第8話 未知の先へ
第四位階上位
ログアウトすると直ぐに部屋を出る、アヤは今はログインしている様だ。
「……ん?」
ふと、自分の思考に違和感を感じて立ち止まる。
……何故アヤがログインしている事が分かった?
部屋から出た時の感覚を思い出す。
ずっと動いて居なかったせいで僅かに鈍い体を動かして、ドアに向かい……そう、吐息が聞こえたからだ、壁を隔て、ドアに阻まれて聞こえる筈の無いアヤの呼吸音が。
「……気の所為……かな……?」
もしかすると昨夜に、生まれて初めて脳を酷使したせいで幻聴が聞こえたのかもしれない。
「……ふむ」
体を軽く動かし体の調子を確認して見るも、特におかしな所は無い。
うむ、気の所為だな。
◇
下に降りると直ぐに昼食を食べ、書き置きを残し、雑事をこなしてタクメールを確認する。
タクメールによると、西の森で色々と進展があったらしい。
先ず、西の森の奥に辿り着いたパーティーが、フィールド制限を確認。
帰還中にボスらしき個体に襲撃を受けて全滅。
タクは、今日の午後、ソロでボスを見に行くらしい。
午後は特に用事が無いので、追跡してみよう。
ベットに転がりヘッドギアを装着。
「オープンゲート」
意識がブツリと途切れた。
◇
ログインすると、先ず図書館の広間を見に行った。
そこでは、レイーニャは相変わらず魔法陣を描いており、若爺様は空中に浮かび本を読んでいた。
ザイエは広間の中央で、指一本で逆立ちして指立て伏せをやっている。
流石の魔力制御能力とバランス力である。
そのザイエは此方側を向いており、ちょうど角から覗き込んだ僕と目があった。
瞬間、硬直したザイエはバランスを崩し派手に転倒した。
……何をしてるんだか。
目を見開いて此方を見るザイエにブンブンと手を振ると、僕は図書館を後にした。
早速ウルルを召喚すると、アラン製の串焼き肉を食べさせてから騎乗。
人通りの少ない道を選択し、西の森へ急いだ。
西門を抜け、草原を越え、西の森の入り口でウルルを送還する。
何故か良く聞こえる耳を頼りに、プレイヤーを避けつつ、タクの声を拾って追い掛ける。
◇
暫く進むと、森の中に蒼の鎧を着た騎士の背中が見えてきた。タクである。
森の中を真っ直ぐ突き進むタクは、時折出てくるゴブリンやその上位種を相手に、剣を抜く事もなく対処している。
蒼の全身鎧は結晶大王蟹を模した形状をしており、右手には鋭い刃と棘が付いている。
タクはそれを使って、出てくるゴブリンの首を切り落とし、一撃で仕留めて行く。
死体は全て回収しているので、辺りは血が飛び散るばかりである。
そのまま進行を見守っていると、次々と襲い掛かるゴブリンの群れを薙ぎ倒し、遂にフィールド制限の壁に到着したらしい。
タクが停止して、空中を叩き始めたので間違いない。
……急にパントマイムに目覚めたとかで無ければ。
タクはフィールド制限を確認すると、壁に沿って歩き始めた。
特に見失う訳でも無いので、僕もフィールド制限を確認しようと思う。
タクが見えなくなるまで見送ると、早速フィールド制限の壁に近付く。
壁に触れ、試しに魔力の気配を感じ取る。
「……むぅ」
どうやら、フィールド制限は魔力による物では無いらしい。
風や温度、魔力の流れは阻害されていないが、プレイヤーとそのオドは完全に遮断されている。
つまり、プレイヤーがフィールド制限を越えて何かを行う事は出来ないと言う事だ。
更に詳しく壁の周りを調べると、遥か地下、地脈の流れを僅かに感じ取る事が出来た。
それに意識を集中させるが、分かった事はフィールド制限の先の流れと、此方側の流れが僅かに違う様な気がすると言う事だけ。
もしそれが事実だとしたら、このフィールド制限の壁は魔力による物では無いのに、魔力が流れる地脈と繋がっている事になる。
では一体そこで何が起きているのか?
……気になる、解き明かしたい、攻略したい。
眼前に広がる未知の道に僕はいつの間にか夢中になっていた。




