第53話 船旅と危機
第七位階上位
ヨーソローと風を切り、一直線に鬼の根城へ進む船。
燦々と輝く太陽の下、潮風に包まれ進む船の上。転がるは3つの屍。
「りくち、りくちがこいしい……」
「川下りの……トラウマが……」
「船旅は苦手にござる……」
何 故 船 の ル ー ト に し た 。
……僕が言いたいのはそれだけだ。
「ハニー、大変だわ! グンハ達が、なんでか倒れてるの!」
「大変だね」
ベテラン船乗りの釣竿法師は笑いながら船の操作や安全確認を1人でやってるし、ヒメは一頻り船上を満喫した後釣りを始めるし、仕方ないから3人の介抱を僕がやる事になった。
◇
秘密の港に安置されていた割と大きな船に乗り込み、何のイベントも無く出発してしばらく。
3人を介抱しつつ桃花とのんびり海を眺めていたら、ヒメが人魚姫を釣り上げた。
成る程と思った。
だから、魚1匹いない筈の海で釣りを始めたのか。
ただのヒメだと思った僕は、既に姫の術中に嵌っていたのであった。
「ちょっと! 聞いてるんですか!?」
「聞いてる聞いてる」
「と言う訳で、水晶宮に向かいマスヨー!」
「ええ! 早く助けに行かないと!」
何でも、水晶宮なる水底の宮殿が水棲鬼人に襲われてるらしい。
名前は、敖光 小龍と言い、何でも釣竿法師の彼女らしい。
《【運命クエスト】『助けた姫に連れられて〜♪ 水晶宮へ行きました〜♪』が発令されました》
それにしても、小龍か。名前と状況から鑑みるに、報酬には期待出来そうだ。
◇
青い髪を一つ結びにした、生真面目っぽい小龍の案内で進む事しばらく。
海賊船に遭遇した。
どうやら、水晶宮の上に到着したらしい。
海賊船には沢山の鬼が乗船しており、此方に攻撃を仕掛ける気満々であった。
ここで問題が生じる。
敵は、流石に船の上とあって、数は先の5分の1にも満たない。
しかし、レベルは格段に上がり、最低レベル400の鬼人が小隊規模で控えている。
中でも強いのは、さっき倒したのと全く同じ顔の、なんか僕を見て怒ってる白波童子さん。
……本来は撤退する予定だったとかかな?
それに、高レベルの仙鬼が十数体控えている。
対する此方は、屍3つを除き、釣竿法師。小龍。ヒメ。桃花の4人。
レベル400が相手なら、相対する適正人数は精々6〜8人なので、後3〜4人程戦力を追加しなければならない。
召喚したのは、白羅とリム&ルム。
白羅は基本見守りとして程々にやって貰いつつ、主に戦うのはリム&ルムだ。
早速戦闘開始。
海賊鬼達と釣竿法師は巧みに船を操り、横並びにすると、早速とばかりに鬼達が乗り込んで来た。
その中から、一番強い白波童子が僕の方へ飛び掛かる。
「うぉらぁーっ!」
「はーっ!!」
飛び掛かりつつ振り下ろされた肉厚の曲刀を、桃花が迎撃する。
「邪魔だぁっ! 小娘ぇーっ!!」
「ハニーに何の用よっ!」
レベル的にも丁度いい相手だし、邪魔をさせないようにしよう。
他の戦場も見てみる。
「鬱陶しいのです!」
「わわっ、ちょっ、危なっ!?」
リム&ルムのペアは、回避を基本として腕に膨大な魔力を込め、刀を弾いたり鬼を消し飛ばしたりしている。
リムの方は回避と防御で精一杯と言う感じだが、ルムは流石に自称天才と言う事もあり、その矮躯を巧みに操って刀の合間を縫う様に擦り抜け、一撃必殺で鬼を撃破している。
ルムは基本的に魔法使いタイプで強いから放っておいているが、ちゃんと武装すればエヴァやアトラ並のポテンシャルを発揮するだろう。
流石にメロットやシャルロッテ程では無いだろうが、秘めたる力は尋常のソレでは無い。
後は……ヒメが竹の刀から光線を放って甲板を走り回ったり、釣竿法師が何気に極まってる仙気の拳打で鬼をボコボコにしたり、シャオロンがいつのまにか人化して何処からともなく槍を取り出しひたすら自己防衛したり、強いて見所を言うなら……なんかヒメが使ってる剣、変質してない?
それだけが少し気になるが、僕は僕で屍3つを守る為に鬼を仲間に押し付ける作業があるので、のんびり殲滅を待つ事にする。
◇
「くそっ、引くぞ!」
白波童子がそんな声を上げ、僅かな生き残りが船に戻り、物凄い速さで北へ逃げて行った。
「海上の賊はこれで終わりです! 直ぐに水晶宮へ向かいましょう!」
「でも水中デスヨ! どうやって向うんデスカ!」
「水晶宮の秘術で陸上の生き物も海底へ潜れる様にします!」
鬼気迫る演技で茶番を繰り広げるシャオロンとヒメ。
「さぁ、行きましょう!」
「行くデース!」
言うや2人は躊躇なく海へと飛び込んだ。
釣竿法師はグンハとまめちゃんと金剛をぽいぽい海に捨て、最後に錨を投げ入れてから、船から飛び降りた。
「さぁハニー! 行きましょう!」
「海に飛び込むのです? まったく、早く終わらせるのです」
「水中かぁ、初めてかも」
「完全な海中と言うのは私もあまり経験は無いが、なんとかなるだろう」
若干不安そうなのもいるが、どうせ世界変質が起きると思うので大丈夫だ。
僕は気にせず船べりに足を掛ける。
「さぁ、行こうか」
寄り道クエストは報酬が美味い。
素晴らしいエクストラ評価を得る為にも、彼を呼び出すとしよう。




