第18話 四人の王
第七位階上位
ベルベルと別れ、当初の目的通り4つの小山を目指す。
正直望み薄だが、無理なら無理で、多分何か別のクエストが見つかるだろう。
ランドマークが4つも密集してるんだから、期待も大きい。
◇
森を抜け、草原に戻った。
そこでは、僕の部下が筋肉達と組み手をしたり、瞑想したりしていた。
前々から思っていたし、幾らか実行して来たつもりだが……実戦ばかりではなく、ここらでちゃんと稽古を付けてやった方が良いだろう。
他勢力の動きが見えない以上警戒は必要だが、最悪僕1人満足に動ければ大体どうにかなる。
今はバックアップとして十二分の黒霧もいるし、シャルロッテやアトラ、エヴァみたいな飛び抜けて優秀な駒もある。
何なら僕がいなくとも如何とでもなる環境が整って来ている。
近々配下の子達を徹底的に鍛える期間を作るとしよう。
目敏く僕に気付いた子達に手を振って、おまけでレーベにウインクしてから草原を後にした。
◇
草原を越え、惑わしの森を道なりに抜けて、ぬいぐるみの街を通過した。
着いた場所は、まるで森の様に、メルヘンな街灯や可愛らしい装飾の柵、小さな家々で囲まれた不自然な広場。
絶対に何かあるだろうと警戒しつつ、広間の中央へと歩みを進め——
《【運命クエスト】『孤高の王と迷える子供』が発令されました》
《
【運命クエスト】
『孤高の王と迷える子供』
参加条件
・王に遭遇する。
達成条件
・王の試練を越える。
失敗条件
・無し
・備考
誇り高き王の試練を越え、王の真髄をその魂に刻め。
・主な出現魔物
ハートの王
ダイヤの王
クラブの王
スペードの王
トランプ兵
》
——気付くと僕は囲まれていた。
「小娘、待ちくたびれたわ」
声を掛けて来たのは、僕の左、西側に立つ赤い服の小柄な女。
鋭い目付きで糾弾する様に此方を睨む様と言い、灼熱の如き装飾の施された赤い豪奢な服と背負われた赤い大剣と言い、さながら赤き王と言った様相である。
しかし、よく見ると王冠や服、大剣にはハートの装飾が見て取れる。
腰まで伸ばされた僅かに赤味が混じる黒髪を払い、胸を張って僕を見下す様に顎を上向けた。
「おーほっほっほ! 待った甲斐のある子だと期待してますわー!」
上品な仕草で高笑いして見せたのは、僕の正面にいるキンキラの大女。
ポニーテールの派手な金髪にアングレサイトの瞳、髪留めやドレスアーマーには様々な宝石が散りばめられており、獲物は傍に立て掛けられた大槍と盾。
僕よりも頭2つ分程背が高いが、長いと言うよりも……相似形。巨人の一種……にしては小さい。巨人の血を引く人間と言った所か。
よくよく見ると、瞳の色が左右で極僅かに異なっている。
「ふふ、みなさん嬉しそうですね〜」
何処か他人事の様にそう言ったのは、僕の右、東に立つ巨大な金棒を持った女。
全体的に緑っぽい、草原の様な装飾のふんわりとした衣服を纏い、明るい茶髪を三角巾で纏めている。
他人事の様に言う割に、榛色の瞳はじっと僕を見据え、興味津々とばかりに見開かれていた。
「すまないね、皆君と会える時を今か今かと待っていたのさ」
ややハスキーな声でそう言うのは、僕の後ろに立つ長身の女。
僅かに青味がかった髪は肩に掛からない程度のショートヘア。
青の装飾が施された白い軍服の様な装備を纏い、腰には直剣を佩いている。
おそらく、この4人がメッセージにある王達だろう。
その立ち居振る舞いからは、それぞれ違ったカリスマを感じる。
ハートの王 LV600
ダイヤの王 LV600
クラブの王 LV600
スペードの王 LV600
ざっと見た感じレベルこそ600だが、他の連中と同様にその技量、意思はレベル600の範疇を逸脱しているだろう。
脅威度と言う点で見れば、想定レベルは優に700を越える。
完全武装のそれらに囲まれた現状は、あまりよろしくない。
「……君たちを倒せば良いのかな?」
そう問う僕に、ハートの王が大剣を引き抜き、応えた。
「ほう? 余等を相手に戦う気かしら? その意気や良——」
「——良くなーい!」
ニヤリと好戦的な笑みを浮かべたハートの王を止めたのは、スペードの王。
ハートの王は大剣をひょいと背負い直し、肩をすくめた。
「ふ、わかっているわ。小娘がやりたそうだったから応えたまでよ」
「まったく……そちらも武器を下ろしたまえ」
「はて〜? 何の事でしょうかー?」
クラブの王はニコニコ微笑みつつ惚けた発言をし、振り上げていた金棒を肩に担いだ。
……成る程、クラブの王が一番ヤバい性格をしているのか。
そこで、黙って微笑んでいたダイヤの王が口を開いた。
「それでは顔合わせも済んだ事ですし、各自約定通りに参りましょう」
「何故貴方が仕切っているのかしら、脳キンデカ女。締めは余の筈よ」
「違いますよー。締めは私ですー」
「いや、その役目は僕の仕事だよ? 皆台本ちゃんと読んでるのかな?!」
やっぱり台本あるんだね。
わちゃわちゃと姦しく鍔迫り合いをする4人。これは皆して我が強いのが原因の一つだろう。
時間にして僅か数分のやり取りの後、スペードの王が声を張り上げて締めに掛かった。
「えぇーい! 強引に締めるね! 僕は最後の城で君を待ってるよ!」
言って間も無く、スペードの王は宙に溶ける様に消えた。
「仕方ないですね〜……私は3番目の城で待ってますから、早く来てくださいねー」
そう言うや、クラブの王もふわりと消滅した。
「わたくしは2番目の城ですの。歓待の準備をしてお待ちしておりますわ! おーほっほっほ!」
ダイヤの王は上品な高笑いをして消え去り。
「……小娘、最初は余が、余直々に相手をしてあげるわ。ありがたく思いなさい」
ハートの王は一貫した上から目線での発言を残して消滅した。
改めて、元山、現4つの城へ視線を向ける。
各城は各スートの装飾がなされ、どの城が誰の城なのかは直ぐにわかった。
「……最初はハート」
一番西にあるお城。
彼等の求める台本通り、西、北、東、南と進もうじゃないか。




