第5話 命名する
第四位階上位
北の草原跡地に広がる焦土。
草原は全域が燃え尽き、地面がめくれている。
恐ろしい破壊の後が残るそこには、生き物の気配は全く感じない。
兎達は全滅してしまったのだろう。炎で、と言うよりもその熱波で。
もし王都に結界が無かったら、外壁という名の檻に閉じ込められた全ての生物が竜の業火に焼かれていた事だろう。
「ウルル、ゴー」
「ウォン」
過ぎた事を考えても仕方ない、次はこんな事にならない様に、戦力を集めて質を向上させる。
ウルルは焦土へ変わった大地を駆け抜け、森へ飛び込んだ。
◇
森を進む事しばらく。
森の入り口からここまで、生き物の気配は一切感じ無かった。
本能に忠実な森の獣達は、竜の襲来にいち早く気付いて森の奥へと逃げたのだろう。
もしかすると草原のウサギ達も、森の奥へ逃げ込んだのではなかろうか?
だとすれば、北の森はしばらくプレイヤーの足が遠のく事だろう。
僕にはウルルやネロみたいな、高速で移動出来る手段があるが、他のプレイヤーは森の表層で狩りをするしかない。
森の表層に魔物が居ないのなら、奥へ行かざるを得ず、無理をして奥へ行っても死ぬだけなので、狩場は西の森か南の洞窟、未だアンデットが彷徨う遺跡、のいずれか三ヶ所になる訳だ。
西の森の攻略が、より一層早く進む事になる。
面白い物があったらタクがメールで教えてくれるだろう。
◇
そして、初エンカウントがこの子だ。
ワイルドイーグル LV8
森を駆け抜けるウルルが、少し開けた場所で、今正に兎へ襲い掛かろうとしていた鷲の横を通過し。
ウルルの気配を察知して空へ逃げようとしていた鷲の尾羽を、僕がグワシッ! と掴んだ次第である。
鷲から『ギャャアァァーー!?』と言う悲鳴が聞こえて来そうだ。
パパッとテイムを成功させ今は僕の左手に止まっている。
とても立派な大鷲で、見ているうちにレベルが上がって行く。
どうやらアンデットさん達もしっかりと戦えているらしい。
◇
それからは、多くの動物、もとい魔物が姿を現わす様になったので、ウルルから降りて配下を召喚する。
先ずはネロ、森の中なので炎を使わない様に命令しておくのは忘れない。
次に召喚したのはうさーずである、相変わらずの手乗りサイズだが、その戦闘力は計り知れない。リトルバーストラビット、火兎には炎を使わない様に命令しておく。
次はデカうささん、相変わらず眠たそうだが、毛並みが物凄く良くなっている様な気がする。
ピンク色の毛なので、小さい子向けの兎のぬいぐるみと言った感じだ。
ただし、スキルには『魅力』と『誘引』があるのであまり小さい子向けではなさそうである。
どの道、デカスラさんの中で漂っているだけなので、しっかり誘引して貰おう。
桃色なので、メロットと呼ぼう。
「お前の名前はメロットだよ……聞いてる?」
名前をつけたが、反応が無いので声を掛けると、目をちょこっと開けてプゥと鳴いて目を閉じた。
次はゴーレムさんだ。
ゴーレムさんは体がゴツゴツだったのだけど、マシンゴーレムになったらそのゴツゴツが無くなって、何やら近未来的な形状になっていた。
一番変わったのは手で、唯のゴツゴツだった指は、綺麗な人っぽい指に変わっていた。
手の平の真ん中にはピンポン球くらいの穴が空いていて、指先にはビー玉くらいの穴が空いている。
腕の部分にも何やらギミックがある様だ。
それらを纏めて見せて貰うと、手の平の穴からは爆発する球が飛んで行き、近場の岩をバラバラに破壊した。
指先からは鋭利に尖った爪が、ガシュッ! と音を立て現れ、そのまま腕のギミックを作動させると、腕が高速回転した。ドリルである。
移動速度も格段に上がり、走れる様になった。
キュィーン! と音を鳴らして走ってくるゴーレムは敵からしたら悪夢だろう。
ただ、ギミックの作動には相応の魔力が必要になるので、連続使用は控えた方が良いだろう。
名前はイェガにする。
「お前の名前はイェガね、分かるかな?」
イェガはコクリと頷いた、ちゃんと分かるらしい。
次は蟹さん。
大きさは変わらないものの、左右の鋏や背甲に生えた色とりどりの石から、結晶大王蟹の子供と言った見た目である。
期待などを込めて、クリカと呼ぶことにする。
「お前の名前はクリカだ、よろしくね」
クリカは両鋏を上下に動かした、良いのか悪いのかわからない仕草だが……嫌ならもっと分かりやすいか。
次はケロちゃんである、名前はレイエル。
召喚されたレイエルは、一見すると普通の大蛙だが、手に杖を持っている。
「お前の名前はレイエルね、よろしく」
「分かったケロ、よろしくケロ」
「……後、その杖じゃなくてこの杖を使ってね」
「良い杖ケロ、嬉しいケロ」
……さて、次に行こうか。
次はスラさん、名前はリッドだ。
現れたリッドは、元のデカスラさんより少し小さめであった。
同じヒュージスライムでも、やはり色々と異なると言う事だろう。
「お前の名前はリッド、よろしくね」
名前を付けると、触手が伸びてきて、僕の頰にプニッと触った。
デカスラさんよりもずっと粘度が高い様で、プニプニしている。
リッドは小型化と圧縮を併用して、スライムサイズへと縮んだ。
先程までリッドのいた場所は木々がなぎ倒されている、召喚場所には気を付けよう。
続いてデカスラさんである。名前はアイ。目では無い。
現れたアイは、リッドの3倍近い大きさであった。
そのくせ、粘度が低いからか器用だからか、あるいはその両方か。木々には一切の被害が無い。
「お前の名前はアイ、よろしくね。わぷ」
名前を付けると、喜んだらしいアイに取り込まれた。
器用な物で、僕の全身をムニムニ揉むが、特に苦しいと言う事もない。
一頻り僕を揉みしだいて満足したのか、アイは僕を解放すると、新しく取得した小型化と圧縮で小さくなった。
そして最後にミルちゃんである。
ミルちゃんを召喚。
大きさは、進化した為肩に乗せられる小サイズから、僕の胴体くらいのサイズになっていた。
そのミルちゃんは、じっと僕を見詰めている。
「よろしくね、ミルちゃん」
「……ギャウ」
一応よろしくしといてやる、と言った感じである。
「火は使っちゃ駄目だからね?」
「……キュ」
「……駄目だからね?」
「キュ」
◇
皆に色々な魔物を生け捕りにしてくるように命令し、送り出した。
僕は僕で、森素材の採取でもしてようか。




