掌話 紅騎士、参る 二
第七位階下位
『それは……許可出来ません……』
セラは先と同様に、言い辛そうにしている。
『今のアルフでは……レヴァンティンを使役するのは難しい。と、創造主様は仰っておりました』
……まぁ、ユキが言うのならそうなのだろう。
確かに、レティから感じられる強大な力は、俺の手には余る。だが……。
『無理。とは言ってなかったんだろ?』
『それは……そうですが……』
なら頑張れば出来るって事だ。
全力で、本気で、死ぬ気でやれば、アトランティスの神霊金属を切断出来た様に、やれないと言う事は無い。
ユキが不可能と言わない限り、出来るもんは出来るんだよ。多少難しくてもな。
『……なぁ、駄目か?』
『……駄目、とは言いませんが……私では満足出来ませんか?』
『うーむ……満足出来ないと言えばそうだが……セラとレティ、2人を使いたいんだ』
レティの強大な力と、セラのコントロール能力。そして俺自身の力。
これらが合わされば、間違いなく機神と対等に戦える力になる筈。
確かに今のセラがいれば、レティの力の幾らかは使用出来るんだろうが……ユキ風に言えば、極々非効率だ。それに。
『セラならレティが暴走しても抑えられるんだろう?』
『……流石に、火がついたレティを止めるのは私だけでは……』
『なら俺が協力すればどうだ?』
『…………貴方のスペック次第ですね』
つまりは……。
『……実力を見せてみろって事か』
『ええ、そうなりますね』
となると、湖の迷宮程度じゃ役不足だな。
軽く性能チェックをして……その後は獄峰に行くか。
◇
『セラ!』
『はいっ』
俺の呼び掛けに応え、セラはレティの力の一端を解放した。
鞘全体から噴き上がる様にして出現した炎は、俺がアトランティスを斬った時の炎に近い、高濃度な火属性魔力が練り上げられた炎。
今にも暴走しそうな爆炎を抑え込み、巨大な剣を生成する。
精製した爆炎の剣を、炎の巨人へと振り下ろす。
ーー轟音。
防御に掲げられた巨人の棍とぶつかり合い、弾けた炎が溢れ出す。
拮抗ーー
巨人の持つ黒い棍棒から赤黒い炎が吹き上がり、レティの炎と絡み合う。
だが、質は此方が上。この拮抗を破るのは俺の制御力次第。
そしてそれもーー
『はぁぁっ!!』
ーー充分だ。
膨れ上がる赤黒い炎。
研ぎ澄まされる紅の炎。
拮抗は刹那。
紅の剣は黒を斬り裂き、巨人の体を両断した。
『やりました!』
『まだだっ!』
戦闘となると少し声が大きく、高くなるセラに注意を促す。
巨人の切断面に纏わり付く紅の残滓が、巨人の内から溢れ出た赤黒い炎によって喰い尽くされる。
赤黒い炎は互いに絡み合い、炎の巨人を瞬く間に再生させる。
数瞬の後、そこには無傷の巨人が立っていた。
だが、俺の感知によると、魔力総量は6割を切っている。
上手く重要部位を破壊出来たらしいな。
その上武器の棍棒も半ばから切断されたまま。後二度切れば終わりだ。
『これはっ……再生した……!? そんな、無理ですっ、撤退しましょう!』
どうやら、セラは戦闘経験が少ないらしい。まぁ、出来たばっかなら当然か。
その上能力の殆どがレティの力を制御する為に使われているらしい。
敵の状態を見れないのも当然っちゃ当然だろう。
『……良く見てろ、セラ』
『なにを……っ!?』
酷く驚いた様な、動揺している気配を感じる。
練り上げた魔力でレティの炎を纏め上げ、生み出したのは紅の刃。
先のただ炎を纏めて剣の形にした物とは訳が違う。
火を喰らい火を灯す、火滅の炎剣。
『これが、俺のっーー』
陽炎が世界を歪める。
剣を天へと振り上げる。
巨人が後じさった。
もう、逃げようとしても遅い。
『ーーぜんっ、りょくっ、だぁっ!!』
ーー紅が世界を染めた。
◇
『……貴方の力、確かに見届けました』
ドロップ品の小さくなった棍棒が、宙に溶けて消える様にユキの元へ転送されたのを見送ると、しばらく絶句していたセラが口を開いた。
少し気怠いのは、力の使い過ぎだろう。
『……これ程の力があるならば、確かにレティを御し切れるでしょう。……しかし、何故創造主様は私に嘘を……?』
『嘘っつうか……少し疲れた……力を使うと疲れるんだよ。だから常にレティを使い続けるのは困難って意味だろうな』
『成る程……確かに、全力で活動を続けるのは難しいですね……』
『まぁ、ある程度は全力で出来るんだ、その間だけでもレティと対話したい』
俺の言葉に、セラは少しの沈黙を経て、決然と言った。
『……分かりました、レティを一時的に解放しましょう』




