第6話 ある日森の中で
第四位階上位
皆を見送り、僕は採取に勤しむ。
目的としては、薬草、毒草、魔法式用の塗料になる草、木の実、石、珍しい鉱石、他。である。
やはり、草原と違って森の中には多くの植物がある。手に入る物も様々だ。
例えば——
薬草 品質C レア度2 耐久力D
備考:竜が好んで食べる薬草
この草は竜草と言って、備考の通り、竜が好んで食べる薬草だ。
成分を煮出すと、そのまま下級の回復薬として使えるとても高価な代物である。
僕がいる場所は、森の奥の比較的山に近いところなので、普段は獣も多く、人があまり入らないのだろう。
そこには非常に便利な竜草が群生していた、根こそぎ取っても問題無いと思うが、一応半分くらいにしておく。
一説によると竜の生命力の影響を受けた植物が進化した物と言われており、これだけ群生しているとなると数年から数十年くらいの間に竜がここに降り立ったのかも知れない。
……ブレスの余剰エネルギーが森に流入して急速進化した可能性も無い訳ではないだろうが……そうなると森にも多大なダメージがあった物と考えられるので違うだろう。
◇
しばらく採取を続けていると、ふと、僕を包み込む様に大きな影がさした。
それは音もなく、気配もなく、いつの間にか僕の背後に忍び寄っていたのだ。
それに気付いた時、僕は特に慌てる事はしなかった。
何の気配もなく近付いて来れる化け物が、わざわざ存在を主張する様な真似をする必要は無いのだから。
もし殺すつもりなら三流である。
特に気負いもなく振り向くと、其処には大きな狼がいた。
? LV?
ウルルの十倍程の体躯を持つ、ウルルと同じ銀毛でウルルと同じ琥珀色の瞳。
その巨狼はじっと僕を見詰めている。
僕もその巨狼を見つめ返す。
ただし、目は大きく見開いて、巨狼の全てを見る様に。
これは飽く迄も保険である。
攻撃されたら死ぬだろうが、せめて一撃手足を穿ち、機動力を微かにでも削げる様に。
◇
見詰め合う事しばらく、謎の膠着状態を破ったのは、やはり巨狼の方からであった。
僕の事を丸呑み出来そうな大きな頭がぬーっと僕に近付いて、その大きな口を開く。
其処には鋭利な牙がズラリと並び、そして——
「ふみゅぇ……」
——舐められた。
執拗にベロベロと舐め、僕の頭から足先までをベロベロベロベロ。
終いには転がされ、前に後ろにとベロベロベロベロ。
特に舐められているのは頭と後ろ側全般である。僕はアイスか何かか。
◇
いつ迄も舐めるのをやめない巨狼、僕もただ舐められているだけでは無い。
テイム出来るのでは? と試して見たのだ。
結論から言うと、テイムは失敗した。
弾かれた、と言うより、やんわり断られた感じである。
軽く解析して見ると、この巨狼は現時点の僕では測れない程の力を持っている事が分かった。
単純なテイムならまだしも、本と契約するのなら相応の消耗を強いられる事だろう。
巨狼はそれらを見抜いた上でテイムを拒否したのだろう。
即ちそれは、巨狼の優しさである。
僕は手を伸ばすと、巨狼の大きな頭を抱える様に撫でる。
叶う事ならこの巨大な力を手中に、叶わぬのならせめてモフモフを味わっておこう。
つまりそう言う事である。
取り敢えず写真を撮って、フレンド登録しておく。
やる事が終わったら、後は巨狼が去るまで撫で続けるのみ。
ところでこれ……もしかして匂い付けされてる?
◇
しばらくして、巨狼は満足した様に一つ頷くと、またもや音もなく、気配すらなく立ち去った。
一体何だったのやら。
体の匂いを嗅ぐと、消臭スキルのお陰か、少し獣臭いだけだった。これならしばらくすれば勝手に匂いが抜けるだろう。
皆が帰ってくるまで採取を続ける事にする。
ふと、ずっと遠くで獣の悲鳴の様な声が聞こえた。
目を瞑り耳をすませて音を聞くと、何となく状況が分かる。
熊がアイに捕まったらしい。
周りの皆が周囲の動物を次々と捕獲し、それをアイの中に放り込む。
哀れな獣達はスライム風呂の中から頭だけを出され、体は剥製の様に動かない。
……うむ、まぁ、良いんじゃないかな。




