第26話 一方的に
第七位階上位
名残惜しいがダイヤの王と別れた。
何でも、情報は白銀の神によって厳正に管理されており、あんまり話すとペナル……お茶会に招かれるらしい。
そんな事を、何処からか取り出した手紙に目を通し、硬い笑顔を浮かべながら言っていた。
白銀の神は金の神に最も近い強大な神で、正妃の座に最も近い神なのだそうだ。
……取って食われるのかな?
……結局、ダイヤの王の名前を聞く事は出来なかったが、神の領域に至った時の楽しみが増えたと思っておこう。
そんなこんなで、ネズミがちょろちょろしている街を進む。
程なくして辿り着いたクラブの城は、門が開け放たれているが……外壁が無かった。
まるで鳥居か何かの様に門だけがドンと鎮座しており、城の周りは広大な花壇や無数のプランターで花畑の様になっている。
そんな広場の門前で、クラブの王とその部下達が、それぞれの金棒を地に下ろして整列していた。
因みに、クラブの王はニコニコ笑顔。その部下達は白いマスクを被っている。不気味な集団である。
……元々マネキンみたいにマスク付けてる様な顔の筈なのに。
「やっと来ましたね〜」
そう言うやクラブの王とその部下達は金棒を担ぎ上げた。
ちょうど良く広場だし、直ぐに戦うのだろうか?
「君達を倒せば良いのかな?」
それなら配下の子達からちょうど良いのを見繕って——
「——いーえ〜。戦いなんて野蛮ですよ〜」
ニコニコと笑顔を絶やさず、クラブの王は言い切った。
「——私が叩くので〜、叩かれててくださ〜い♪」
……やっぱりヤバイ奴だったか。
クラブの王は僕のジト目も意に介さず、ニコニコ微笑み、はっと何かに気付いた様な顔をした。
……なに? 何か思いついたの?
「すみませ〜ん。間違えました〜」
クラブの王は、笑顔変わらず言い放つ。
「——私じゃなくて、私達でした〜」
……そんな事だろうと思ったよ。
さり気なく言霊を使っているのは、そう言う主張が激しいタイプの人なのか、それとも演出か何かのつもりなのか。……百歩譲って、僕の為?
◇
一方的に金棒で殴られる修行。
元々肉体が頑強な者にやらせても意味はなく、かと言って柔らかい者で受けの技術がない者では強化トランプ兵の打撃に耐えられない。
そんな訳で呼び出したのは、サンディア。ルーレン。レイーニャ。ルカナ。クラウ。ロニカ。セロ。リーン。睡蓮。茉莉花の10人。
サンディアは再生力頼りな戦い方をするので、ここ等で上手い受けの技術を学ばせるのが良いだろう。
睡蓮と茉莉花は、実戦経験が殆ど無いが、センスは悪くないので、元来の頑強さを盾に技術を身に付けて貰おう。
ルーレン、レイーニャ、クラウ、リーンの4人は、後衛タイプなので直接戦闘では脆い。良い機会なのでしっかり自己防衛の技術を得て貰う。
ロニカとセロの2人は良いとして、ルカナは……いや、良いか。プライド高いけど一方的に殴られるのも許容できるみたいだし。
僕から言える事は1つ。
僕程になれとは言わない。
ただ、ダメージを少しでも抑えられる様な受けを学びとって欲しい。
「そりゃ〜!」
気の抜ける声と共に大きく横なぎに振るわれた金棒が、僕の肩にぶち当たる。
衝撃を体内で分散して受け、その多くを地面に受け流した。
一気に渡そうとすると足が砕け散るので、分散と同じ要領でやらなければならない。
どうやら金棒には中身に空洞があり、重りが仕込まれている様だった。原理的にはショックレスハンマーと同じで、衝撃が全て対象に移される様になっている。
まぁ威力自体は強いが、そもそもの衝撃を全て受け止めているので、単に二度衝撃が伝わって来るだけなんだけどね。
恐ろしいのは刺だが、そこは仕方ないので魔力操作でピンポイントの防壁を作り、衝撃を点ではなく面で受ける事でダメージを回避する。
また、物理的な衝突とは他に込められた仙気も受け流す。
此方は、単純な衝突のエネルギーとほぼ同じ動きをするが、比較的魔力に反応しやすく、エネルギーの動きが物理的なそれでは無い。
仙気を同じ要領で受け流しつつ、更に分散して破壊を撒き散らそうとする打属性の余波を魔力操作で段階的に受け止め、中和して吸収する。
ここまでやって、ようやく完全な受け流しが完了する。
……まぁ、支障の無い範囲で受け止めているので、完全に受け流したとは言わないが。
傍から見ると、完全に無傷で受け流したどころか魔力量が増大している様にさえ見えるだろうが、その実相応の精神力の消耗があるので……モロに受けて再生した方が継戦能力的には良い。
だが、それは完全に肉体を超越している精神生命体のみが出来る事であり、それ以下がやるなら肉体の損耗が少なく済む前者の方が良い。と言うか、後者でやれば前者よりも痛みでの精神力の消耗が激しくなる事が予測される。
つまり、肉体を使い捨てに出来る者は受ける方が良いし、そうでない者は受け流す方が良いと言う事だ。
では、嬉しそうに金棒を振り回すクラブの王は置いておいて、周りの子達を見てみよう。
先ずはサンディア。
見たままに言葉にするなら……爆散。
その実、衝撃を分散して受けたが、体内で威力を回す事が出来ず、仙気への対応も疎かになり……末端部分から破裂した。
これには殴った方もドン引きの様子で、ビシリと硬直している。
……サンディアの場合は、肉体の損耗も再生でどうにかなるので、体のどこかで受けてそのまま振り抜かれる方がダメージが少ないだろう。
しかし、今回の趣旨は攻撃にも転用出来る技術の習得。もとい迅斬術の習得である。
その点で言えば……サンディアは一番上手く出来ている凄い子だ。
あと、思考加速と肉体制御と魔力操作がもう少し……もう2倍くらいあれば見れる様になるだろう。
……やり方に慣れれば今のレベルでも十分出来るけどね。
レイーニャとルーレンは、防御力を上げて亀になり、仙気の分解に挑んでいる。
クラウ一行は皆涼しい顔してぶっ飛ばされ、ダメージを抑えつつ仙気吸収の訓練をしており、中でも器用なクラウは優れた操魔力を発揮している。
睡蓮と茉莉花は散々喚くが放って置いても良い程度で、ルカナは……もう一歩と言ったところか。
ただ殴られるだけと言うのもそう悪い物では無いな。
そんな事を思いながら、僕は次の一撃を受け流すのだった。
三周年です。
今後もよしなに。




