第15話 vs.雪精姫
第四位階上位
僕は、雪精姫の前まで行くと、ウルルから降りる。
「ふふ、人の子が此処に来るなんて初めての事だわ」
雪精姫はそう言うと、ふわりと浮かび上がり雪の上を滑る様に此方へ飛んできた。
僕の目の前で止まった雪精姫は、唸り声を上げるウルルを無視して、僕の髪に手を伸ばした。
「綺麗、綺麗よ、この髪も、この顔も」
雪精姫は僕の髪をすくと、そのまま頰に触れた。
氷の様に冷たい手が、僕の頰を愛おしげに撫でる。
「この子も素敵……綺麗な毛並み……氷漬けにしたいくらい」
雪精姫は、恐ろしい事をのたまうと、僕らからすーっと離れ、元いた場所に戻った。
「あたし、あんた達が欲しくなっちゃったわ……悪いけど、あたしの物になって貰うわよ?」
そう言うと、雪精姫は空中に浮かぶ。
いや、雪が盛り上がっている様だ。
キングスノーマン LV120
スノーウルフロード LV117
雪の中から姿を現したのは、雪そのもの。
と言うか、巨大な雪ダルマである。
そして背後にはスノーウルフの上位種、スノーウルフロードが回り込んでいた。
正に、僕くらいなら毛に潜り込む事が出来そうな程のモフモフである。
「あたしが死ぬか、あんた達があたしの物になるか。ふふ、さぁ、戦いましょう?」
「ん? それはちょっと違うよ」
「? 何が違うと言うの?」
「僕も君の事が欲しいからね」
「え? ……な!?」
雪精姫をテイムすれば、もれなくキングスノーマンとスノーウルフロードが付いて来る訳だ。
これを手に入れない理由は無い。
問題は雪精姫が、僕の下につく事を良しとするか否かだ。
「ば、ばば、ばかな事言ってんじゃ無いわよ! あ、あたしを欲しいなんて……ば、ばかよ! ばーか!!」
「ふふ、嘘じゃないよ? 僕は、君が、欲しい」
「なぁ!? な、なな、何言ってーー」
どうやら攻められるのには慣れていない様子、わざと言葉を強調して伝えると更に赤くなって慌て始めた。
こう言うのはしっかり利用させて貰おう。
「だから、勝負内容はこうしない? 僕が勝ったら君は僕の物、君が勝ったら僕は君の物」
「ぁうぅ………………ふ、ふふん、良いわ、その条件、飲んであげる」
「本当に?」
「あたしは生まれてこの方嘘なんてついた事無いわ! それに、やると言った事は全てやって来たっ! あんたはあたしの物にするっ!!」
「ふふ、そう言う事なら、僕も本気で行かせて貰うよ」
雪精姫は両手を広げて魔力を高め、僕は、カルキノス、ノーライフ、狼人化、を発動させる。
能力を発動させればほぼ同格の相手。
初めての戦闘らしい戦闘が——
——始まった。
◇
先攻は僕である。
予備動作なく飛び上がると、一直線に雪精姫へ接近、突き出した腕は右腕。
咄嗟の事にも直ぐに対応した雪精姫は、一瞬で分厚い氷の壁を張った。
これがただの貫手ならそれでも十分防げたのだろうが……。
……残念ながら、僕の右手は剣である。
突き込んだ右手は、氷の壁を紙のように貫いた。
そのまま、驚愕の表情を浮かべ慌てて回避し始めた雪精姫の肩を貫く。
「きゃ!?」
青い魔力が血の様に飛び散り、その腕を切り落とした。
雪精姫は接近戦は危険と考えた様で、何十枚もの氷の壁を張りつつ、瞬時に空中へ避難していく。
隙が出来たので、キングスノーマンには此処で退場して貰おう。
僕は、水が流れる様に素早く動き、左腕をキングスノーマンの頭に叩きつけた。
その際に魔力妨害の応用を使って打属性魔力を一気に流し込む。
これで確実に壊れた事だろう。
勿論手加減している。
核のある場所は解析済み。
其処だけを避ける様にして打属性で破壊したので、短くても十数秒は稼げるだろう。
フリーになった右手は、既に腰のナイフを抜いていた。
込めた魔力は斬属性、最小限の動作でナイフを投擲する。
氷の壁を貫く毎に威力が減衰しているが、狙い通りもう一方の肩を貫き、弾けた斬属性がその腕を切り落とした。
「くぅ!」
雪精姫の短い悲鳴が聞こえ、僕は巻き上がった雪煙の中へと落下する。
煙の中へ落ちる直前、背後を確認する。
ウルルとスノーウルフロードの戦いは、立地的にスノーウルフロードの方が有利だが、実力的にほぼ互角の戦いとなっていた。
取り敢えず仕切り直しである。
雪煙で見えない内に色々とやってしまおう。




