第4話 落日の戦史
第四位階上位
アンデッドの二人を召喚した。
二人には最初から名前が付いていて、騎士の方はアッセリア。魔法使いの方はルーレンと言う。
これらは生前の名前と考えて間違いないだろう。
「おっと、小娘か、今度はなんじゃ?」
「暗闇に湖、地底湖の様ですが……」
二人に前のアンデッドとの戦いの事や、質問される事に答える。
◇
どうやら二人は、あの遺跡となった街の騎士団と魔法師団の団長だったらしい。
当時天災と呼ばれていた『金剛猪』率いる猪種の群れが街に襲い掛かり
激闘の果てに殺し尽くされる事だけは回避したらしい。
金剛猪は突進の一撃で街を守る結界と強固な外壁を破壊した。
続く猪達の突撃が脆くなった外壁に次々と突き刺さり、強固な外壁はいとも容易く突破されたと言う。
外壁の上に構えていた魔法師団の多くは、その突撃による外壁の倒壊に巻き込まれ、猪の大群の中へと消えていったそうだ。
……ティアが腰掛けていた場所が金剛猪が破壊した所だったらしい。
ともあれ、魔法師団長だったルーレンは外壁を突破されるや否や即座に生き残りの団員を集め、街の中に雪崩れ込む猪種の大群に応戦した。
しかし、数の多いその群れを前には健闘虚しく、遂に魔力は尽き果て、魔法師団が陣取る外壁も破壊された。
ルーレンがその戦いで最後に覚えているのは、一際大きな猪を相手になけなしの魔力を込めた杖で殴り掛かった事だけなのだとか。
一方アッセリアはと言うと……無窮とも呼ばれていた外壁を一瞬で破壊して雪崩れ込む猪の大群。
その津波とも形容出来る突撃から民を守る為、騎士団を率いて文字通り肉壁となって猪の大群を押さえ込んでいたらしい。
アッセリアはその猪の中でも、総体とも言うべき金剛猪へ、たった一人で立ち向かった。
結界と外壁を破壊しその勢いを大幅に減衰させていた筈の突撃を、手に持つ大盾を拉げさせ、街の石畳を削りながらも停止させる事に成功した。
それからは、団員に他の猪を任せ、一人金剛猪と戦ったらしい。
しかし……アッセリアの攻撃ではその鋼毛を貫く事は出来無かったのだ。
僅か数分の激突の果て、団員の死体に足を取られ転んだアッセリアは金剛猪の牙による攻撃を避けられず……上と下に断裂した自分の体を見下ろす事となった。
せめて一矢報いる、と金剛猪の鼻に剣を突き込んだ?しかし、その一撃は無意味と弾かれ。
最後に忌まわし気に鼻をブルルッと鳴らした金剛猪に、頭を踏み潰され死んだらしい。
戦いが結果的にどうなったのかと言うと……。
偶然近くを通りかかった山の賢者様が金剛猪と猪の群れを追い返す事に成功し、幾らかの住民が生き残ったのだとか。
巨大猪の突撃を受け、奇跡的に生きていたルーレンは、その話を聞いた日の夜に記憶が途切れているらしい。
因みに、彼女等の享年は二十歳で、それぞれ、引退した先代の後を引き継いだばかりだったのだとか。
突然凄い武勇伝を聞かされてしまったが、金剛猪なら僕も、かなり古い魔物図鑑や童話、果ては歴史書などで見た事があるので知っている。
相当に強力な猪で、この大陸中を荒らし回っていた様だ。
今も生きているのだろうか?
それと、山の賢者様って、ザイエだよね。
◇
今の時代の説明や僕の説明、今後の話を終え、配下のアンデット達を召喚して迷宮探索に送り出した。
「それじゃあよろしくね」
「うむ、儂に任せておけ」
「誠心誠意努めさせて貰おう」
そう言うとアンデッドの軍団は迷宮の中へと消えていった。
ルーレンがスキル『アイテムボックス《小》』と『アイテムボックス《中》』を持っているので。アイテムの回収に関しては心配無用じゃ。との事だ。
アンデッドさん達を見送ったので地上へ戻る。
精霊さん達に挨拶して地下水路に入り、しばらく進むと、ヒュージスラッグに遭遇した。
傍をさーっと抜けて行く事も出来たのだが、ネロが火を吐いてヒュージスラッグを焼いてしまったので、酸性の粘液が気化して酷い目にあった。
ネロが。
◇
地下水路を抜けて、危険そうな見た目のネロを送還。
ウルルに騎乗したまま街を進む。
道中プレイヤーや街人の注目を集めたが、止まる事なくのしのしと進み続け、北門を抜け——
「うわぁ……」
——其処には、焦土が広がっていた。




