第50話 まめぞう
第七位階上位
木々を縫う様に走り抜ける皆の殿を務め、宙を滑る様に進む。
——ヒメにしがみつかれながら。
正確にはおぶさる様な形で。
「らくらくデース」
「だろうねー」
気やすい返答をしておいた。
間も無く、森を抜ける。
◇
開けた視界に映ったのは、渓流に作られた村。
自然の要害で守られたその村は、出入り口が限られ、軍団による蹂躙が困難な作りになっていた。
唯一の出入り口である大門に、先と同じ規模の鬼人が攻撃を仕掛けている。
ハイオーガバンディット LV90
緑鬼人 LV170
上位白鬼人 LV270
仙鬼人 LV430
さっきよりもちょっとだけ強いが、大した事ない連中である。
見た所、門の所で鬼人達が暴れている。攻めあぐねている様だ。
門前の戦場を良く見ると……小人が戦っている。
針の様な剣を振り回し、時に鬼達を投げ飛ばし、獅子奮迅の活躍を見せていた。
躊躇なく戦場に飛び込んだのは、桃花。
敵へ斬り込むと同時に、桃花は小人に声を掛ける。
「助太刀するわ!」
「おぉ、グンハど……の…………あれ?」
「拙者はこっちにござるよ」
おそらく、神性を見て勘違いしたのだろう。
小人は鬼人の陰に隠れて良く見えないが、魔覚的に見てグンハと同じ総髪の青年だと分かる。
「小豆丸、あたしもいるよ!」
「小豆丸ではなく豆蔵法師と呼べと何度も——」
「——取り敢えず敵を倒しまショウ!」
——斯くして戦いは始まった。
桃花が真っ直ぐ斬り込み、グンハがそれをサポートする様に動き、金剛丸は敵が沢山いる方へ殴り込む。
ざっと見た感じ、敵の主な攻撃対象は僕等や豆蔵法師とやらでは無いらしい。
どうやら、村を守る門に攻撃をしている様だ。
おそらくだが、今回の戦いは門を守る防衛戦か何かなのだろう。
その点、門は豆蔵法師が守っており、そこへグンハと桃花が向かっているので問題なし。
敵の撃ち減らしと言う点では金剛丸がやっているので此方も問題なし。
であれば、僕とヒメの仕事は、弓士と召喚士の鬼人を倒す事。
つまりさっきと同じである。
さっきと同じ、得る物の無い戦いである。
◇
今回の戦いも直ぐに終わった。
死体は鮮やかな靄となり、空を彩って消えさる。
桃花と金剛丸がハイタッチやハグで健闘を称え合い、グンハがそれを見守る。
そんな中、豆蔵法師は僕の方へやって来た。
「助太刀感謝する。俺1人ではとても守りきれなかった」
決してそうとは思えないが、そう言うシナリオだからそうなのだろう。
感謝を受け取る。
「うん、どういたしまして」
「いえいえ〜、大した事はしてマセーン」
「礼と言っては何だが、俺も貴殿らの旅に同行させて欲しい。もはや鬼達を野放しには出来ん」
「まめぞうが来るなら力強いデース!」
「心強いだよ」
力強くなるけども。それにさり気なくディスってない?
「いや、豆蔵では無く豆蔵なんだが……ヒメ殿、態とやってないか?」
「? どう違うデスカ?」
「知らんのか。なら仕方ない」
「軽薄に喋り続ける様な人を罵しる言葉だよ」
僕の解説にショックを受けた様子のヒメは、豆蔵法師を握り掲げて謝罪の言葉を連呼する。苦しそうだが多分大丈夫だろう。
一頻り謝り、あだ名がまめちゃんになった所で、次の話をする。
「……で、次は何処かな? やっぱり海?」
「おぉ、そうデース! 鬼の根城は海の先にありマース。海を渡るには、船を手に入れなきゃいけまセン……どうしまショウ?」
ヒメはコテンッと首を傾げてまめちゃんを見た。
「うむ、ここより一里程山を下った場所に海の民が住む村がある。そこで話を聞くのが早かろう」
「だそうデース」
「ちょうど良く、その村には我等が同胞、釣竿法師がいる。彼ならば船を都合出来るやもしれん」
「らしいデース」
釣竿法師と言えば、そう言う釣竿をゲットしたが……おそらくその持ち主だろう。
「じゃあ早速北上しようか」
「北には崖がある、北西の竹林を迂回路に進むのが良いだろう」
「それじゃあ出発デースネー。皆を呼びに行って来マース!」
元気良くヒメが桃花達の所へ走っていく。
その時、ふと、まめちゃんが何かを思い出したと言わんばかりに手を打った。
「そういえば、竹林に最近怪しい影が彷徨いていると村の者が言っていたが……まぁ、ここまでの手練れが揃っているのだ、問題あるまい」
成る程。つまり何かあると。
……クエストだな。
僕は報酬の期待に胸を躍らせ、皆が来るのを待つのだった。
◇
竹林に差し掛かって間も無くの事だった。
——ギュピーー!!?
変な悲鳴? が響き渡ったのは。
《【運命クエスト】『小さな箱には大きな光。大きな箱には……?』が発令されました》
《
【運命クエスト】
『小さな箱には大きな光。大きな箱には……?』
参加条件
・スズメの林に入る。
達成条件
・敵を殲滅する。
失敗条件
・無し
・備考
魑魅魍魎蔓延る森から禍を祓い、安らかな平和を取り戻せ。
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