第10話 門
第四位階上位
森の中を進み、壁があった所を通過した。
ちゃんと壁は消えていたので、試しに地脈を探ってみたが、全く感じ取れなかった。
狼人に変化して見ると、僅かに感じ取る事が出来たので、狼人状態だと感覚機能も向上するのだろう。
地脈の流れは正常な物に戻っていた。
つまり、あの壁は僕の性能では感じ取る事すら出来ない程の強力な魔力関係の結界、と言う事である。
それらを解明出来れば、自力で制限を解除する事も可能だろう。
「待たせたね、先に行こうか」
「何をしてたんだ?」
「ちょっと地脈を探っていてね」
「……はぁ、お前は……良いや、そのまま進めよ、追い掛けるから」
「? そうだね、行こうか」
「おう」
何やら良く分からないが、とにかく先に進むと言う事で纏まった様である。
◇
森をずっと進むと、唐突に森が開けた。
「ほう、中々に幻想的だな」
「これは遺跡だね……ふむ、あそこに門がある、行こう」
遺跡はそこまで広い物では無く、大きな門は此処からでも見える程には直ぐ近くにあった。
そこへ近付いて行くと、遺跡の敷地に入った途端、何か不思議な魔力を感知した。
良く見てみると、遺跡には薄い結界が張られていると分かる。
普通に通過出来たと言う事は、この結界はプレイヤーと別の何かを分ける為に存在するのだろう。
おそらくそれは魔物、つまりここは安全地帯であると考えるのが妥当だろう。
門の前まで行くと、あったのは一つの巨大な門と、その周囲にある六つの円形の舞台。
「これは……何の施設だ?」
タクの言う通り、これは何がしかの目的を持った施設であろう。
形状、魔法陣、魔法文字から察するに、この門と舞台は繋がっている。
舞台の真ん中には台座があり、その台座は魔法陣が描かれた器になっている様で、台座の上に魔力がある物を乗せると、台座がそれから魔力を吸収し、門へ繋げる、と言う構造になっている。
続いて、門に近付いて触れて見る、狼人化して感覚を強化、門の深くへと意識を伸ばす。
「……ふむ、成る程……」
「何かわかったのか?」
「うん、簡潔に言うと、これは転移装置だ」
「なに?」
十中八九間違い無い、爺様の転移魔法を見ていたお陰でコンセプトが掴めた。
この門は地脈に接続されていて、台座から伝わって来た魔力を呼び水に地脈から魔力を引き上げて転移を発動させる仕組みになっている……筈だ。
問題は、爺様のそれとは色々と異なっている事。
おそらくこれは、他の転移装置と繋がっている、つまり任意の所へは跳べないと言う事である。
「ふむ、これはまだ使えないみたいだね」
「そうか、それなら仕方ないな」
「タク、これと同じ物を見つけたら、あの台座に魔石を置いて念じればここと行き来出来る筈だよ、一応覚えておいてね」
攻略の助けになるだろうと思い、タクにそう伝えたのだが。
「……そう言えば思い出したんだが、俺、これと同じのを前に見た事がある、確か——」
タクはそう言うと、話を始めた。
先ず、どうしてタクがこのゲームを大量に持っていたのかと言うと、タクがこのゲームのβ版をプレイして、そこそこ貢献したかららしい。
以前タクに言われて、このゲームの映像に隠された問題を解いた事があるのだけど、その時のそれがβ版をやる為の鍵だったらしい。
道理で、タクの一学期のテスト点が少し悪かった訳だ、その時期にβ版に集中していたのだろう。
僕もテスト勉強は手伝っていたが、裏にそんな事情があったとはね。
ともあれ、そのβ版ではスタート地点が遺跡の様な場所で、其処には、人の代わりにゴーレム達が生活していたのだとか。
門はその遺跡の中にあり、特に何かがあると言う訳でも無いので、すっかり忘れていたらしい。
「それじゃあ少し試してみようか」
「あぁ、でもβ版の時の話だぜ?」
僕は、インベントリから魔水晶を取り出すと、台座の上に置いた。所詮は呼び水だが発動する魔法が魔法なので魔水晶だ。魔力量的には十分な量の筈である。
「それじゃあタク、念じて」
「おう」
僕がそう言うとタクは目を瞑った。
すると、魔法陣は直ぐに起動し、魔水晶の魔力が吸い出され、門へ伝わり地脈から魔力が引き上げられる。
門からは、引き上げられた輝く魔力が流れ出し、それらの光が舞台を囲んで行く。
光が舞台を覆い切った瞬間、足元の舞台が急激に強い光を放ち視界が白に塗り潰された。
成功かな?
◇
視界が元に戻った時、其処には、大きな遺跡が広がっていた。
成功である。




