第20話 停滞の時は無く
第四位階上位
色々と雑事をこなしている間に遺跡に到着した。
やっていた事は、錬金術の能力調査である。
偽造生命は即席生命の上位で、魔典に仕舞いっぱなしだったスライム・インスタントライフのアップグレードが出来た。
新しい種族は、スライム・フェイクライフ。
生存時間、つまり、魔力保持容量が大幅に向上している。
錬金術の奥義というスキルは、単純に錬金術の成功確率を向上させるという効果をもっているらしい。
次に、魔導抽出だが、良く分からないが色々と抽出出来る能力らしい。
薬草から薬効を抽出したり、そこらに転がっている石から土属性魔力だけを抽出したり。
薬師スキルに活かせそうな能力である。
◇
「ふむ……何が起きた?」
門を使って転移した、第一声がこれである。
周囲には、朽ちかけの小さな遺跡は存在せず、代わりに、随分と綺麗になった小さな町があった。
獣耳を生やして探ってみると、どうやら、転移門を一度でも起動したら、地脈から組み上げられた魔力で町が修復される様な仕組みが施されていたらしい。
まぁ、町と言っても幾つかの建物があるだけで、住民は皆ワーカーゴーレムである。
プレイヤーも何人かいる様だが、構わず探索する。
並んでいる建物は全て石造り、精緻な文様が其処彼処に描かれている。
……全て魔法関連の文様である。
武器屋、防具屋、道具屋、宿屋、食事処、訓練所、休憩所。
言うなれば支援拠点と言ったところか。
どれも魔力でお支払いするらしい。
そして、驚いた事に、立ち並ぶ建物の中にスキル屋があった。
ガラスの様に透明なケースの中に、宝石を飾る様にスキル結晶が置かれている。
その前には値札があり、スキルの名前と値段が書かれていた。
言語はゲーム内の物ではなく、プレイヤーなら誰にでも読める様に配慮されている。
クランのショップと見比べてみると、並べられている値札はほんのすこし高めに設定されている様だった。手数料かな?
中にはクランのショップには売られていないスキル結晶もあった。クランマスターというのがそれの筆頭である。
支払いはどうやってやるのだろうか。と周りを見渡すと、入り口付近に良く目立つ台座がある事に気付く。
形状は、転移門のそれと良く似ている。
あからさまに何かありそうなその台座を軽く調べて使用してみたところ……。
どうやらこれ、魔石を合成、変換出来たり、それに魔力を込められる様に作られているらしい。
まぁ、僕が使う事は無いだろう、何せこれ……手数料取られるみたいだし。
この拠点を色々とみて回ったが、僕としては特別気になる様な場所は無かった。
しばらくは物珍しさにプレイヤーで賑わう事だろうが、どの商品も少々お高いのでそれも一時の事。
スキル『魔力限界増加』を殆どのプレイヤーが取得するのは間違いない。
「それじゃあ、北の森に向かおうか」
「ウォン!」
「う、うん」
◇
快速ウルル便は流石の速度で北の森に辿り着いた。
森の半ばまで進むと、遠くに巨大な水饅頭が見えたのでそこへ向かう。
勿論、巨大な水饅頭とはアイの事である。
アイの元には、ちゃんと全員が揃っていた。後、何故かアランもいる。
「やぁ、アラン、狩りは順調かい?」
「おお、ユキか。少し……芳しく無いな」
そう言うと、アランは周りの皆を見た。
……まぁ確かに芳しく無いだろうね、狩り尽くされてはいないだろうけど。
「……幾らで買う?」
「見てからじゃないと何とも言えないが……ユキはこれから街に帰るのか?」
「そうだね、じゃあ商談は落ち着ける所でやろうか」
そう言うと、皆を労ってから送還した。
残っているのはウルルとネロ、そして白雪である。
「アランはネロに乗ってね」
「あ、ああ」
伏せて待つネロにアランは恐る恐ると言った体で跨った。
アランは騎乗スキルをとっていない物と思うが……まぁ、アランなら何とかなるだろう。
「じゃあ行こうか、ウルル、ネロ、王都へゴー」
「ウォン!」
◇
アランとの商談は適当に終わらせた。
何せ僕は今お金に困っている訳では無いのだ。
食べれそうなお肉は全部渡して、代金は売り上げを見て、と言う事になった。
インベントリもあるし、アランならうまく全部売り捌けるだろう。
そう言えば、詳しく調べていないから分からないが、商業区で屋台とは言え商売をするなら何がしか利権などが関わってくるのではなかろうか?
アランの事だから、無断でやっていると言う訳でもあるまい。
アランもアランで、裏で色々とやらかしているに違いないのだ。
図書館へ帰る道すがら、地下迷宮を攻略しているアンデットさん達に連絡を取った。
攻略は一人の脱落者も出さず順調に進んでいるとの事。
試しにコネクトを使ってルーレンと繋がってみると、ビクッと震えた後、素の喋り方で怒られた。
どうやら老人の様な喋り方は作っていた物らしい。
更に、アンデットと感覚を同期させたからか、ルーレンとアッセリアの声はちゃんと女性の物に聞こえた。
感覚を更に詳しく調べてみると、アンデットだからか視覚と聴覚以外の感覚が全く感じられず、その代わり、生き物を感知する能力は非常に優れているのがわかった。
生物が何処にいるのか、数は幾つか、という情報が良く分かる。
もしかしたらそれはルーレンが高位のアンデットだからなのかもしれない。
そんなこんなで連絡を終え、図書館に到着した。
ウルルは一頻りじゃれあった後送還、白雪は、流石にもうくっ付いていないが、直ぐ側にいる。
図書館の広間に行くと、若爺様とレイーニャは瞑想していて、ザイエとティアは無手で手合わせをしていた。
図書館内でやることでは無い。
「ただいまー」
「ん? ユキか……ま〜た変なもん連れて来やがったな」
「変なもんって何よ! 人間の癖に生意気だわ! ちょっと強いからって調子に乗らないでくれる?」
「……すげぇ生意気だ……ユキが可愛く見えるくらい」
「ザイエは何言ってるんだい? ……僕が可愛いのは何時もの事だろう?」
そんなくだらないやり取りをしていると、ティアが近付いて来て僕を抱き締めた。
「んなぁっ!!?」
「……ティア、どうしたの?」
「いや何、少し疲れてなぁ……」
どうやらユキセラピーを求めて抱き着いて来たらしい。
確かに、僕の麗しさからは謎の成分が滲み出して来てもおかしく無いが……ティアは今日、戦いでは無い面で忙しかったらしい。
ザイエと手合わせしていたのは、修行的な事もあるのだろうが、鬱憤晴らしもあったのだろう。
ティアの甘い匂いと柔らかさに包まれ、満足するのを待っていると、背後から白雪に抱き着かれた。
白雪はアランやザイエの前で人見知りを発揮していた事からも分かるが、人の多い街中はそれなりにストレスになったのだろう。
二人が満足するまで放置しようか。
「うむ……ここで微笑ましいとか思ったら俺も爺様と呼ばれてしまうのだろうか?」
「一度呼ばれてみたらどうだい? 心が温かくなるよ?」
「うーん…………悩む」
「ニャやんでる時点で手遅れニャ」
「まじで?」
「まじニャ」
抱き着かれている間に、明日の事でも決めておこう。
出来れば、地下水路の魔物は殲滅しておきたい。
ゴキが再発生しても気持ち悪いし、ゴキばかり倒しても、天敵の減ったナメクジが成長してしまうかもしれない。
岩兵やスライムは何処から沸いたか分からないから殲滅は難しいかもしれないが、せめてゴキとナメクジだけでも殲滅したい。
地底湖の巨大ゴキもだ。
あれらが生きていては同じ悲劇を繰り返すだけである。
南東の遺跡も浄化しなくてはならない。
強い瘴気を放つ個体は殆ど屠ったが、未だに遺跡の中ではゾンビやスケルトンが徘徊している、地下墓地までは追い返したい所だ。
これは僕じゃなくても出来るので、今の内にタク達にメールを送っておこう。
もし浄化が早く終わったら、鉱山街に行くのも良いかもしれない。
「……そう言えば、ユキ」
「ん? どうしたの?」
「近々王城にマレビトを招いてパーティーを行う事になった」
「ふーん、だから疲れてたのかい?」
「まぁ……そんな所だ。……それで、ユキはどっちで参加するつもりか聞いておきたい」
どこか不安げに聞いてくるティア。
どちらで、と言うと、僕の今の立場を鑑みるに……マレビトか、ティアの侍女か……という事かな?
「……折角だからティアと一緒に行くよ」
「そ、そうか! なら良いドレスを用意しないとなっ!!」
「ふふ……僕、一応は男なんだけどね」
「ユキには似合うと思うんだ!」
「うん、僕は何を着ても似合うと思うよ?」
「なら問題ないな!!」
「うん……そうだね……」
イベント発生って事かな?
・忘れられし島の攻略 完




