだと考えて良いだろう。
そもそも、時間停止は決して不可能な事ではない。
エヴァが次元杭で空間を固定するのも時間停止の一種だ。
アレは、杭の中に極小範囲の空間を支配し固定する構造が刻まれており、ちょうど地面に杭を刺す様に空間固定、時間停止を行う。
つまり、時間停止とは、範囲指定をした空間を固定化させる技術であると言える。
根本的な話をすれば、魔力というのは創造神たる神の力の残滓で、凡ゆる物質は魔力で構成されている。
創造力によって万象を再現出来るのは、夢郷だけの専売特許では無いのだ。
精神力、創造力で変換された属性魔力は、物体、および現象として起きる前の半物質体。
時間停止は、その半物質体たる空間属性魔力による、魔力含む凡ゆる物質現象を固定化する魔法だ。
時間遅滞は、十分な空間属性魔力を用意出来ない場合に起こる現象だと考えられる。
……もしくは……完全に空間固定された場合、僕は死神に体を消し飛ばされた時同様、自動的に魂魄による活動を開始するが、遅滞の場合はどうしても体の反応に引っ張られる。
ジャヴァウォックは敢えて空間固定をしない事で、一定以下の生命体の行動を完全に縛れる様にしているのかもしれない。
その実、空間固定は十分な量の属性魔力と空間指定分の超密度結界さえ用意出来れば、消耗自体は殆ど無い。
指向性を持った空間属性魔力、即ち空間固定属性魔力の働きにより、自動的に空間を固定し続けるからだ。
空間固定は長時間放っておくと属性魔力が勝手にくっつき合い、密度と言うか質がどんどん増していく事で数が減り、自動的に固定が解除されてしまう。
その上、密度が上昇した魔力は多くの場合察知出来ないレベルになるので、空間固定に要した膨大な魔力がごっそり消えていると言う事態になる欠点がある。
これを解消するには、都度属性魔力の入れ替えをするか……或いは、常に属性魔力が動き続けられるレベルまで、具体的には時間遅滞まで密度を下げておくのもありだ。
ジャヴァウォックの時間遅滞は、一定以下の生命体の行動を完全に支配を出来る上、自分の支配領域を無調整で長期間維持出来る様にもしていると言う事なのだろう。
うーん、控えめに言って、天才。
流石はアリーチェである。
では、この状況を打開する方法を考えてみよう。




