第29話 紅の勲章
第七位階中位
NPC、ジョブ、騎士団、と戦力をバカにならない程度上げた所で、次も同じクランシステム。『勲章の設計図』の確認だ。
これは、騎士団とほぼ同じながら、勲章を持つ個人に効果を及ぼすアイテムである。
単純な魔導具との違いは、僕のクランマスタースキルと接続されている点。
つまり、僕の持つ支配領域、即ち地脈の類い。とクランメンバー、即ち無数の魂。の援護を受けられるアイテムと言う事である。
設計図と言うだけあり、その形状から材質、名前まで自由自在。
唯一決まっている事は……レベル100以上の魔物の、最大でも親指の爪程度の大きさの魔石、またはそれと同等の魔力結晶が必要と言う事。
まぁ、魔石に関しては特に問題は無い。
獄峰産の小さめな火属性魔石が山ほどある。
この火属性の魔石を使った場合、火属性に関する能力や魔石の主が持っていた技能力を付与し易くなる。
どうやら術式の構造は魔石に入っている魔力だけを使用する様で、魔力を足せる事は足せるが結局は純度を上げて行く必要があり、必然的に消耗を強いられる。
差し当たって、獄峰中腹に巨大な巣穴を構えていた大きな蟻、ジャイアントラヴァアントの魔石を用いて適当な勲章を量産してみる。
能力は、火耐性、炎耐性、暑耐性、熱耐性のレベル1。
これらに加え、火属性金属、レンジット希少鉱を使って赤い盾の装飾を作り、おまけで金属部分に火属性魔法を軽減する結界魔法『耐火結界』の術式を刻印した。
この勲章は『紅騎士章』。
その他に、近接系統のスキルを刻み、武具に火属性の魔力を付与する『付与・火』を付けた『紅戦士章』。
火属性魔法等の魔法スキルを付け、『小火弾』と『火の波動』、『赤の光』を刻んだ『紅術士章』。
これらの3つを100個ずつ量産し、取り敢えずは満足しておいた。
他の属性の物は他の属性の魔石が手に入ってからにしよう。
今本格的に取り組むには時間が悪い。
◇
鈴音祭りの各種確認業務を手早く終えて、その後は……大人達は前夜祭である。
本来なら大人達は鈴守の大人、サトリやマナカが取り仕切るべきだが、2人は今も世界各地で何かやってるので、当主足る僕の役割である。
だが、僕はお酒を飲む事が原則禁止とされているので、乾杯の音頭は取れない。
と言う訳で、下戸なミコトに変わって鈴護の女主人であるカナが纏め役を行うのである。
では僕の役割は何か? 基本は子供組の統率である。
特に今年は15の歳を数えて僕に御目見えとなった子が多いので、人数も多い。
夕食のメニューは、冠成三宝玉を湯水の如く使った高級品のフルコース。
特に魚介が多いのは、足が速いので仕方ない。
中の机上では単なる刺身や寿司が並び、広めの庭では僕の代から出る様になったバーベキューセットが用意されている。
まぁ、僕はともかく、タクもアヤもリンカちゃんも、中で騒いで食べるよりも外で大騒ぎして食べる方が好きなのだ。
五月蝿いとか鬱陶しいとか言ってその実タクはそっちの方が好きなのである。
そんな訳で、夕食の準備は揃った。
最初は僕や分家筋を除いた若手の代表、ユミのお話しだ。
巫女装からカジュアルな服に着替えたユミに合図すると、彼女は中に座る面々と収まり切らずに外の椅子に座る面々から注目を集めた。
尚、外に溢れてしまったのは、バーベキューに使える広い庭がある部屋が此処しか無いからである。
「えー、こほん……初めての人は初めまして、鈴巫女補佐の竜胆祐美です!」
ユミは良く通る声で挨拶すると、ペコリとお辞儀した。
「今日は皆、お疲れ様! 明日も忙しいし、明後日からのお祭りも大変だけど、取り敢えず今日のお仕事は此処までです! 沢山食べてわいわい騒いで、しっかり英気を養おう!」
そう言って軽く拳を上げると、うちのノリが良いメンバー、主にちびっ子4人組+マヤと今年から参入で興奮しているタケルが拳を突き上げ、雰囲気に流されたり付き合ってくれる形で皆が拳を上げた。
ユミは僕にニコッと笑ってから、身を引いた。
僕が片手を上げると、潮が引く様に静かになる。
唯一ちょっと騒がしいタケルは、いつのまにか来ていた姉の鈴木寧子に黙らされて静かになった。
と言う訳で、何時もの挨拶である。
「……それじゃあ皆、今日はお疲れ様、好きな物を好きなだけ堪能して欲しい。お手を拝借……」
僕の言葉に、普段なら両手を合わせる所だが、今回は大きな宴なので、それぞれに飲み物が入ったグラスを持ち上げた。
僕は手に持つグラスを掲げ——
「——乾杯!」
『——乾杯!!』
沈み切らない太陽の元、最初の宴が始まった。
……あぁ……夏だなぁ……。




