第17話 常夏の島
第七位階上位
燦々と降り注ぐ陽光。
何処までも続く白い砂浜。
寄せては返す波は穏やかで、波間に覗く海中は色取り取りの魚達が泳ぎ、生を謳歌している。
ここは海世都市・ニライカナイ。
それを改造した浮遊都市、バランディース。俗称、楽園都市・バラン。に、ある5つのエリアの内の1つ、エスターテ島、別名夏島である。
僕はサマーベットに寝転がり、淡い色のサングラスを掛けて、海で遊ぶ面々を眺めている。
服装は、白ベースに水の流れをイメージした青の幾何学模様を装飾し、ルェルァに作らせたアウイナイト含む青色の宝石をちょこちょこあしらった僕用のスイムウェア。
ショートパンツとタンクトップ、その下に相変わらずの黒インナーが縮小して装着されている状態だ。
世間一般ではこれをタンクトップビキニ、通称タンキニと呼ぶ。
尚、タンクトップとショートパンツは僕の基本的な家着であり、タンキニを意識して作った訳では無い。
換装したら勝手に黒インナーがそう言う感じの形になっただけで、僕の責任では無い事をここに明言しておく。
そんなバカンス的な状況ではあるが、勿論僕は今遠隔で研究を進めている。
——純粋な生命エネルギーの塊であるそれ等は、単純な体力回復以外にも様々な可能性を秘めているのだ。
具体的には、生命活動を続ける上で必須となる物質へ変化する性質、もっと言うと、その多様性。
それを上手い事調整すれば、マレビト等向けの様々な使い捨てアイテムを開発出来るだろう。
そんな感じの研究開発をぼちぼち続けていると、僕の上でもぞりと動く影一つ。
それは桃色の兎と赤い宝石が装飾されたワンピース水着を着込む小さな影。
——うーたんである。
「うにゅぅ」
先程からうーたんはうにうにうにゅうにゅ言いながら僕の上で蠢いている。
ここ数日はまともに構ってやれていないので、うーたんは今甘えん坊モードなのだ。
……まぁ、構って無いのは僕離れをさせる為でもある訳だが、今暫くは我慢記録を伸ばして行く形で十分だろう。
と言う事で、うにゅりと上体を起こしたうーたんの赤い瞳に、サングラスを下げる事で視線を合わせる。
はっきりとうーたんが僕の目を認識した所で、直ぐにうーたんの後方へと視線を逸らした。
うーたんの後方には、珍しくもはしゃいでいるアルティアことあーたんと、それに付き合うグンガーダことぐーたん。それから、自力で取得したらしい浮遊スキルで宙を漂うシュクラムことしゅーたんと、波打ち際に座って波と戯れつつも此方をチラ見するお姉ちゃんなめーたんがいる。
視線でそれ等を指し示しつつ、一言。
「……うーたんは皆と遊ばないのかな?」
「にゅ……?」
すると、うーたんは暫しうにゅうにゅ言った後、また僕の胸元に顔を埋めた。
すりすりと頬擦りするうーたんのピンクな耳が、僕の目前で揺れる。
「……はむ」
「にゅぁ〜、くしゅぐったいのぉ〜」
嬉しそうにそんな声を上げたうーたんは、暫く頬擦りした後、一際強く僕を抱き締めてから、上体を起こした。
彼女は僕に馬乗りになったまま、じっと僕の瞳を覗き込む。
「……じゃあ、行ってくるの」
そう言いながら、僕から離れようとしたうーたんを捕まえる。今度は僕からギュッと抱き締めた。
その数秒後、少し強引に引き離す。
ボケッとした顔のうーたんに視線を合わせ、ニコリと微笑みながら一言。
「うーたん。行ってらっしゃい」
先程まで少し寂しそうだったうーたんは、キラキラと光る星々の様に瞳を輝かせて——
「ふにゅっ、行って来ますなのぉー!」
——それは正に脱兎の如く。
レベル400後半の力を遺憾無く発揮したうーたんは、白い砂浜にピンクの残像を残し、波打ち際から海へ飛び込んだ。
うーたんは跳んだ。
跳んで。
翔んで。
飛んだ。
沖合で海溝に嵌まり込み、海を静かに満喫していたクリカを飛び越え、遥かその先へ——
「——黒霧」
「次元移行」
「——にゃぁぁぁぁあむ!?」
黒霧が空間魔法で転送したうーたんをキャッチする。
悲鳴を上げて縮こまっていた様で、耳が力なくヘニョっていた。
「…………飛び過ぎたの」
「飛び過ぎたね」
暫くうーたんと戯れて、復活したうーたんが今度こそ普通に海へ繰り出すのを見送った。
◇
うーたんを見送って間も無く、寝転がって研究を続ける僕に2つの影が差した。
見るまでも無く気配で分かるが、白夜と紅花の2鬼である。
白夜は、紅花を無意識に意識した赤白ボーダーのラッシュガードを着込み、慎ましやかな体型を隠している。つもりの様だが、却ってスレンダーな体型が強調されている様にも思う。
まぁ本鬼が納得しているのなら良いのだろう。
対する紅花は、燃える様に真っ赤なビキニだ。
羞恥心なぞ欠片も無い彼女は、動きやすいと言う理由でこのビキニを選んだ訳だが、大きな胸元のクッションと言い、常態では主張し過ぎないしなやかな腹筋を要する括れた腰と言い……その雑破な性格とは裏腹に魅力に富んだ体付きは、一部女子に血涙を流させる事態になりかねない。
そんな事を考慮して真紅のパレオを用意したのに……それは何故か赤マフラーが如く首に巻かれていた。
……邪魔だったのかな?
それは兎も角として、2鬼、もとい白夜の僕に対する用事だが……おそらくアレだろう。
彼女が持っているのは、天殻樹の素材を使った合成皮革と高位の魔晶核を用いて作られた特別製のバレーボール。
レベル600代のサーブにも余裕で耐える化け物ボールである。




