第16話 vs.雪精姫 ニ
第四位階上位
雑事をパパッとこなして、戦闘に移る。
今の一瞬の攻防でわかったが、雪精姫は戦闘慣れしていない。
ナイフが飛んで来た時点で避ければ良かった物を、1枚目の壁を一瞬で貫いたのを見てから回避行動に移った。
その結果、予想通りナイフは雪精姫の肩を穿ち、腕を切り落とした。
「ここはあたしの領域よっ!」
雪煙の中で戦闘準備をしていると、唐突にそんな宣言が聞こえ、直後、猛烈な吹雪が吹き始めた。
流石は氷の上位精霊である。
まぁ、このくらいは予想の内。
続け様に、雪精姫は空と地面から氷の槍を放ち始めた。
槍雨と槍林——
——降り注ぐ槍の雨を避け。
——突き上げる槍の木々を避け。
——避けて避けて、避け続ける。
立地が悪くて避け辛いが、雪精姫の思考は読み易い。
考えて無さそうで実は良く考えている攻撃は、考えている故に返って読み易い。
先程から僕を誘導して槍の檻で閉じ込めようとしているが……まぁ、気付かれている事に気付いていない時点でその程度である。
「このっ!!」
ついに焦れたらしい雪精姫は新たな魔法を展開した。
吹雪が渦を巻いて、僕の周囲に氷の壁を作る。
閉じ込められたと言う事だ。しかし——
得意げに無い胸を張った彼女は、次の瞬間驚愕の表情を浮かべ墜落する事になった。
吹雪で一瞬視界から消えた僕が鉄の槍を投擲していた事に、槍が直撃してから気付いたのである。
当たった部位は足の付け根、打属性を込められた槍は、直撃すると同時に当たっていない部位をまとめて破壊し、足を落とした。
両手と片足が無くなった姿は、中々にスプラッタな光景だ。
両手は僅かに修復し始めているが、直ぐに修復されないのはザイエが腐竜王にやったのと似た原理を利用しているからだ。
この隙に鎚鋏で、バカみたいに分厚い氷の壁を破壊して脱出する。
やはり雪精姫は戦い慣れていないのだろう。
雪山と言う自分の領域で、周囲の雪を味方につけ、苦戦した事は一度も無いに違いない。
◇
地面にボフッと墜落した雪精姫。
ただ落とされた訳でもあるまい。
大方、地面の雪を吸収して肉体の修復を早めようとしているのだろう。
わざと勢いよく地面にぶつかる事で、雪煙を立て自分を隠し、僕の視線から逃れる。
次の攻撃は十中八九、修復の時間を稼ぐための拘束系、殺傷能力は低い。
「はあぁぁっ!!」
雪精姫は気合いの声と共に魔力を放ち、僕の周囲一帯の雪へ魔法を掛ける。
——それはさながら薔薇の花。
雪山に咲き乱れる巨大な氷の薔薇は、その荊を蠢かし、四方八方から僕を囲むように包み込んだ。
自律行動型の魔法、言わば即席ゴーレムの様な物だ。
勿論其処には核がある。正確には核になる術式が。
それを破壊するか、薔薇に込められた魔力が無くなるまで、この薔薇は僕を追い掛け続けるだろう。
いちいち破壊しに行くのでは無駄に時間を食ってしまうので、此処は一気に全て破壊する事にする。
接触している荊から薔薇の魔力を感じ取り、それぞれの核の場所を解析する。
生物や物質ではなく、魔法であるからか、核の場所は直ぐに探知出来た。
そこへ荊を伝って魔力を流し込み、全ての薔薇を破壊する。
——この間、実に1秒未満。
これで彼女は碌な修復も出来まい。
荊の拘束から逃れ、雪精姫を見た瞬間——
——僕の目と鼻の先に
——全てを凍らせる閃光が迫ってきていた。
まずっ——




