第37話 儚く砕けたガラス細工
第七位階上位
おちょくリヨンにどうこう言われたからではないが、文句一つ言わず敵を殲滅する事にした。
まぁ、多分全部壊してしまっても問題無いだろうし、此方もトップクラスの戦力を運用しよう。
今回ばかりは、白雪とレーベにも戦って貰う。
強化されたガラスの騎士は、俊敏性が大幅に増しており、その分低かった攻撃力も改善されている為、危険度が跳ね上がっている。
此方の残存戦力と強化ガラス騎士の戦力を単純に計算して、6人が全力で戦っても守護騎士を10体倒せるかどうかだろう。
案外と皆良い意味で僕の予想を裏切る所があるので、多分12〜13体くらいやってくれるんじゃ無いかと密かに期待しておく。
その計算の上で、追加の戦力を召喚しよう。
本当はイェガとかクリカを呼びたい所だが、2人は今の所小型化の力を持たないので、天井に上限があるこの場所では呼ぶ事が出来ない。
と言う訳で召喚するのは、リッド。モルド。ニュイゼ。そして白雪配下のもふもふ狼君と冬将軍閣下。
オートマタから、オルメル。ナヴァット。ケイロン。スーリャ。アナイス。ラダー。デューク。ゾルダ。マーセス。
これで戦力的には騎士30体を殲滅出来る計算だ。
それに加え、クレヴィドラグ軍団を駆り出し城の徹底的な破壊を行う。
最後に、エヴァを投入してボスを潰す。
僕は相変わらず高みの見物だ。
◇
「あわわわわっ」
リヨンが慌てている。
見窄らしい服装から一転、その美しい容姿に見合うドレスやティアラを装備し、正にお姫様と呼ぶに相応しい姿になったが、所詮はリヨンである。
先のニタニタとした意地悪な笑みから一転、崩壊しゆく城を見て、無闇と手や表情をバタつかせている。
……思うに、神と言うのは態と知能レベルを低下させているのでは無いだろうか?
いや、分からないけども。少なくともリヨンはなんか神っぽくない。
さて、そんなあわてリヨンを他所に、我が軍の攻撃は激しさを増して行く。
レーベとアルフ君の全力攻撃。
ルクス君と冬将軍閣下が引き付け、それ等を上手く盾にして戦う氷白&ミスティペアと白雪、ニュイゼ。
戦場を駆け回るもふもふ狼と、城壁を粉砕して回るモルド。
分体リッドを武装し、戦闘力を大幅に増したオートマタ部隊はそれぞれ一体の騎士と相対し、クレヴィドラグ軍団はモルドの壊し残しをバラバラに粉砕する。
これ程の攻撃、これ程の破壊を前にしても、敵は未だ健在であり、ガラスの騎士達は其々の武器を振るい、城や残った城壁からはガラス製の攻城兵器が配下の子達を襲う。
そんな激しい戦場を見て、リヨンは震えている。
「あ、あぁ……お城が……私が貰う筈だったのに……お城がぁ……!」
はて? 私が貰う筈だったとは。
……作ったのはリヨンだろうし…………もしかして、材料費は経費で落ちる的な感じだろうか? 白兎のお店が幼神を育てる事業として出資してるとかで。
……まぁ、どのみちリヨンに関しては自業自得である。
◇
程なくして戦闘は終結した。
生存者は、ルクス君のみ。
まぁ、幾ら強化されているとは言え、ガラスの騎士の攻撃力はそう強大なモノでは無く、瀕死による脱落者はいない。多くは魔力切れや精神力切れだ。
レーベとアルフ君は敵の数を早急に減らす為全力全開で攻撃を繰り返し、両者共に3体を屠って魔力切れとなった。
それでも肉弾戦で1体ずつ引き付け、最後まで戦い抜いたのだから、十分な戦果である。
オートマタ部隊は、リッドの補助を受け、それぞれ1体の騎士を処理した。
オートマタ達だけでは、勝てるかどうかは五分五分……より一回り程下回る計算だったが、リッドの補助とそれぞれの奮闘で、僕の期待に十分に応えてくれた。
残りの15体も、白雪やニュイゼ、リッド達が限界まで戦って、城壁破壊をしていたモルドも喰らい付き、最後の1体は盾となったルクス君と城壁を破壊していたクレヴィドラグ軍団が協力する事で、どうにか倒す事が出来た。
残ったルクス君は、絶大な防御力を発揮し続けた代償に相応の消耗があるので撤退して貰った。
結果的には、予測よりも多いが密かな期待よりも少ない戦果となった訳だが……十分である。
後は、ボスをエヴァが屠るのみ。
しょんぼりしているリヨンを急かし、外観が既にボロ屑のお城へ、エヴァを連れて足を踏み入れた。
◇
表の広い階段を登り、ホールを抜け、殊更に飾り立てられていた広間に辿り着いた。
そこは玉座の間。
本来であれば玉座があるべき場所には……ガラスで出来た棺桶があった。
その中には、リヨンに良く似た、しかしリヨンと違って金色の髪の少女が眠っていた。
……ガラスの騎士に追われ、ガラスの騎士からお宝を得て、そして見た目と違って粗暴で意地悪な性格……。
僕はリヨンへ振り返った。
「……つまり、リヨンは偽物だった……?」
「ちっがぁーーうっ!! こっちに武器向けないで!」
エヴァがスチャッとリヨンに向けた銃口を遮り、彼女に向けて微笑んで見せる。
「……冗談冗談」
僕がニコニコと笑顔を浮かべ、リヨンを宥めていると、エヴァは無表情で呟いた。
「提案を受諾。リヨンの背後に回ります」
「……」
「……」
「回りました」
流れる沈黙の中、エヴァはスタスタと歩いてリヨンの背後を取り、その旨の報告をしてくる。
リヨンはジト目で僕を見詰めた。
「……」
「……な、なんとか言いなさいよ!」
「ナントカ」
「むきーっ!!」
ドレス姿で地団駄を踏むリヨン。折角の衣装と容姿も、中身がコレではお姫様に見えない。
いやしかし……エヴァは誰からの提案を受信したんだろうね? 黒霧かな? 黒霧なら命令と言う形になる筈だし違うかな?
ただ一つはっきりと言える事は……エヴァって無表情の割に結構いたずらっ子だよね。
僕らがそんなやりとりをしていると、棺の少女がパッと目を開いた。




